本文へ移動
林産試だより2006年9月号 第15回木のグランドフェア −木になるフェスティバルの一日−

●特集『木のグランドフェア』

第15回木のグランドフェア −木になるフェスティバルの一日−

企画指導部 普及課 石河 周平

 はじめに

 第15回木のグランドフェアがスタートしました。これは,広く道民の皆様に木工体験や作品作りを通じて木の魅力や木の良さを感じていただいたり,林産試験場のことをもっと知っていただきたいという主旨で,(社)北海道林産技術普及協会とともに毎年開催しているものです。
 「木育」という言葉が徐々に定着してきているのではないでしょうか?この木育には,木を子供の頃から身近に使っていくことを通じて,人と,森や木との関わりを主体的に考えられる豊かな心を育てたいという想いがこめられています。今年も,この「木育」を意識した内容にもなっています。  今年の木のグランドフェアは,7月29日(土)をスタートに8月27日(日)まで行いました。ここでは,主に初日のオープニングイベント「木になるフェスティバル」の様子をご紹介します。

 

 開会式

 フェスティバルは今年も快晴に恵まれました。開会式のテープカットは,会場に一番早く来てくれた兄妹とその友人の小学生合わせて3人と,上川支庁を代表して上川南部森づくりセンター所長,(社)北海道林産技術普及協会会長,林産試験場長が臨みました(写真1)。



写真1 開会式の様子


 木工工作体験

 今年も,さまざまな木工体験をしていただきました。上川支庁の協力によるウッドコースター(写真2)やどんぐりキーホルダーづくりは恒例となっていますが,今年はその他にもマガジンラックや木のしおりづくり,木の枝などを用いた動物づくりなどを体験していただきました。

 1.マガジンラックづくり

 このマガジンラックは,簡単な釘打ちのみで立派なものに仕上がるキットとなっています。しかし,材の端に釘打ちをする際には材が割れてしまうことがあり,そのためにキリで先穴を開ける必要があります。職員の指導のもとで,子供たちは初めて使うキリの扱いに奮闘していました(写真3)。



左:写真2 上川支庁コーナー(ウッドコースターづくり)        右:写真3 マガジンラックづくり

 2.木のしおりづくり

 合板を作るときになどに丸太を薄くかつら剥(む)きするのですが,そのように剥いた厚さ0.2〜0.7mmの薄い単板を用いて,絵などを描き自分だけのオリジナルの木のしおりを作ってもらいました(写真4)。

 3.木の枝などを用いた動物づくり

 これまで開催してきたフェアでは,主にキット化した工作を体験してもらっていましたが,このコーナー(ピッコロファーム)は自然のままにある大小の枝をうまく使って,シカ,熊,馬などの動物づくりに挑戦してもらいました(写真5)。
 今回,滝上木質バイオマス生産組合のご協力のもと,材料の提供から指導も併せて出展していただきました。夏休みの工作に最適ということでしょうか,大変な人気のコーナーになりました。今後こういったものについても体験していただきたいと思っています。



左:写真4 木のしおりづくり     右:写真5 枝などを用いた動物づくり


 モノ作りと木材

 本田技研工業(株)取締役 吉野浩行氏は,日本学術会議主催の公開講演会(2004)で,「子供たちの科学技術に対する関心をいかに高めるか」と題して講演をしておられます。その中で「環境わごん」と称した,幼稚園や小学校に出向いて行う出前型の環境教育のプログラムを紹介しています。そのプログラムでは,ワゴン車に丸太,流木,どんぐり,貝殻など,海や山から採取した素材を積み込んで学校などに出かけ,子供たちはこれらの材料を使って木工クラフト,流木を使った工作,丸太切り体験などをしているそうです。
 氏は,「環境わごんは,子供たちが手軽に自然に触れることができ,自然や環境に関心を持つ1つのきっかけになってくれることを期待して行っている。今の時代では,モノ作りに早くから興味を持ってもらうため,こうした活動も必要になっている」と,述べています。
 私たちも,木材は他の材料に比べて加工しやすく,実用に耐えうるものが比較的容易に作れるなど,工作に向いた優れた材料だと思っています。「マガジンラックづくり」では,子供たちなりに加工を極める,「木の枝を使った動物づくり」では自由な発想で動物や世界などを表現する。そんなことが手軽にできるのも木材ならではのことです。
 日本の近代化や経済成長を支えてきたモノ作りのルーツは,実は,太古の昔から木材を上手に使ってきた日本人のDNAに由来するのかもしれません。


 おもしろ科学体験コーナー

 一昨年のフェアから,林産試験場が行っている木材に関するさまざまな研究内容をわかりやすく紹介したパネルや,趣向をこらした演出で楽しくお伝えする体験コーナーを設置しています。


 技術部:「木のパズルコーナー」

 職員が作った木製立体パズルを,制限時間内に解いてもらうゲームです(写真6)。写真を見て分かるとおり,各部材には複雑な切り欠きが施されています。どこから解きほぐしていくか分からないほど,これらは巧みに組み合わされています。
 日本では古来より,釘を使わず複雑な継ぎ手や仕口を作ることで,大小の建築物を造り上げてきました。その伝統的な継ぎ手や仕口は,今日のプレカット工場での仕口加工にも活かされています(写真7)。また,古くから伝わる障子の桟(さん)などの組子(くみこ)には,200種を超える組み方があると言われています。日本の建具職人の手業(てわざ)や林産試験場が持つ加工技術を,パズルを解くことで感じてもらいたいと企画しました。
 さて,ゲームは難易度に応じて30分間,1時間の時間内で解いてもらい,参加者には手作りの大小の寄木(よせぎ)細工をプレゼントしました。



