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林産試だより2006年8月号 特集『2006 木製サッシフォーラム』 木材を使用する立場から見たサッシ

●特集『2006 木製サッシフォーラム

木材を使用する立場から見たサッシ

北海道立林産試験場 企画指導部 主任研究員  石井 誠

 はじめに


 木製サッシは何がいいのでしょうか。性能については,北海道で広く普及している樹脂サッシも非常に高く,断熱・結露防止については若干木製サッシの方が高いものの,その他の物理的性質についてはほとんど同じということが言えるかと思います。そこで,木製サッシを別な視点から評価してみたいと思います。


 どちらを永く使いたい?


 写真1はプラスチックと木の積み木のおもちゃですが,子供さんに与えるとしたらどちらを選びますか?永く使うとしたらどちらがいいでしょう。ちなみにこちらのプラスチックの方は10年くらい,木の方は40年くらいたっています。



写真1 プラスチックと木のおもちゃ


 価格を考える


 木製サッシの課題とは,やはりコストとメンテナンスでしょう。
 いくつかのカタログを参考にした価格の比較では,樹脂サッシ:木製サッシ:アルミ+木製サッシが1:1.5:1.7程度ですが,推定仕入れ価格ではそれが1:2.4:2.9になるものと思われます。この割合ですと,樹脂サッシと木製サッシでは,住宅1軒当たり50万円くらい違ってきます。たしかに,設備などを何とか5万円のものを2万円にして3万円浮かせる努力をしている中での50万円の差は,大きいことは事実です。
 そこで,先ほどのおもちゃです。サッシを親しみを持って永く使うとしたらどうでしょうか?この点は二つめの課題のメンテナンスにもつながっていきます。


 

 メンテナンスを考える


 メンテナンスの問題は,塗装と気密材の2点が大きな問題です。塗料に関しては,造膜タイプと半造膜タイプと浸透タイプの3つの種類があります。
 造膜タイプは家具などに使われるウレタン樹脂やフッ素樹脂等で,表面にしっかりとした膜ができます。半造膜タイプは水性塗料などで、防腐剤などは木材に浸透しますが,顔料などが表面に残って塗膜を形成します。浸透タイプはオイルステンなどで,塗料が木材中に浸透するタイプで,表面に膜はできません。
 日本では浸透タイプが普及しています。最近では水性系の半造膜タイプが増えてきています。ヨーロッパでは逆に造膜タイプが多いようです。


 

 窓の暴露試験


 次に実際の窓の暴露試験の結果について見てみましょう。林産試験場敷地内に,塗装が3種類(造膜タイプ,半造膜タイプ,浸透タイプ),それぞれ途中で再塗装(2年目と6年目の2回)したものとそうでないもの,そして北面と南面の条件の合計12枚の窓を15年間設置しています。


 

 浸透タイプ


 写真2は浸透タイプの塗料を塗布して,南面に設置した窓です。再塗装したものは,かなり良好な状態です。そのため,2回くらい再塗装すれば15年くらいは劣化せずに持つことがわかります。



写真2 木製サッシの暴露試験(浸透タイプ南面 15年目)
左:取付後再塗装無し 右:再塗装有り


 写真3は同じタイプで北に面して設置した窓です。これは再塗装がなくても塗料が残っていることが特徴です。北面のため,紫外線量が少なく,また日射による表面変動が少ないためと思われます。同じ窓でも北面と南面で塗装の持ち方がこんなにも違います。



写真3 木製サッシの暴露試験(浸透タイプ北面 15年目)
左:取付後再塗装無し 右:再塗装有り


 

 半造膜タイプ


 写真4,5は,半造膜塗料を塗布して,設置した窓です。15年たつと,再塗装しないと浸透タイプ同様に塗装はほとんど残っていませんが,定期的な再塗装で外観は支障ない状況に保たれています。



写真4 木製サッシの暴露試験(半造膜タイプ南面 15年目)
左:取付後再塗装無し 右:再塗装有り



写真5 木製サッシの暴露試験(半造膜タイプ北面 15年目)
左:取付後再塗装無し 右:再塗装有り


 

 造膜タイプ


 造膜タイプは,塗装面が剥(は)がれかけた場合,その面を全て剥がして再塗装しなくてはいけないので,今回の試験では再塗装しませんでした。
 ここで特徴的なのは塗料の色による耐候性の違いです。写真6に見られるように,結果としては無色よりも色の付いた方が強いという傾向がありました。また,茶色に着色した塗膜はかなり痛んでいますが,浸透タイプや半造膜タイプより塗膜が残っていました。



