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林産試だより2006年12月号 「ホルムアルデヒド吸収能を有する生成物及びその製造方法」について

●特集『知的財産権 その2』

「ホルムアルデヒド吸収能を有する生成物及びその製造方法」について

利用部 化学加工科 本間 千晶


 はじめに


 北海道内には豊富なカラマツ資源があります。このカラマツ材の心材抽出物を用いた,環境に負荷をかけないホルムアルデヒド吸着剤製造方法に関する技術を,株式会社生物有機化学研究所と共同で提案しました。ここでは技術の概要を紹介します。


 特許の概要と考えられる用途


 近年の住宅の高断熱化,高気密化にともなって,建材または家具などから発生したホルムアルデヒドに代表されるVOC(揮発性有機化合物)に体が過敏に反応することにより様々な症状をみせる,いわゆるシックハウス症候群が大きな社会問題となっています。マスコミなどでも大きく取り上げられ,住環境におけるVOCの効果的低減方法の開発が急務となっています。VOCの中でも特にホルムアルデヒドが問題視される傾向があり,これに対応した様々なタイプの吸着剤が市販されています。尿素化合物やヒドラジン誘導体のような材料では,それらの化学的性質を利用することで高い吸着効果が得られることが知られています。

 一方,カラマツは北海道の人工林面積のおよそ30%を占めており,約9千3百万m3と豊富な蓄積がありますが,このカラマツの心材にはタキシホリン(図1)等のポリフェノール類が多量に含まれています。タキシホリンは,抗酸化能,紫外線吸収能,活性酸素除去能,アンモニア吸着能を持つことが報告されており,天然の機能性材料として有用な化合物です。このタキシホリンはアンモニア等のアルカリ性物質と酸化的重合反応等を生じると考えられています。そこでこれらの反応を活かすことによる,ホルムアルデヒドの低減に効果的な材料の開発を試み,廃棄時にも環境に負荷をかけないホルムアルデヒド吸着能を有する資材を製造することができました。



図1 タキシホリンの化学構造


 ところでこのアンモニア処理を行ったカラマツ心材抽出物をMDFボードに塗布したところ,ボード表面に均質に塗布可能で,深みのある褐色を呈することがわかりました(図2) 。むくの木材に塗布した場合も,同様に良好な色調が得られたことから,ホルムアルデヒド低減効果を併せ持つ自然塗料としての用途も期待できると思われます。




図2 アンモニア処理タキシホリン塗布材料の一例(MDFボード)


 おわりに


 本技術は,蓄積が多く,かつ自然の素材であるカラマツの心材を用いることを特徴としており,ホルムアルデヒド吸着能を利用した室内用吸着剤,塗装材料等の製造に大きな力となるものと期待されます。多くの皆様に興味をお持ちいただければ幸いです。



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