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林産試だより2006年6月号 平成18年度 林産試験場の試験研究の紹介

  

平成18年度 林産試験場の試験研究の紹介

 林産試験場は,18年度に46課題(うち新規16課題,18年5月時点)の試験研究に取り組みます。これらの内訳は,道の研究予算である重点領域特別研究7課題および一般試験研究19課題,国や法人等の外部予算である外部資金活用研究3課題,民間企業との共同研究15課題,民間企業からの受託研究2課題となっています。


重点領域特別研究と一般試験研究


I.木質材料の需要拡大を図る技術開発


1)北海道の木造住宅の耐震改修促進を目的とした耐震診断・補強効果評価法に関する研究
  (重点:H18~20)

 北海道では,これまでに地震による木造住宅の倒壊等の被害が数多く発生しており,被害を軽減するために既存建築物の耐震性能を適切に診断し,効果的な耐震改修を進める必要があります。そこで,道内の既存木造住宅に適した合理的な耐震診断方法と,住宅全体に及ぼす補強効果の評価方法を開発します。

2)木質耐火被覆材による集成材耐火構造化技術の開発
  (一般:H17~18)

 平成10年に改正された建築基準法により,木質構造部材も所定の耐火性能を満たせば,鉄筋コンクリートなどのような非木質部材と同様に耐火構造物として建築することが可能となりました。ここでは,集成材に耐火性能を付与するために,難燃処理木材を使った耐火被覆材の開発や接合部の耐火性能の向上,耐火被覆材の効果的な施工方法などを検討します。

3)寒冷地仕様木造軸組外壁の防耐火性能推定手法の開発
  (一般:H17~19)

 北海道の多くの住宅では,壁内に断熱材が充てんされています。ここでは,道内の建材メーカーによる防・耐火構造外壁の開発および認定取得を支援するために,壁内に断熱材が充てんされた住宅外壁の防耐火性能を実際に耐火試験することなく,その適性を推定する手法を開発します。

4)既存木造住宅の生物劣化診断手法の開発
  (重点:H17~19)

 平成7年に発生した阪神・淡路大震災を機に建築基準法が改正され,木造住宅における耐震安全性が重視されるようになりました。しかし,住宅構造部材に腐朽や白アリによる被害などの生物劣化が生じると,新築時に確保した耐震安全性が著しく損なわれてしまいます。現状での生物劣化の検査・診断は目視などの主観的評価でなされていることから,客観的で信頼性の高い評価手法の開発が求められています。そこで,木造住宅の長寿命化・構造安定性を確保するために,目視以外の客観的で信頼性の高い生物劣化診断技術を開発するとともに,生物劣化を受けた住宅に残存する構造性能の推定手法,生物劣化の状況に応じた処置方法を開発します。

5)道産構造部材の長期強度性能に関する研究
  (一般:H16~18)

 木造建築物の長期信頼性を高めるためには,道産構造部材の適切な使用と実大クリープ特性に関するデータの蓄積が不可欠です。さらに,新しい木質構造部材を適切に利用する際にも,より精度の高い長期変形の予測が求められます。そこで,道産構造部材(製材,集成材,Ⅰ形梁)を対象に,様々な外周環境や荷重条件において長期クリープ試験を行い,それぞれの実大クリープ特性を把握し,精度の高い長期変形を予測します。
注)クリープ:長期にわたって力を加えることによって変形が増大する現象

6)光触媒機能評価システムの構築および活用製品の開発
  (重点:H17~19)

 酸化チタンの光触媒技術は,大気中の有害物質の除去,抗菌,防汚,水質浄化など,様々な業種・事業分野での環境ビジネス技術として注目されています。しかし,その特長や性能などに関しては,まだ知られていない面も多くあります。そこで,道内の中小企業による光触媒活用製品の開発に貢献するために,光触媒の総合的な評価システムを開発します。

7)道内未利用資源を利用する建材開発と評価システムの提案
  (重点:H17~19)

 道内の未利用資源として豊富な資源量を有するもみ殻,木工場廃材,ホタテ貝殻,火山灰,ピートモス,珪藻土,廃石膏ボード,住宅用グラスウール廃材を用いて,低コスト・簡便な加工・成形技術を開発し,内装材や断熱材,構造面材などの新たな建材を開発します。また,建材としての用途に応じた強度や耐久性能などの各種性能水準とVOC等の吸着性能などに関する評価手法を提案します。

