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林産試だより2006年11月号 「らせん形積層材の製造装置」について

●特集『知的財産権 その1』

「らせん形積層材の製造装置」について

性能部 防火性能科 平舘 亮一



 はじめに


 児童公園などに設置されている「らせんすべり台」や「らせん階段」のらせん部材の形状を考えた場合,曲率の小さい内周と曲率の大きい外周では,降りる高さは同じでも移動する距離が変わるため,内周側ではらせん傾斜がきつく,外周側ではゆるくなる形状となります。さらに中心からの放射線上ではすべり面は水平,側板は垂直であることが要求されます(図1)。そのため,木材に対しては三次元での曲げ加工が要求されます。



図1 らせん滑り台に求められる形状



 一般的ならせん形積層材の製造方法と問題点




写真1 一般的ならせん形積層材の製造方法の例



 一般的ならせん形積層材の作り方としては,写真1のように作りたい曲率に加工した鉄板などの型を用意し,それに傾斜させながらラミナを巻き付けるように積層して固定する方法があります。しかしこの方法だと,曲率が変わるたびに新たな型が必要になること,積層数が多くなればなるほど,はね戻ろうとする力を抑えながら固定する作業が大変なこと,積層材同士のズレを防ぎにくいなどの問題があります。また,真上から見て中心方向に向かう積層と曲率を保持する圧締力は確保できても,放射線上で垂直方向に押さえ込みらせん傾斜角を保持する圧締力が確保できず,すべり台のすべり面のように積層数が多くなると,きれいならせん形状で固定するのが難しくなっています。



 林産試験場で開発した装置の概要


 林産試験場では,このような問題点を解決しつつ,あらゆる曲率,傾斜に対応し,積層材を半径方向,高さ方向ともに基準面に正しく圧締できる「らせん形積層材の製造装置」を開発しました。技術の概念を図2に示します。高さ方向に移動可能で積層材のらせん傾斜角と放射線上での水平の保持および積層材のズレをそろえて浮き上がりを防ぐ縦加圧盤と,水平方向に移動可能でらせんの曲率と放射線上での垂直を保持する横加圧盤を組み合わせた形式となっています。この装置はフレームの配置を変えることにより曲率を途中から変える,あるいは直線部分と組み合わせて製作することが可能であり,いろいろな曲率や傾斜角に対応できるために一連の製作工程で型の製作に起因するコストアップを抑えることができます。



図2 らせん形積層材の製造装置の概念図




写真2 製造したらせんすべり台のすべり面

 また,この技術を用いた場合,従来法では困難であったらせんすべり台のすべり面のような積層数の多い部材も精度良く製造することができるようになりました。この技術を用いて製造したらせんすべり台のすべり面を平板の上に静置して写真を撮ってみました(写真2)。外周よりも内周の方が傾斜角がきつくなるため複雑な形になっている様子が分かると思います。
 この技術は「らせん形積層材の製造装置」として平成9年8月に出願し,特許第3030546号として登録(平成12年2月)されました。



 すべり台の製作と技術移転


 林産試験場では開発した技術を使って,約3.8mの高さから右旋回で300度回転しながらすべり降りてくる木製らせんすべり台を製作し,西興部村(にしおこっぺむら)にある屋内遊戯施設「木夢(こむ)」に設置しました(写真3)。また,この技術を木製遊具メーカーの(株)北樹(北見市)に技術移転し,そこで製作されたらせんすべり台が千葉県の幼稚園に納入されました(写真4)。



左:写真3 西興部村「木夢」に設置されたらせんすべり台  右:写真4 (株)北樹製作のらせんすべり台(千葉県)



 おわりに


 特許を取得した本技術により,曲率の変化や直線部分との一体化に柔軟に対応できるようになり,さらに,従来よりも精度よく効率的にらせん形積層材を作ることができるようになりました。
 近年,インテリア内装への高級嗜好の高まりや木質感を求めるユーザーが増えていることなどから,オール木材のらせん階段などが普及する可能性が高まっています。そんなとき,この特許技術を活用いただければと考えています。

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