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林産試だより2006年9月号 「第14回 北海道こども木工作品コンクール」&「第6回 アート彫刻板作品コンクール」を終えて

●特集『木のグランドフェア』

「第14回 北海道こども木工作品コンクール」&
「第6回 アート彫刻板作品コンクール」を終えて

企画指導部 普及課 鈴木 貴也


 平成5年に始まった「北海道こども木工作品コンクール」は今年で14回目を迎えました。このコンクールは,日常あまり手にすることがなくなってしまった木工の道具を使用しながら,想像力を生かして一つの作品を製作していくことで工作技術の向上を図り,未来の北海道を担っていく小中学生に木材や樹木の素晴らしさを知ってもらうことを目的に実施しています。
 今年は「木のグランドフェア」開催期間の7月29日(土)から8月27日(日)まで,林産試験場敷地内の木と暮らしの情報館内で展示を行いました。
 全道各地の小中学校から多くの作品が寄せられ,応募総数は木工工作個人の部には4校から19点,団体の部には3校から4点,レリーフ作品の部には13校から199点にのぼりました。
 作品の審査は7月19日に,旭川市内の美術館職員や大学教員の方々による審査委員会において,次の点を基準として行われました。
  (1) 木の持ち味やアート彫刻板の特徴を生かし,独創性に優れていること。
  (2) 機能,デザインが優秀であること。
  (3) 工作技術が優秀であること。
 今年は夏休み期間中に展示をすることで,より多くの人たちにコンクールの作品を見ていただきたいと考えて,昨年よりも実施期間を早めて作品を募集しました。そのことにより,結果的には学校での製作期間が短くなったためか,応募作品数は昨年に比べると減ってしまいました。しかし,どれも実力派ぞろいの応募作品に,審査委員会では最優秀賞と優秀賞を最後まで決めかねる場面が何度も見られました。

   

 木工工作個人の部

 木工工作個人の部には,例年に比べて実用性よりも芸術性・創造性が豊かな作品が数多く多く寄せられ,特に素材に関しては,自然のままの流木を使った作品が多く見られるなど非常に変化に富み,審査員の方々はかなり頭を悩ませているようでした。
 最優秀賞は釧路市立布伏内小学校2年生の赤堀友哉さん「じじ木ょう竜」(写真1)が選ばれました。審査員からは,小学校2年生でありながら優れた独創性と造形力があり,口の部分にちょうつがいを使用するなど,動きの面白さが感じられると一番の評価が集まりました。



写真1 個人の部 最優秀賞「じじ木ょう竜」
釧路市立布伏内小学校2年 赤堀友哉



 優秀賞には釧路市立阿寒中学校3年生の中村健太郎さん「フィッシュカービング」(写真2)が選ばれました。最優秀賞と対照的なこの作品には,造形の細かさや土台に使用した自然のままの流木との対比などに精緻(せいち)で成熟した造形センスが感じられ,高い評価を受けました。



写真2 個人の部 優秀賞 「フィッシュカービング」
釧路市立阿寒中学校3年 中村健太郎



 特別賞には岩見沢市立美流渡(みると)中学校2年生の榊達行さん「1.イス,2.棚 使い方はアイディアしだい」(写真3)釧路市立阿寒中学校3年生の山田優介さん「のれん」(写真4)そして別海町立上西春別中学校2年生の本田裕也さん「ネッシー」(写真5)が選ばれました。それぞれ,実用的な作品が少ない中でユニークな発想を形にしたアイデアや,様々なデフォルメされた動物を実用的な「のれん」に使用するという発想,あるいは流木の形をそのまま生かし,ストレートなネーミングと素材を生かした造形がマッチしている点などが評価されての受賞となりました。



左上:写真3 個人の部 特別賞「1イス,2棚 使い方はアイディアしだい」 岩見沢市立美流渡中学校2年 榊達行

左下:写真4 個人の部 特別賞「のれん」 釧路市立阿寒中学校3年生 山田優介

右:写真5 個人の部 特別賞「ネッシー」 別海町立上西春別中学校2年 本田裕也



 木工作品団体の部



   写真6 木工工作団体の部 最優秀賞 
「ぼくらの夢に向かって
         〜幸せを運ぶコンバイン〜」
      置戸町立勝山小学校3年生
     後藤優太,大槻凌平,上野佑也