左:写真6 木のパズルコーナー     右:写真7 プレカット部材の仕口


 性能部:「木を感じるコーナー」

 このコーナーでは,木材とアルミニウムなど他の材料や,同じ木材でも表面処理が違うと手ざわりがどう違うのかなどを感じられる「触感ボックス」やいろいろな種類の木で同じ形のダンベルを作って展示し,体験してもらいました。木のダンベルを持ち上げてその重さの違いに驚かれた方も多かったようです(写真8)。
 また,木と暮らしの情報館に展示してある職員手作りの木琴や,音程を整えた板を階段状に配置し,上から木球が転がり落ちることで自動演奏する“自動木琴(かえるの合唱)”なども,昨年同様来場者の目をひいていました。
 ご存じのように木材は燃えやすい素材ですが,難燃処理技術は着実に前進しています。今回のフェスティバルでは,市販の難燃処理スプレーを木の板に吹き付け,どの程度燃えにくくなったのかを実際にバーナーの火を当ててお見せしました。難燃処理をしたものは加熱により木材表面に発泡層を生じて断熱効果をもたらすことに,多くの子供たちの驚きの様子を見ることができました(写真9)。
 大きな断面の木材であれば,表層に形成される炭化層が断熱材の役目をして,建物の躯体を維持することも可能です。このような考え方で,現在,林産試験場では耐火(準耐火)構造用の新たな集成材の開発も行っています。



左:写真8 木を感じるコーナー     右:写真9 木材を燃えにくくする


 利用部:「木の化学実験コーナー」

 地球環境問題に対しての関心の高まりや,原油価格の高騰などから,森林バイオマス燃料に注目が集まっています。林産試験場では古くから木質バイオマス資源の有効活用のための研究を進めてきました。今回は,林産試験場が民間と共同研究で開発したペレットストーブや,独自に設計・試作した小型木質ガス化発電装置,熱源を選ばないスターリングエンジン(外燃機関)の模型展示のほか,バイオマス利用の可能性をパネルにした展示をしました(写真10)。
 木炭を作るときの温度の違いで,導電性(電気の伝わりやすさ)に差ができることが知られています。いろいろな温度で焼いた木炭に通電して,木炭自身を発光させる実験などもお見せしました。かのエジソンが発明した電球のフィラメント(発光部)には,初期段階では日本の竹を焼いた竹炭が使われていたのは有名な話です。
 ほかにも,木材組織の顕微鏡観察や精油採取の実験を行い人気を集めていました。



写真10 森林バイオマスの利用


 工場内見学

 昨年に引き続き,場内の合板工場での実演を見ていただきました。一般の人にとって合板工場を見る機会はめったにないので多くの見学希望があり,丸太が大根のかつらむきのように薄く剥かれていく様子に,歓声があがっていました。(写真11)。



写真11 原木のかつら剥き


 木と触れあう「ゲームコーナー」

 木球投げ,木球つまみゲームなどを用意しました。木球投げは,職員が手作りした砲丸球くらいの大きさの木球を10m程離れた枠に狙いを定めて投げるというゲームです(写真12)。
 また木球つまみゲームは,箱に入った10個程度の玉子形をした木の球を,箸でつまんで別の箱にすべて移すことができたら豪華な景品が当たるくじ引きに参加してもらうというゲームです。両ゲームとも長蛇の列ができるほどの大人気でした。
 林産試験場では,チップソーを用いたコンピュータ制御の旋盤装置を開発しています。この装置を用いれば,様々な形に切削が可能です。今回木球つまみゲームで使った木の玉子も,この装置で加工したものです(写真13)。



左:写真12 木球投げゲーム     右:写真13 木球つまみゲーム


 人形劇のコーナー

 林産試験場の敷地に,木路歩来(コロボックル)というログハウスがあります。昨年はこちらで「絵本の読み聞かせ」を行いました。今年は市内のボランティア団体である劇団リズムのご協力により「人形劇」や,三角やひし形などの型紙で自動車や船などの形をつくる遊びの「タングラム」,手遊びなどを演じていただきました。会場に集まった子供や保護者の方々の真剣そのものの表情や劇団の問いかけに声を枯らしながら応じている子供たちの姿が印象的でした。演目の中に「森のアイスクリーム屋さん」という森にちなんだものもあり,フェスティバルに彩りを添えていただきました(写真14)。



写真14 劇団リズムの人形劇公演


 終わりに

 私たち林産試験場の役割は,北海道の林産業の振興と木材需要拡大に寄与することですが,木材に対する親しみや理解を深めて頂くことも大きな役目と考えています。
 私たちが木育活動を推進している中で,林産試験場の研究内容や木材の特性など「木の科学」の奥深さなどを,いかに一般の方々に分かりやすく伝えるかを考えていますが,むずかしいと感じているところです。現在,林産試験場のホームページでは「キッズ☆りんさんし」を順次更新していますが,この作成時には皆でいろいろな議論を繰り返しながら,この難しさを乗り越える試行錯誤をしているところです。
 今後も,フェスティバルやホームページなどで,木材加工技術の歴史,木工職人の技術,新しい利用技術など,まだまだお伝えしたいことがたくさんあります。木材が使い込むごとに触れるごとに持ち味が深いものになっていくように,本フェスティバルも年輪を重ねながらより良いものにしていきたいと考えています。
 今年は1,500名もの方々に来場していただき、うれしい悲鳴を上げたところですが、会場を訪れた多くの子供たちが,木と触れあった1日のことをいつの日かまた思い出してくれることを期待しながら,本稿を閉じることにします。


次のページへ