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林産試だより2006年8月号 特集『2006 木製サッシフォーラム』 意見交換会

●特集『2006 木製サッシフォーラム』

意見交換会

 ドレーキップと住宅の軒


会場:内倒し内開きの窓(ドレーキップ)は,確かに外側のガラスを拭けるということはメンテナンスでは非常に効率的かと思いますが,逆に,外側のゴミなどが内側に入ってきてしまうということはないですか?
 また,最近では無落雪の家が増えているかと思います。このような家に軒をつけようと思ったら構造上無理があると説明されることがあります。どうしたらよいでしょうか?

石井:私の家はドレーキップですが,実際使っている上では外側のゴミなどが入ってくることはありません。逆に外開きより内開きの方がゴミの進入を防げると思います。というのも,外開きの場合は窓の内側に網戸をつけるので,網戸についたゴミが室内に入ってきてしまいます。一方内開きの場合では窓の外側に網戸をつけられるので,ゴミが内側に入ってくることが少ないのです。また外開きの場合,開閉時に網戸を開けなくてはいけないのに対し,内開きは開ける必要はありません。
 軒の問題については,先ほどお見せした軒の写真(「木材を使用する立場から見たサッシ」写真7,8)の家は片側無落雪です。ですから,設計段階できちんと計算すれば軒の問題も大丈夫かと思います。

鈴木:内開きのゴミの問題は,たいていのゴミは外の風などで吹き飛ばされてしまいますし,窓にこびりつくようなゴミは開閉作業程度では落ちるようなことはないので,問題にはなりません。
 北海道の住宅に軒がなくなってきているというのは非常に問題だと思っています。結論から申しますと,無落雪の住宅でも軒を出すことはいくらでも可能です。ただ,デザインが問題なのです。無落雪の住宅にあう軒のデザインがないのです。この点は,そういうデザイン性と機能性を兼ね備えた設計ができる工務店や,設計士の方が育っていくことを願っています。
 なお,最近では屋根材の開発が進み,屋根勾配のある無落雪が可能となっていますが,これは一つの活路になると思っています。


 窓の耐久性


会場:先程の窓の暴露試験について,メンテナンスをしなかった場合,腐れ等に伴う性能の変化はどの程度でしょうか?

石井:暴露試験の試験体は水があまりたまらない構造になっています。壁がありませんし,窓の上にはひさしがついていて水が落ちないようになっています。実際の住宅でもこのような条件であれば腐らないということがいえるでしょう。
 また,気密性や水密性に関しては,この暴露試験の試験体では検証できませんが,一般的には気密材の劣化が一番の要因となります。気密材は10年程度はもつと思いますが,やはり消耗品であるという認識をもたなければならないと思います。20年や30年たてば劣化しますので交換しなくてはなりません。気密材の劣化を放置しておくと,断熱気密性が悪くなるだけではなく,窓枠の腐朽を促進することになります。
 余談ですが,気密材の劣化の程度を調べる簡単な方法があります。もちろん風の強い日に手をかざすのも一つの手ですが,それ以外に音の漏れで調べることができます。具体的には窓のすぐ外で話をしたときに,それが室内側で明瞭に聞き取れるようになってきたら気密材の交換時期です。



意見交換会の様子


 これからの窓と住宅


平間:吉成さんのご講演の中にユーザーのセグメント化という話が出ていましたが,その観点から窓の開閉方式についてアドバイスがいただけると幸いです。

吉成:窓を通常使うユーザー層は子供からお年寄りまでです。ですから,身長の問題や,バランスの問題を考慮する必要があると思います。人間は足の裏の間に重心があればバランスを保てますから,このような点を考慮する必要があると思います。