 団体の部に応募があったのは4点と数は少なかったものの,いずれも独創性や製作技術,情景の描写などの優れた点が多く見られました。また,学校全体の取り組みとして製作している作品もあり,非常にレベルの高い部門となりました。
 最優秀賞を受賞したのは,置戸町立勝山小学校3年生の3人による「ぼくらの夢に向かって〜幸せを運ぶコンバイン〜」(写真6)です。この作品には多くの審査員から感嘆の声があがりました。特に,うねりのある麦畑を進むコンバインの完成度と描写には注目が集まりました。また,実物への観察力とディテールの追求や素材の選択,力強さなどが高く評価され最優秀賞に輝きました。




 優秀賞には置戸町立勝山小学校5・6年生の10人による「知床〜ともに奏でるハーモニー〜」(写真7)と滝上町立濁川小学校5・6年生の8人による「森のいきものたち」(写真8)が選ばれました。どちらも作品の発想や創造性の素晴らしさに加えて,大勢で作品を完成させることの楽しさが伝わってくる作品です。また,大型の作品でありながら造形の細かさや加工技術の高さが評価されました。
 特別賞を受賞した札幌市立屯田南小学校4年生の2人による「元気な動物たち」(写真9)はシンプルな造形の中に,動物の魅力をストレートに表現した点が評価されての受賞となりました。



左上:写真7 団体の部 優秀賞 「知床〜ともに奏でるハーモニー〜」
置戸町立勝山小学校5・6年生 
宍戸裕二,飛田龍也,福島めぐみ,安達直也,上野麻希,
柏原大志,清水岳,飛田沙綾,藤江月歩,船越あずさ

右上:写真8 団体の部 優秀賞「森のいきものたち」
滝上町立濁川小学校5・6年
 渡邊愛沙,片岡沙也華,掛橋涼太,小崎里香,
白幡悠里,荒谷大輔,籠尾正太郎,中内亨則

下:写真9 団体の部 特別賞「元気な動物たち」
札幌市立屯田南小学校4年 佐々木結衣,佐藤結花



 レリーフ作品の部



写真10 レリーフの部
最優秀賞 「とべない魚」
倶知安町立倶知安中学校1年 島谷萌花



 レリーフ作品の部に使用したアート彫刻板は,接着層が赤く着色されていて,彫りの深さやタッチで作品に様々な表情が現れます。そのため,彫り込むことで絵画的な表現に加え木彫りの立体感といった,両方の魅力を楽しみながら作品を生み出すことができます。 今年は彫りの美しさを生かしてアート彫刻板の特徴をうまく表現した作品が多く寄せられ,最終的に数点の作品を選ぶ中で審査員の口からは「甲乙付けがたい」といった言葉が何度も漏れ,審査にも時間を要しました。 最優秀賞は倶知安町立倶知安中学校1年生の島谷萌花さん「とべない魚」(写真10)が選ばれました。この作品は,タイトルの不思議な世界観やイマジネーションの世界を彫りの美しさで見事に表現しており,その絵画的な構成と作品の完成度が高く評価されました。





 優秀賞には岩見沢市立緑中学校3年生の南風花さん「レリーフ」(写真11)と岩見沢市立第二小学校6年生の奥田由佳さん「イルカ町の夕日」(写真12)が選ばれました。前者は花にとまる蝶が緻密(ちみつ)な彫りで見事に表現され,後者はアート彫刻板の接着層の赤色を画面全体に彫り出すことで夕日を表現するなど,芸術的・技術的にも素晴らしい作品でした。



左:写真11 レリーフの部 優秀賞「レリーフ」 岩見沢市立緑中学校3年 南風花

右:写真12 レリーフの部 優秀賞 「イルカ町の夕日」 岩見沢市立第二小学校6年 奥田由佳



 特別賞には北見市立小泉中学校1年生の高橋未有さん「小鳥の休けい」(写真13),新得町立佐幌小学校2年生の三浦早央里さん「りんごはおいしいね」(写真14),そして浜中町立姉別小学校6年生の上中克航さん「亀」(写真15)の3作品が選ばれました。これらの作品は,対象の特徴をよくとらえて丁寧な彫りで表現した点や,画面いっぱいにアート彫刻板の色を使って表現した点などが評価されました。