8)電磁波シールド性能を有する合板の開発
  (一般:H18~19)

 電磁波シールド性能を有する物質を混入した接着剤を数種類調製し,それらを単独あるいは組み合わせて合板を製造し,低コストで幅広い周波数帯をカバーする電磁波シールド合板を開発します。

9)腐朽を原因とした緑化樹折損危険木診断技術の開発
  (重点:H18~20)

 都市に植栽された緑化樹は,高齢化,劣悪な立地環境,除雪時などの傷害によって衰弱し,腐朽することが多く,適切な措置が実施されないため,台風などの災害時には樹木の倒壊,枝落下などによる人身事故や交通傷害が発生し,社会的に大きな影響を与えています(写真1)。そこで,市街地に植栽されている緑化樹を対象に,樹木の外観から危険度を判定する技術を開発します。

  


写真1 腐朽部位から折れた樹木


10)維持管理による木質構造物の耐朽性向上のための検討
  (一般:H18~20)

 景観に配慮した街づくりの観点から,道路施設や公園事業への木材の積極的な利用が期待されています。屋外で使用する木材には初期の生物劣化防止処理に加えて,設置後の維持管理のための二次的処理が不可欠ですが,現状では,その実施時期や効果を予測することが困難です。そこで,必要とされる使用期間にわたり構造物の安全性を維持するために必要な二次的処理の方法とその効果を検討します。

11)アカエゾマツ精英樹における材質での選抜基準の検討
  (一般:H17~18)

 主に北海道で選抜したアカエゾマツの精英樹クローン等を用いた材質試験を行い,育種アカエゾマツのねじれ,強度,密度などの材質特性を調べます。そして,各形質の遺伝性が高いものかどうかを調べ,ねじれなどの材質での選抜基準値を検討します。

12)道産建築用材の生産・流通における環境負荷の基礎的研究
  (一般:H18)

 道産木材の利用促進や「地材地消」が行政・業界の重要課題となる中で,「環境に優しい材料」としての道産木材の優位性を明らかにする必要があります。そこで,道産建築用材を対象に,伐採地や建設場所などを具体的に設定してLCA手法を用いた評価を行い,道産建築用材の生産・流通の各過程における環境負荷を定量的に把握します。
注)LCA:Life Cycle Assessmentの略。製品の製造から廃棄に至る過程における環境負荷を総合的かつ定量的に評価する手法。


II.木質資源の有効利用を図る技術開発


1)アルカリ処理による形状変化を用いた木材の利用技術に関する研究
  (一般:H17~18)

 林産試験場が保有する平成5年の登録特許「可塑化木材の製造法(特許第1780017号)」は,木材をアルカリ処理することで,常温で簡単に木材を可塑化する技術です。この処理技術は同時に木材が形状変化し,かさ高くなることから,可塑化した木材の物理的・力学的特性を把握するとともに,処理木材の用途について検討します。
注)可塑化:やわらかくして自由に変形させること。

2)木質系バイオマス燃焼灰の有効利用に関する研究
  (重点:H18~19)

 京都議定書の発効にともない,地球温暖化防止対策として木質系バイオマスの熱利用が増えつつあります。しかし,排出される燃焼灰(写真2)は主に埋立て処分されており,有効利用が求められています。そこで,林業分野(苗畑・治山事業等)での活用や農業分野における需要拡大を目指して,燃焼灰の発生状況や有効成分を明らかにするとともに,樹木への施用効果やハンドリング性に優れたペレット化(写真3)の検討および,重金属の溶出を簡易に抑制するための技術開発を行います。

  

 
    写真2 燃焼灰                     写真3 燃焼灰を利用したペレット


3)樹木成分を利用したグイマツ雑種F1苗の高精度判定法へ向けた指標成分の特定
  (一般:H17~18)

 北海道における重要な造林樹種のひとつであるグイマツ雑種F1は,成長速度,材質,病虫獣害・気象害に対する抵抗性などの点から総合的に優れ,将来的にも北海道における有望な造林樹種として重要視されています。そこで,グイマツ雑種F1の品質管理をさらに高めるためにグイマツとグイマツ雑種F1の樹木成分の質的・量的な差異を明らかにし,樹木成分による高精度な苗木の雑種判定法を検討します。

4)木材の常温常圧条件における可溶化技術の開発
  (一般:H17~18)

