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林産試だより2006年11月号 Q&A 先月の技術相談から ササの葉の防腐効果と成分について

Q&A 先月の技術相談から

ササの葉の防腐効果と成分について

Q:ササの葉には防腐効果がありますか?またそれに関わる成分があれば教えてください。


A:ササ類は日本全土のほかにはサハリン南部,千島列島南部,朝鮮半島のごく一部に分布するにすぎず,ほぼ日本特産といわれています。ササは日本国内のどこでも手に入れることができる植物であり,その葉は常緑で比較的大きいこと,撥(はっ)水性や清潔感があること,堅い葉脈により強度が高いことなどから,古くから食品の包装や料理の飾り付けに用いられ,日本人にとってはなじみの深い生活材料の一つとなっています。



写真1 北海道に広く分布するクマイザサ
Sasa senanensis Rehd.)の葉

 ササの葉には防腐効果があるという考えが,一般的に受け入れられています。しかし,採取してきたばかりのササの生葉(写真1)をビニール袋などに入れて密封し室温で放置すると数日間は鮮度を保ちますが,その後はほとんどの場合,葉の表面や内部に様々な細菌やカビのコロニーが発生します。これは,ササの葉には,可溶性糖類やタンパク質などが,それぞれ5.5%および12.6%ほど含まれており(表1),細菌やカビがそれらを利用し,温度や湿度などの条件がそろうことにより急激に繁殖するためと考えられます。



表1 クマイザサの葉の化学組成(対絶乾試料重量%)

 しかしながら,新鮮なササの葉のジエチルエーテル抽出物や酢酸エチル抽出物(表1)などには,食中毒の病原菌とされるブドウ球菌や大腸菌に対する抗菌性が認められることが報告されています。これらの抽出物中には,酢酸やプロピオン酸などの有機酸とともに,グアヤコールやフェノールなどのフェノール性化合物が主成分として含まれています。細菌に対する上記の抗菌性は,有機酸自体の抗菌力とpH低下作用,およびフェノール性化合物との相乗効果によって発揮されるものと考えられています。しかし,これらの化合物の含有量は比較的微量であるために,長期間の鮮度保持には向かないと思われます。

 また,表1中のジエチルエーテル抽出物の揮発性成分について調べてみたところ,表2に示すような化合物が微量に含まれていることが分かりました。これらのうち,“青葉アルコール・青葉アルデヒド”と呼ばれる成分は,青くささを呈する香りの主成分であるとともに,抗菌性を有する成分として知られています。また,テルペン類も樹木にも含まれ,森林内特有の香りを形成する物質であるとともに,それらの中のいくつかには抗菌性が認められています。しかし,これらの成分もきわめて揮散しやすいので,葉の鮮度が落ちると急激に減少するものと考えられます。

表2 クマイザサの葉のジエチルエーテル抽出物に
含有される揮発性成分

 以上のことより,新鮮なササの葉には確かに抗菌性に関わる低分子量の成分が多数含まれることが分かります。しかし,それらの含有量は小さく葉の鮮度が低下すると急激に減少するため,冒頭の事例のように抗菌力は長続きしないことが予想されます。したがって,ササの葉自体にはさほど強い防腐効果は期待できないと考えたほうが良さそうです。

参考資料
1) Chueyen, N. V., Kurata, T., Kato, H., and Fujimaki, M.: Antimicrobial activity of kumazasa (Sasa albo-marginata), Agric. Biol. Chem. 46, 971-978 (1982).
2) Chueyen, N. V. and Kato, H.: Volatile flavor components of kumazasa (Sasa albo-marginata), Agric. Biol. Chem. 46, 2795-2801 (1982)
3) グュエン.ヴァン.チュエン,倉田忠夫,加藤博通: クマザサの防腐効果について,防菌防黴 11, 69-75 (1983).
4) 畑中顯和: “みどりの香り: 植物の偉大なる知恵”,丸善,東京,2005_ p.175.
5) 川瀬 清: “森からのおくりもの”,北海道大学図書刊行会, 札幌,1989_ p.209.
6) 鈴木貞夫: “日本タケ科植物総目録”,学習研究社,東京,1978_ p.384.
7) トーキン,B. P.,神山恵三: “植物の不思議な力=フィトンチッド: 微生物を殺す樹木の謎をさぐる”,講談社,東京,1980, p.205.
8) 津田真由美,斎藤直人,関 一人,青山政和: ササの化学組成,林産試験場報 9, 17-20 (1995).




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