左:写真13 レリーフの部 特別賞 「小鳥の休けい」 北見市立小泉中学校1年 高橋未有

右上:写真14 レリーフの部 特別賞 「りんごはおいしいね」 新得町立佐幌小学校2年 三浦早央里

右下:写真15 レリーフの部 特別賞 「亀」 浜中町立姉別小学校6年 上中克航



 第6回アート彫刻板作品コンクール

 こども木工作品コンクールに併せて,上川支庁管内の生涯学習講座受講生を対象にアート彫刻板を用いたレリーフ作品を募集した,第6回アート彫刻板作品コンクールの審査が行われました。
 このコンクールは,アート彫刻板の利用体験を通じて木製品のぬくもりに触れ,木の良さを実感するとともに,ものづくりの創作意欲や製作技術の向上を図ることを目的として毎年「木のグランドフェア」の一環として行っています。今年は市内の公民館から合計7点の作品が寄せられました。
 作品の審査は,こども木工作品コンクールとほぼ同様の基準で行われました。
 最優秀賞には神楽公民館神楽百寿大学の原田審也さん「ピリカメノコ」(写真16)が選ばれました。アイヌの女性を丁寧で緻密な彫りによって表現している点が高く評価され,最優秀賞に輝きました。

 優秀賞には永山公民館百寿大学の細野進さん「冨嶽(ふがく)三十六景 凱風(がいふう)快晴」(写真17)が選ばれました。これは葛飾北斎の通称「赤富士」と呼ばれる作品を,アート彫刻板の特徴を生かして再現した作品です。
 これらの2点は技術的に非常に素晴らしいことから,審査員の評価を二分しました。また,このほかの作品もすべて製作者の気持ちを感じることのできる,素晴らしいものばかりでした。



左:写真16 アート彫刻版作品コンクール 最優秀賞 「ピリカメノコ」 神楽公民館神楽百寿大学 原田審也

右:写真17 アート彫刻版作品コンクール 優秀賞 「冨嶽三十六景 凱風快晴」 永山公民館百寿大学 細野進



 コンクールを終えて

 審査員の方々からは「毎年,コンクールをとても楽しみにしている」との声や「素晴らしい作品が多く寄せられているが,より多くの学校からの募集を期待したい」との声がありました。また,作品を審査するだけではなく,子供たちが製作に取り組んでいる光景や表情を是非見てみたいといった声もありました。次年度以降は開催案内の方法なども含めて,さらに検討を重ねなければならないと感じています。
 また,先にも述べたようにレリーフ部門には優れた作品が非常に多く,審査委員会では惜しくも受賞を逃してしまったものの,コンクールの主催者である林産試験場長により特に印象に残った作品として,美瑛町立明徳中学校3年生の佐伯和哉さん「アフリカゾウ」が場長賞に選ばれました。



写真18 場長賞 「アフリカゾウ」 美瑛町立明徳中学校3年生 佐伯和哉

 これまでもそうであったように,コンクールに応募のあった数多くの作品からはそれぞれの持つ「物語」を感じることができました。それは造形のセンスや技術的な意味だけではなく,子供達が創造し,製作することの喜びのあらわれなのではないでしょうか。
 最近、「木とふれあい,木に学び,木と生きる」木育という取り組みが注目されています。これは,幼い頃から木や木製品に親しむことで,自然と人間との関わりを感じる豊かな心をはぐくもうとする運動です。
 子供達の遊びを含めた生活のスタイルが自然から離れつつある現代,自分達の暮らす地域の環境を見つめ,自然とのつながりを意識することはこれからの時代に不可欠な要素なのではないでしょうか。
 「木工」といった小さな一歩でも,自然の素材に触れながら一つの作品を生み出すといった体験が,子供達の心の中に自然とのつながりを生み出すことができるように,これからも取り組みを続けていたいと考えています。


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