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林産試だより2006年10月号 一般家庭向けペレットストーブの開発

●特集『ペレットの普及に向けて』

一般家庭向けペレットストーブの開発

企画指導部 デザイン科 小林 裕昇


 はじめに

 地球温暖化の原因とされる二酸化炭素(CO2)の削減が世界的な課題となっています。このCO2削減のために化石燃料(石油・石炭等)の代替エネルギー源として,カーボンニュートラルな森林バイオマスを原料とした「木質ペレット」が注目されており,管理や取扱いの簡便さから一般家庭用暖房エネルギーへの利用が期待されています。
 この木質ペレットを北海道における主要な暖房用エネルギーの一つとして需要拡大していくためには,一般家庭に設置しやすいデザイン・機能を持ったペレットストーブを開発する必要があります。
 平成16~17年度に北海道木質バイオマス資源活用協議会が開催され,「北海道型ペレット燃焼機器の開発指針」が示されました。この開発指針を設計コンセプトとして,民間企業との共同研究でペレットストーブの設計と試作機の製作を行いました。


 1 デザインコンセプト

 北海道木質バイオマス資源活用促進協議会で示された開発指針の中で,外観デザインは「北海道の長く厳しい冬を快適に過ごすため,インテリアとして魅力あるデザイン性に富んだもの」とされています。図1~3は,林産試験場が指針に対して提案したコンセプトイメージです。図1のストーブは,FF式温風暖房機のイメージで曲線を中心としたデザイン,図2はオーブン機能付きのストーブで調理器具をイメージした直線的なデザインとしました。図3は,宿泊や観光施設向けとして炎のよく見える薪ストーブのイメージでデザインを行いました。



左:図1 家庭向けペレットストーブ(その1)  右:図2 家庭向けペレットストーブ(その2)




図3 観光・宿泊施設向けペレットストーブ

 試作機の制作では,これらのコンセプトイメージを基に既製品の問題点や改善点の洗い出しを行い,商品化を念頭に置いたデザイン設計を進めました。
 従来の暖房機器と比較してペレットストーブが大きいのは,要求される継続燃焼時間によりペレットタンクの容量が決められ,これが外形寸法に影響を与えるためです。また,現在市販されている製品は,ペレットタンクが機器の後方か燃焼室の下部に設けられています。タンクが機器の後方にあるとストーブの奥行きが大きくなり室内側へ張り出してしまうため,圧迫感を感じることになります。燃焼室下部にある場合はストーブの高さが高くなり,設置場所が窓下になる場合は窓の下枠より上になってしまう可能性があります。
 これらストーブ本体の形状が一般家庭への普及を妨げる一因ではないかと考え,奥行きおよび高さ方向の寸法を抑えるためタンク位置を燃焼室の横とし,外形寸法を幅90×奥行き30×高さ70cmに納めました。また一般家庭で設置しやすいFF式とし,外観も灯油ストーブに近いイメージでデザインしました。


 2 ペレット投入動作についての検討



図4 ペレット投入の様子

 ペレットストーブのペレット消費量は,最大火力で燃焼させた場合1時間当たり約2kgです。開発指針では,最大火力での連続運転時間が8時間とされていることから,タンク容量は最低16kg必要となります。試作機のタンク容量は20kg程度を予定しているので,1日あるいは1日半おきにペレットを補充する必要があります。ほぼ毎日行うこの作業の負担をできるだけ少なくなるように,ペレット投入口の位置や形状について検討を行いました。
 投入口の標準的な高さは,一般的な人体動作モデル1) では床からおおよそ65~70cmとなっています。試作機は全高が70cmであることから,投入口の高さとしては許容範囲であり問題はないと考えられました。しかし,ペレットはビニール袋に梱包されているため,投入時にビニール袋を支えペレットを周りにこぼさないようにする必要があり,非常に気を使うことになります(図4)。このため,投入口の手前に袋の先端部が載るような平らなスペースを設け,投入時の作業が楽になるように考慮しました。


 3 試作機のデザイン

 外形寸法と投入動作およびデザイン性に留意しながらペレットの投入方向について検討を行い,数種類の設計をしました。その中から使い勝手や製造コスト・デザインに優れたタイプ(図5~6)の試作を行いました。




左:図5 試作機のデザイン(前面投入タイプ)       右:図6 試作機のデザイン(ペレット投入口)


 このタイプでは,ペレットの投入方向が前面からとなっています。外観は,両サイドの前面パネルが上部から下部へ緩やかな曲線を描くことで,全体的に柔らかく安定したデザインとしました。またペレット投入時には,この前面の張り出しが袋を支えるような印象を与え,作業に安心感をもたらすものと考えられます。
 両サイドの曲面パネル部の色を替えることによるカラーバリエーションについて,CG(コンピュータグラフィックス)を用いて検討しました(図7~9)。



左:図7 カラーバリエーション(シルバー)  中央:図8 カラーバリエーション(オレンジ)  右:図9 カラーバリエーション(ブラック)


 4 試作機の仕様



図10 試作機(はちけん地区センター)


 試作機は,札幌市の「はちけん地区センター」(図10)と林産試験場内「木と暮らしの情報館」の2箇所に試験設置されており,燃焼の様子を実際に見ることができます。また,暖房機器やエコロジー関連の展示会などに参考出品しています。
 試作機の仕様は以下のとおりです。
 暖房出力は,8.1~2.2kw(7_000~1_850Kcal/h)です。部屋の広さに換算すると,木造20畳・コンクリート造33畳までが暖房可能な広さとなります(寒冷地の場合)。
 使用する燃料は,ホワイトおよび全木ペレットとし,バークペレットには対応していません注)。ペレットの消費量は1時間当たり2.23~0.73kgです。燃料タンクの容量は20kgを予定しており,燃焼継続時間は最大燃焼で約9時間となります。
 その他の機能としては,点火・消火の自動化,設定温度による火力の自動調整,タイマー機能による自動点火となっています。また,各種安全装置は通常の灯油ストーブと同等のものが採用されています。


 おわりに

 現在,試作機より得られた改良点を基にデザインや機能の再設計を進め,平成19年度の商品化を目標に作業を行っています。木質ペレットについては,石油価格の高騰により道民の関心も非常に高まっており,このストーブが普及のきっかけになることを期待しています。
注)ホワイトペレット:木の皮を剥(は)ぎ,木の皮が含まれないようにして作ったペレット
  全木ペレット:木の皮と木質部を混合したもの(幹や枝のままなど)を原料にしたペレット
  バークペレット:木の皮を原料にして作ったペレット


 参考資料

1)(社)日本建築学会:“建築設計資料集成3 単位空間I”,(社)日本建築学会編,丸善,東京,1980.


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