 薬品を使って高温高圧下で木材を液化する技術は知られていますが,ここでは,常温常圧でも処理できるようにするための検討を行います。

5)森林バイオマスを用いたアンモニア吸着材の製造技術および再利用に関する研究
  (重点:H17~19)

 アンモニアは悪臭の主要成分であり,工場等で排出する場合には悪臭防止法により規制対象となる物質です。堆肥製造工場や畜舎では大量のアンモニアが発生しており,作業環境の改善や近隣住民等への配慮のために悪臭抑制策の確立が急務となっています。そこで,中小径間伐材やチップなど森林バイオマスを原料として,環境にやさしい熱化学変換技術を用いた高性能アンモニア吸着材料を開発します。さらに,実用生産機での製造技術を確立するとともに,畜産施設等での利用方法ならびに利用後の土壌改良材としての適性を検討します。

6)建築廃木材および小径間伐材需要拡大のためのボード原料・燃料利用の検討
  (一般:H17~18)

 今後大量に発生する建築廃木材や小径間伐材の需要拡大は,道内のみならず国内の緊急かつ重要な課題となっています。そこで,これらを木質ボード原料・木質バイオマス燃料として有効かつ効率的に活用するため,道内地域別の排出量および出材量の予測を行うとともに,コスト削減に向けた流通合理化策の検討を行います。

7)建設廃木材のバイオエタノール等原料生産に向けた木材糖化に関する研究
  (一般:H17~18)

 二酸化炭素の排出を削減するため,ガソリンなどの化石燃料に替わるエタノールを薬剤処理木材等を含む建設廃木材から生産する木材糖化技術を検討します。

8)使用済み合板の再利用法の検討
  (一般:H17~18)

 建設リサイクル法の施行により,建築廃木材の再資源化が義務づけられたことから,型枠工事等によって発生する合板を面材料として再利用する技術や用途を検討します。


III.木材産業等の体質強化を図る技術開発


1)プレス圧縮による未乾燥材の脱水技術の開発
  (一般:H17~18)

 人工乾燥製材の仕上がり含水率のバラツキの解消と乾燥時間の短縮を図り,乾燥コストの削減と乾燥製材の品質を向上させるため,乾燥前にプレス圧縮をすることにより木材中の水分を脱水し,初期含水率を低下・均一化する技術を開発します。

2)集成材用ラミナの品質を向上させる乾燥技術の開発
  (一般:H18~19)

 道産人工林材の需要拡大を図るために,構造用集成材を含む住宅用部材への利用促進が進められていますが,集成材用ラミナ(ひき板)として使われるためには,乾燥に伴う損傷や変色の抑制が課題となっています。そこで,乾燥後の変形や変色,強度低下を改善するとともに,燃料消費量を抑えた省エネルギー型のラミナ乾燥技術を開発します(写真4)。

  


写真4 集成材用ラミナの乾燥実験


3)木材の迅速熱圧硬化処理技術の開発
  (一般:H17~18)

 針葉樹材は熱圧することで高密度になり広葉樹同等に表面を硬くすることができるため,広い用途で用いることが可能となります。ここでは,処理条件等の検討を進めることで,より迅速に,かつ節の多い間伐材などでも加工できる処理技術を開発します。

4)建築廃木材を原料とした構造用MDFの検討
  (一般:H18~20)

 近年,資源環境問題から国内未利用資源を原料とした国産構造用ボードが注目され,その開発が急務となっており,特に建築廃木材を原料とした構造用MDFの技術開発に対する業界ニーズが高まっています。そこで,建築廃木材を原料としたMDF(写真5)について,解繊技術や剛性および寸法安定性を検討し,安価で材質を向上させた構造用MDFを開発します。
注)MDF:Medium Density Fiberboard(中質繊維板)の略。主に木材などの植物繊維を成形した繊維板で密度0.35g/cm 以上のもの

  


写真5 建築廃木材を原料としたMDF


5)シイタケ菌床栽培における生産効率向上技術の開発
  (一般:H17~19)

 シイタケ菌床栽培に用いる培地の組成や栄養源の添加により栽培期間の短縮を図る栽培技術を検討するとともに,収穫後の廃菌床やチップダストを利用し,生産コストを低減する栽培方法を検討します。

6)道産マイタケ新品種の高品質化を目指した栽培技術の開発
  (一般:H17~19)