平間:鈴木さんの発表の中で,窓の断熱性がますます高まってきているという話がありましたが,そういった窓の今後の未来像についてお聞かせ下さい。

鈴木:現在の一般建築はガラスのファサードを持つものなど,ガラス建築の方向に向かっています。従来の外が見えない壁ではなく,外の光や熱などを取り入れられる多機能な窓を採用する建築が多いのです。
 例えば美術館などは自然採光をするために,壁から光を採る光壁というものが採用されてきています。それは外側から見たらサッシのようです。こうなると壁なのかサッシなのかはっきりしなくなってきています。
 枠とガラスで構成されたものをサッシというのなら,そのニーズは今後ますます高まっていくでしょう。そこで醸し出されるのは新たな外装デザインです。
 また,機能面から言いますと,新築の場合と,改装の場合とを使い分ける必要も出てきます。改装の場合は,新築ほどの断熱性は必要ない場合がありますから。


平間:同じような住宅でも暖房コストにばらつきがみられるという話がありましたが,これは同じ住宅部品を使った場合の話でしょうか?(「建築の立場から見たサッシ」図8,9)

鈴木:基本的には住宅の断熱気密性能は同じです。また,暖房性能もほとんど同じ。そんな中,生活スタイルの違いでこれだけの差が出ているのだと思います。例えば一家5人ですべての部屋を暖房する家庭と,老夫婦で二人分だけの部屋を暖房する場合を想像して頂ければわかりやすいでしょう。
 住宅のハードの部分の機能が同じでも,その運用コストは様々なのです。その部分を住宅側が見込んで目的別に対応できれば,というのが最近の我々のスタンスです。


 木材の良さとは?


平間:石井さんの話の中に,木材の良さは,心理的な観点からとらえる必要があるとありましたが,今後ユーザーに対してどのような点を理解して頂き商品開発を進めたらよいでしょうか?

石井:木材というのは人類が使った道具の中でも最も古いものだと思います。最近の研究では物理的な性質というのは,大まかなところはだいぶ研究が進んでおります。ただ,そういったことだけでは説明できないことが心理的な研究結果に反映されてきています。
 我々人間は木材というものを他の材料とは何か違った見方をしているところがあります。そこを大事にしていくことが必要ではないかと思っています。非常に漠然とした話ですが,心理的な試験では1人がいいと評価しても99人は悪いと評価する場合があります。我々はその1人をターゲットにする必要もあるのではないかと思います。


 今後の北海道の公設試


平間:今回のフォーラムでは3つの公設試から講師を迎え,講演を行いました。先ほど鈴木さんの話に道内の戸建住宅の経済効果という話がありましたが,道内の経済の下支えをしていくことはこれからの公設試の大きな責務だと思っております。最後に今後の公設試のあり方についてそれぞれお話をお聞かせ下さい。

鈴木:役に立つ公設試でなければだめだと思います。現在,そして将来の北海道を造っていく実務の方々に対して,さらにリフォームという意味では過去にさかのぼってまで,広く役に立つ研究を担っていきたいと考えています。

吉成:道内企業のニーズに対応するということはどこの公設試でもやられていると思います。そういった業務の他に,例えば道内産の材料だけで何かを造っていくというような場合に,互いに情報交換しながら協力していいものを造っていくことが大事だと思います。

石井:公設試は敷居が高いと考える方が多いようですが,我々としては,難しい研究をなるべくわかりやすくご説明するのが使命だと考えています。ただ,実際研究開発していく中で,民間企業の方の動きが遅い場合があります。主体はやはり企業の方なので,是非真剣に我々をご活用頂きたいと思います。

平間:日本は豊かになったとはいえ,まだまだ住宅についての問題点は多く残されています。我々はそれを解決するための研究を行っていかなくてはならないと思います。また,その成果を今日来て頂いている皆様をはじめとする道民の方々にご活用頂いて,初めて北海道にいい住宅のストックが増えていくのではないかと思います。そうした中で,北海道の経済も活性化していくことを切に願っております。

 今回で11年になりますこのサッシフォーラムも今後20年30年と続けていければと考えております。今後ともどうぞよろしくお願い致します。





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