写真6 木製サッシの暴露試験(造膜タイプ南面 15年目)
左:茶色に着色 右:透明


 以上まとめると,塗膜は着色した造膜タイプが一番強く,次いで半造膜,浸透タイプとなります。しかし,メンテナンスを考えると,重ね塗りが可能な半造膜,浸透タイプの塗料が推奨されます。


 

 木製サッシの施工例


 写真7は築10年の木製サッシです。水性の半造膜タイプの塗料を塗布しています。全面再塗装しているわけではなく,下枠の水切り部などの一部にタッチペイントで塗装しているだけです。メンテナンスといってもこの程度のことで,実際はそんなに大変ではありません。



写真7 木製サッシの施工例


 

 また,この窓が良かったのは軒先が深いことです。直接雨が当たるということが少ないのです。
 一方,同じ住宅でも妻面は軒がほとんど出ていません(写真8)。これは西面で西日がよく当たります。この部分は表面がささくれ立ち,再塗装時に塗料がのりにくい状況になっています(写真9)。このような部分は頻繁にメンテナンスする必要があります。



写真8 軒の出が少なくかつ西面の窓




写真9 西面の窓


 また,サッシの一番弱い部分は下枠です。そのため,弱い部分だけ写真10のようにアルミなどで被覆するのも一つの対策です。



写真10 下枠のアルミ被覆


 写真11は木とアルミの複合サッシです。外側の劣化しやすい部分をアルミで被覆しています。最近,少しずつ見られるようになってきました。



写真11 木とアルミの複合サッシの例
 

 長持ちする木製サッシ


 写真12はドイツの窓です。300年以上使われてきた窓で,少し前まで実際に使われていました。サッシの持つ可能性としてこれだけ長い間持つということが言えます。  またこの長い年月は写真13のように木を丸く削ります。これは今日の一番最初の話に戻りますが,長く使う場合に木とプラスチックとどちらを選ぶか,ということにつながってくると思います。プラスチックではここまで長くは持たないでしょう。



写真12 古い窓



写真13 風雪で削られた桟
 

 日よけの効能


 ひさしというのは窓にとっても非常にいい話です。写真14のような簡単なひさしがあるだけで,紫外線や雨が当たりにくくなります。



写真14 簡単な日よけ



 また,写真15のようなよろい戸やロールブラインドはヨーロッパではよく見られるものです。これらのデメリットは朝の光が全く入らないということですが,断熱という意味では非常に効果的です。



写真15 木製よろい戸と木製ロールブラインド


 

 高いところの窓のメンテナンス


 またメンテナンスの問題で良くあげられるのが2階以上の高所にある窓です。このような窓は足場をかけなくてはいけませんが,非常に危険です。そのため,バルコニーのように足場代わりになる構造がある場合なら2階の窓のメンテナンスもしやすくなります。


 

 気密材について


 気密材にはいろいろなものがありますが,一番のポイントは角の部分です。写真16は林産試験場の庁舎の木製サッシですが,気密材の一部に切れ込みをいれ,90度曲げて連続させています。こうすることで施工性がいいですし,水密性能も保てます。もう一つは写真17のような溶着です。これは確実ですが,工場生産で寸法が決まっているので,既成寸法のサッシにしか使えないという問題があります。



写真16 角に切れ込みを入れた気密材



写真17 角を溶着した気密材


 

 ドレーキップ窓のすすめ


 ドレーキップという窓があります。写真18~19のような内倒し内開き窓です。内開きのメリットは,掃除が内側からできるということです。また,ほこりや虫などがついた網戸を室内に入れる必要もありません。
 内倒し状態では防犯に考慮しながら換気ができます。これはよほどの強風でもない限り雨などはあまり入ってきません。また外側に断熱戸をつけたとしてもこれなら対応可能です。



写真18 内開き窓



写真19 内倒し窓


 

 継続したメンテナンスを


 サッシを長持ちさせるための注意点は,
(1)窓の上にひさしがあるか
(2)窓の下枠に水切り板があるか
(3)メンテナンスしやすい構造か
(4)メンテナンスをする気があるか
ということです。(1)~(3)は,住宅を建てるときに考慮しないといけない点です。(4)は,木製サッシだからというわけではなく,どの材質のサッシでも同じことがいえます。ただ,木製サッシは樹脂サッシのように,業者に頼まないとメンテナンスができないものではなく,自分で対処できる部分が多いということがいえます。手をかけていけば木製サッシは長持ちします。


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