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林産試だより2006年5月号 Q&A 先月の技術相談から 木炭の脱臭効果,防腐剤等を使用せずに木材の耐久性を高める方法,木材・金属複合パイプ

Q&A 先月の技術相談から

木炭の脱臭効果,防腐剤等を使用せずに木材の耐久性を高める方法,木材・金属複合パイプ

Q:木炭の脱臭効果について教えてください。

A:木炭には,私たちの身近にある様々な臭いを吸着する能力があります。ただ,1種類の木炭がどんな臭いでも吸着できるというわけではありません。臭いにはそれぞれ異なる性質があるため,それに応じて最も適した性質を持つ木炭を選ぶ必要があります。例えばトイレや家畜の糞尿の臭いの主成分はアンモニアという物質ですが,これを吸着するためには300~400℃で熱処理したものが適しています。一方,塗料や接着剤に含まれるトルエンなどの溶剤の臭いの吸着には,600~800℃前後で炭化したものが適しています。これらは見た目には同じような色で見分けがつきづらいのですが,製造条件が違うと全く違った性質になるのです。

 一例として,当場の実験炉で製造した炭化条件の異なる木炭(トドマツ材300℃処理と800℃処理)を用いて,アンモニアとトルエンの吸着試験を行いました。吸着試験結果のグラフは,試験開始時のアンモニアとトルエンの初期濃度を100とし,木炭1gを投入してから所定時間経過後のガラス容器中に,どれだけ臭いが残っていたかを残存率として算出したものです。アンモニア吸着試験の結果(図1),300℃処理材では60分経過後に残存濃度が検出限界以下となり,グラフには載せていませんが,市販活性炭より優れた性能を示しました。一方,トルエン吸着試験では800℃処理材が優れた吸着性能を示しました(図2)。

 このように目的にあった木炭を使用することで,高い脱臭効果が得られます。もし,取り除きたい臭いの種類がわからないときは,炭化条件の異なる木炭を混ぜて用いるのが良いと思われます。

図1 アンモニア吸着能と炭化条件との関係 図2 トルエン吸着能と炭化条件との関係


Q:防腐剤などを使用せずに木材の耐久性を高める方法があれば教えて下さい。

A: 一口に木材の耐久性を高めると言っても,腐朽菌など腐れに対する抵抗性(耐朽性)を高めるのか,太陽光や風雪に対する抵抗性(耐候性)を高めるのか,木材を劣化させる因子によって対応方法は異なってきます。また処理方法を選定する場合も,使用する環境や用途,必要とされる信頼性,メンテナンスも含めた処理コストなど,様々な条件を総合的に考慮していくことになります。

 木材の耐久性を高める方法として,一般的には低毒性の防腐剤や耐候性塗料による含浸あるいは塗布処理が広く行われていますが,ご質問頂いたように,最近はできるだけ薬剤に頼らずに人体や環境に対してより負荷の少ない処理を求める声も高くなってきています。

 こうした処理としては,元々耐朽性・耐候性が高い樹種を用いる方法のほか,元々含まれる木材成分自身を耐久性のある性質に化学的に変化させる方法(化学修飾),木材内に不溶性の無機物を形成する方法(木材の無機化)などがあります。当場では,化学修飾の一種であるアセチル化という手法によるトドマツやカラマツ,スギなど道産針葉樹材の耐久性について検討を行い,耐朽・耐候性とも大きく向上することを確認しています(写真1)。



写真1 道産針葉樹材のアセチル化による耐久性向上の一例
(木口断面での腐朽状況の観察)

 前述したように,処理コストとそれに見合うだけの利点があるかの見極めが肝要ですが,化学修飾を耐久性向上処理の一つの選択肢として検討していただくのも良いかと思います。



Q:林産試験場で開発した木材・金属複合パイプは,どのような形状のパイプに対応できるのでしょうか?

A:◎パイプの太さ・樹種
 木材・金属複合パイプとは,金属パイプに単板を巻き付けて接着した,金属パイプの高い強度と木材の暖かみを兼ね備えた材料です。(写真2



写真2 様々な形状の木材・金属複合パイプ

 パイプの半径と単板の厚さで巻き付けできるかどうかが決まりますが,薄い単板を使えば半径が小さいパイプを用いても製造することもできます。
 また,角パイプに対しても,角を巻き付け可能な曲率半径に面取りすることで巻き付けが可能になります。
 曲率半径が小さい材料に巻き付ける際は,針葉樹なら早晩材の差が小さい樹種,広葉樹なら環孔材よりも散孔材を選ぶことで,単板に割れを生じさせることなく製造できます。実験では,厚さ0.2mmのマカンバ単板を半径3mmのパイプに巻き付けることができました。

◎湾曲部をもつパイプへの巻き付け
 平面材料の単板をパイプに巻き付けるという製法上,湾曲部がある材料への巻き付けは不得手です。設計の際は,他材料を用いてジョイントするなど,湾曲部を作らない工夫が必要になります。

 

(利用部化学加工科 本間千晶,長谷川祐,重枝哲夫)

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