 林産試験場が開発した道産マイタケ新品種の法的保護に必要な各種特性の把握と,新品種の特性を活かした針葉樹おが粉を培地に利用する低コスト栽培方法を検討します。さらに,安全に対する信頼性を高めるための培地材料の選別と栽培条件を検討します。


外部資金活用研究


 外部資金活用研究は,農林水産省や独立行政法人などの公募事業で採択された場合に行う競争型研究です。比較的大規模な研究予算を活用して他の研究機関や企業と連携しながら製品開発・技術開発を行います。


I.木質材料の需要拡大を図る技術開発


1)カラマツ間伐材を用いた雪害対策・緑化用構造物の開発
  (H16~18)

 強度性能に優れた鋼材と景観性に優れた木材を組み合わせたハイブリッド構造を採用し,吹雪による雪害を軽減するための木製防雪柵,雪崩の軽減効果を目的とした緑化用雪崩緩和柵を開発します。これらの強度性能を明らかにするとともに,耐朽性,デザイン性を考慮した仕様の提案,構造計算のためのデータを蓄積します。

2)エゾマツ・トドマツ・カラマツ及び外国産材を用いた異樹種積層集成材の製造と強度性能評価
  (H17~19)

 木造住宅における構造用集成材の使用量が近年大幅に増加するなかで,地域材の利用が全国的に期待されています。そこで,道産材を用いて高い強度を持つ構造用集成材を安定的に供給するために,外国産材を併用した異樹種積層集成材の効率的な断面構成を検討し,その強度性能を明らかにします。


III.木材産業等の体質強化を図る技術開発


3)機能性を強化したきのこの成分育種
  (H16~18)

 高血圧等の生活習慣病が増加するなかで,きのこの機能性に対する期待が高まっていますが,機能性成分を高める成分に着目した育種はシイタケ以外には行われていません。その上。品種ごとに栽培方法が異なることから,育成品種に適した栽培技術の開発が必要となります。そこで,血圧降下作用に関わるアンジオテンシン変換酵素阻害活性を持つことが知られているブナシメジについて,阻害活性が高い品種を選抜するとともに,その品種に適した栽培技術を開発します。


民間等共同研究


 民間等共同研究は,林産試験場と民間企業等が共同で製品開発や技術開発を行う制度です。研究の成果は,共同研究を行った企業が優先的に使用することができます。また,研究成果により得られる特許は,北海道と企業の双方に帰属します。


I.木質材料の需要拡大を図る技術開発

 1)防犯性能の高い寒冷地向け木製開口部品の開発(H17~18)
 2)北海道における住宅の温室空間計画に関する研究(H18~19)
 3)戸建住宅用低温大面積床暖房システムにおける道産I形梁の活用技術開発(H17~18)
 4)自然エネルギーの複合利用と木質系融雪資材による消融雪システムの開発(H17~18)
 5)木質系暖房用内装資材および暖房システムの開発(H17~19)
 6)観賞用植物の室内での管理法および室内環境に及ぼす影響に関する研究(H18~19)
 7)カラマツ人工林材の品質向上に向けた生産管理技術の検討(H17~18)
 8)水産系廃棄物を利用した木材の耐朽性向上技術の開発(H18)
 9)圧密化ラミナを外層に用いた集成材の製造と性能評価(H18)
10)木質複合材による可動式デッキの開発(H17~18)
11)一般家庭向け普及型ペレットストーブの開発(H17~18)


III.木材産業等の体質強化を図る技術開発

 1)蒸気式乾燥装置の含水率スケジュールによる自動制御システムの開発(H18)
 2)畜産廃棄物を用いた食用菌の栽培に関する研究(H16~20)
 3)ワイン製造廃棄物を用いた食用菌の栽培に関する研究(H18~19)


受託試験研究

 受託試験研究は,民間企業から依頼を受けて,林産試験場が自ら保有する技術蓄積をもとに,企業の技術向上や製品開発につながる研究を実施する制度です。共同研究との違いは,民間企業に研究の分担がないこと,研究成果により得られる特許は,北海道に帰属することなどがあります。


I.木質材料の需要拡大を図る技術開発


1)燻煙乾燥時に発生する煙成分の木材処理への利用に向けた検討(H18)


III.木材産業等の体質強化を図る技術開発


1)エゾマツおが粉を用いたシイタケ菌床栽培技術の確立(H18)

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