本文へ移動
林産試だより2006年10月号 北海道におけるペレット燃料の開発・流通について

●特集『ペレットの普及に向けて』

北海道におけるペレット燃料の開発・流通について

技術部 主任研究員 窪田 純一

 1.第二次ペレット燃料ブーム?の到来!

 石油価格の上昇が長期化しており,企業の経営はもちろんのこと我々の生活にも深刻な影響を及ぼしています。原因の究明は本稿の目的ではありませんが,ひとつには中国などの需要の急激な伸びが,市場の逼迫感を生み,需給バランスを崩し始めているのかもしれません。
は北海道の灯油小売価格の推移を示していますが,値上がりの始まる直前の平成15年から3年間で約2倍にまで跳ね上がっています。

図 灯油小売価格 (北海道環境生活部調べ)

 北海道にとっては,冬を迎えるこれからが灯油の需要期であり,価格もさらに上昇することが予想されます。「価格の安い国産のペレットストーブも増えてきているし,今年の冬は灯油からペレット燃料へ替えようか」と,考えている方も多いのではないでしょうか。
 ペレット燃料は今でこそ知名度は高くなりましたが,1970年代の2度のオイルショックを契機に全国的に盛り上がりを見せたものの,その後は石油価格の沈静化によって需要が減少し,ほとんどの製造工場が撤退していったという経緯があります。林産試験場でも1980年代に森林バイオマスの有効利用という観点から木質燃料であるペレット燃料の製造技術や燃焼性などの研究1)を行っていましたが,燃料としての注目度が薄れるとともに,木質飼料などの研究にシフトしていきました。



写真 研究用に購入した国産ペレットストーブ


 写真は当時研究用に購入し,研究終了後は林産試験場の施設で実際の暖房にも使用していた国産ペレットストーブです。この当時は現在のようなFF式ストーブ(強制給排気式ストーブ)ではなく,煙筒の付いた自然給排気式のストーブで,灰の量が多く燃焼性能はあまり良くなかったようです。
 こうした過去の経緯から,ペレット燃料の将来性を懸念する向きもありますが,循環型社会の構築を目指す自治体や企業の取り組みの一環として,ペレット燃料を製造する事例は全国的に増えつつあり,昨今の石油価格の動向もあいまって,もはや一時的なブームとは言えない状況を呈しています。



 2.ペレット燃料普及に向けての北海道の取り組み

 北海道内でペレット燃料を商業生産している地域2)は,2006年7月末現在,滝上町,伊達市(旧大滝村),厚沢部町,足寄町の4市町,年内に稼動予定が2か所となっています。
 北海道では需要確保を目的としたペレットストーブ購入費用の一部補助や北海道型ペレット燃焼機器開発のための指針策定などについて取り組んできましたが,今後も供給体制の整備,機器導入への支援を充実させるほか,新たな利用分野の実用化支援や木質暖房機器展示会の開催など一般道民への普及PRを推進する予定です。


 3.ペレット燃料の流通

 北海道の住宅の多くは,暖房や給湯の燃料を灯油に依存しており,灯油の消費量は全国平均の3.5倍に達しています3)。したがって,地球温暖化防止対策の観点からも,北海道におけるペレット燃料の定着は非常に大きな意義を持っています。
 北海道の住宅では,灯油を定期的に大型の屋外タンクに配送してもらうのが一般的なので,配送用のタンクローリー車が長期間運行できない状況でもない限り,灯油タンクの残量がゼロという事態は非常にまれなケースと思われます。しかし,昨年から今年にかけての東北,上信越地方の豪雪を引き合いに出すまでもなく,積雪地帯では,“灯油の残量”も日常的な危機管理項目のひとつとなっています。ペレット燃料が今後,北海道の暖房用燃料あるいは給湯用ボイラー燃料として普及するためには,住宅への配送手段や販売方法などの流通システムの充実が必要ですが,災害等に対する安全面の評価も大きな鍵と言えるのではないでしょうか。
 そこで,ペレット燃料の流通に関して,どのような課題が考えられるのかについて若干の考察をしてみたいと思います。
 灯油とペレットは同じ燃料であっても,大きな違いが3点あります。1点目は液体と固体の違い,2点目は発熱量の違い,3点目は発火性の違いです。さて,これらの違いは,流通の手段や方法を考えるときにどのような影響を与えるでしょうか。
 一般的なペレット燃料は,直径6~8mm,長さは直径の3倍程度のいわゆる粉粒体であり,条件によっては,液体とも固体とも言えない特殊な動きをすることを念頭に入れておく必要があります。例えば,ペレット燃料製造工場の貯蔵タンクから輸送用のコンテナへ移送する場合,通常はスクリューフィーダーなどを用いますが,フィーダー内での詰まりはちょっとしたきっかけで発生します。粉粒体の場合,こうした移動経路における詰まりが大きな課題となります。
 ペレット燃料の発熱量は,約4_500Kcalで灯油の1/2しかありません。したがって,灯油と同じ熱量を得るためには,重量で2倍,見かけの容積では約3倍の量が必要となってしまいます。現在の灯油の消費量を基準にすれば,月に一度の配達が,10日に一度になるイメージです。ペレット燃料も灯油と同じように必要なときに必要な量の供給があれば理想的ですが,現在の灯油宅配と同じようなシステムを考える場合は,こうした量的な違いも大きな課題になるものと考えられます。
 もう1点は,発火性の違いです。温度を上げていった時に発火する温度(発火点)は,灯油260℃,ペレット燃料(木材)450℃と,灯油も意外に発火点は高いのですが,火種がある場合の発火温度(引火点)は,灯油が50℃に対し,ペレット燃料は250℃と火災に対する安全性は大きく異なります。したがって,灯油は消防法で貯蔵量や貯蔵方法で規制されるのに対し,ペレット燃料は,該当しません。もともと木材と変わらないものですから,規制のしようがないといった方が正しいのかもしれません。
 貯蔵方法にも関係しますが,ペレット燃料の最大の欠点は,湿気に弱いことです。現在道内で製造されているペレット燃料は,10~15kg詰めのビニール袋で市販されていますが,輸送中や保管中に袋に穴が開くなどのトラブルは避けられません。各家庭で物置などに保管・貯蔵する際も雨水や結露などによる吸湿には十分注意する必要があります。
 このようにペレット燃料には,さまざまな課題がありますが,危険物ではないので住宅内に分散貯蔵するといったことも可能であり,冬期間の災害等への対策としても期待されます。こうしたメリットを活かすことによって,北海道のライフスタイルや住宅に適した燃料として定着する可能性は十分にあるのではないでしょうか。


 4.おわりに

 北海道では,持続可能な社会の実現への一歩として森林バイオマスのエネルギー利用を推進しています。ペレット燃料の生産施設は,全道各地に広がる勢いを見せており,将来的には,生産設備の適正な配置といったことも考えていく必要があるのかもしれません。
 林産試験場には,製造技術などに関するさまざまな技術相談等が寄せられています。ペレット燃料を一時のブームで終わらせないためにも,今後も北海道に適した燃焼機器の開発・普及を目指すとともに,ペレット燃料の製造技術の向上,原料の質・量・種類による燃焼特性,製品流通・包装・保管,燃焼後の灰処理といったさまざまな課題に取り組んでいきます。


 参考資料

1)遠藤 展:林産試だより,7月号,10-16(1985).など
2)北海道水産林務部:林産試だより,1月号,2-4(2006).
3)財団法人日本エネルギー経済研究所石油情報センター:“平成14年度灯油消費実態調査”(2003).


次のページへ