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林産試だより2006年4月号 特集「共同研究しませんか」 共同研究事例:木材を燃えにくくする薬剤の開発

 ●特集『共同研究しませんか』 共同研究事例

木材を燃えにくくする薬剤の開発

性能部 主任研究員 菊地 伸一

平成11~12年度:新基準に対応する木材用難燃剤の開発

 共同研究の背景

 平成16年,約3万3千件の建物火災が発生し,1,400名以上の方が亡くなるとともに,1件当たり380万円の損害を生じています。このような火災被害を少なくする対策の一つとして,建築基準法には燃えやすい材料や有害な燃焼ガスを発生する材料を建物の内装に使用することを規制するきまり,「内装制限」が定められています。防火材料は燃えにくさや発生ガスの安全性に応じて不燃材料,準不燃材料,難燃材料に3区分され,内装制限を受ける建物には,多くの場合,不燃または準不燃材料が必要です。木材はそのままでは防火性能を持たないことから,内装制限に適用させるためには,薬剤を用いて燃えにくくする処理が行われています。処理木材は燃焼試験でその防火性能が評価され,所定の基準に合致したものが国土交通省から防火材料として認定されます。

 建築基準法改正(平成10年6月)に伴い,防火材料の性能は,発熱・発煙・残炎を測定する日本独自の試験方法から,国際規格(ISO)に対応する発熱性試験方法で評価するようになりました。共同研究先企業では,かねてより木材用の防火薬剤を製造・販売していましたが,評価方法の変更に伴い自社防火薬剤の新試験法による再評価,および防火材料の需要が難燃から準不燃・不燃にシフトする状況に対応するため薬剤性能の向上に迫られていました。

 このような背景のもと,建築基準法改正直後の平成11~12年度にかけて,林産試験場と(株)コシイプレザービングとの間で,木材用防火薬剤の開発に関する共同研究が行われました。

 共同研究の内容

 共同研究のフローおよび検討課題をに示します。



図 共同研究のフローおよび検討課題

 まず,広範な木材用薬剤に対してISO法による系統的な発熱性試験を行い,その結果を基に発熱抑制効果の高い薬剤を選択し,次いで,複数の薬剤の併用による相乗効果が得られるような配合条件を求めました。発熱抑制効果の高い薬剤配合比を決定後,準不燃性能の付与に必要な薬剤吸収量,作業液濃度を樹種別に明らかにしました。さらに,薬剤処理木材の性能保持に必要な塗装方法や薬剤の保存性を検討し,実用化を図りました。

 本薬剤で処理したスギ材を10分間加熱した結果を無処理スギ材と対比させて写真に示します。

写真 薬剤処理木材の燃焼抑制効果

 成果

 開発した薬剤の特徴は次のとおりです。

1) 低毒性の水溶性無機薬剤を使用し,通常の加圧処理方法に対応する。

2) さまざまな樹種に対する適応性を持つ。

3) 処理木材を廃棄処分する際に有害物質・有害燃焼ガスは発生せず,燃焼灰中にも有害物質は含まれない。

 現在,本薬剤は「NEWバーネックス(S)」として商品化され,いくつかの防火処理メーカーに納入されています。

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