本文へ移動
林産試だより2006年12月号 動力式釘抜き装置

●特集『知的財産権 その2』

動力式釘抜き装置

技術部 主任研究員 白川 真也


 はじめに


 建築解体材は,これまでは,いったん粉砕して,製紙・ボード原料や,燃料,敷料,舗装資材等に利用されてきました。しかし,建築リサイクル法により,平成14年から建築物の分別解体が義務づけらたことから,今後は分別解体が進むと思われます。このため,今後はある程度状態の良い横架材や柱材が大量に排出されると予想され,これらは粉砕せずにそのまま使う「再利用」が必要になると考えられます。

 これまでも製材や集成材等への再利用は試みられてきました。しかし,ほとんどの建築解体材には釘や金物などの金属類が付着しています。これらの除去は写真1に示すようにバールなどを用いて人力で行っていましたが,これは手間のかかる作業で大きな労力と時間が必要でした。

 そこで,これらの問題を解決するために,人手に代わり,機械によって釘抜き作業を行うことができる釘抜き装置を開発し,特許取得しました(P3684457)。写真2にこの装置を示します。

 この釘抜き装置では空気圧駆動インパクトレンチの大きな力と振動を利用することにより,人手では簡単に引き抜くことが困難であった長い釘や錆びた釘の引き抜きも楽に行うことが可能となりました。



左:写真1 人手による釘抜き作業     右:写真2 釘抜き装置


 釘抜き装置の動作


 開発した釘抜き装置の動作を図1の(A)と(B)で説明します。(A)は駒爪が釘抜き装置の最下部に位置している状態です。ここで駒爪を釘頭下部に差し入れ,釘抜き装置の底板を木材に接触させます。この状態でインパクトレンチを駆動すると,各種ギヤを通じて動力が伝達され,クランクアームが矢印の方向へ回転して,釘抜きロッドが持ち上げられ,駒爪が上方へ移動することによって(B)に示すように釘が抜けます。




図1 釘抜き装置の動作


 建築解体材の場合,釘に錆が発生している場合も多く,この場合は釘の抜き始めに最も大きな力を必要とします。この釘抜き装置では,クランク機構により,(A)に示す付近においてクランクアームが連結ロッドに直交する方向に動くことから,クランクアームの移動量に対する釘抜きロッドの移動量が少なくなり,大きな釘引き抜き力を得ることができます。つまり,最も動力を必要とする釘の抜き始めで大きな力を出すことができます。

 さらに,前述の底板から駒爪を引き離す力によって釘を引き抜く際に,インパクトレンチの打撃振動力を加えて釘と木材との間に働く摩擦力を軽減させることができることから,高効率で作業性に優れた釘抜き作業を行うことができます。


 改良型釘抜き装置




図2 つかみ機構

 特許取得した釘抜き装置は,釘の頭が存在していることが前提条件となりますが,建築解体材の中には頭の無い釘も多く,このため,釘をつかみながら引き抜くことができる装置への改良を住友林業(株)との共同研究で実施しました。

 釘のつかみ機構には市販のエアーニッパを用い,その先端部にペンチ状の「ヤットコ刃」と称される替刃を使用しました。エアーニッパは空気圧によって開閉するしくみで,本装置では足踏スイッチにより操作します。足踏スイッチを踏むと圧縮エアが供給されてつかみ機構が閉じ,足踏スイッチから足を離すと排気され,内蔵バネによりつかみ機構が開きます。図2につかみ機構を示します。

 このつかみ機構と前述の釘抜き装置の機構を組み合わせて新たに試作した改良型の釘抜き装置を写真3に示します。

 また,実際に釘抜き作業をする際には写真4に示すようにローラコンベヤを設置した作業台上に建築解体材を置きます。釘抜き装置は作業台上部からスプリングバランサ(重量と釣り合うバネの力で物体を引き上げる装置)で吊り下げ,更にレールと滑車を用いて左右に自在に移動できるようにします。これらの作業方法により,最小限の手の動きと最小限の労力で釘抜き装置を使えるようにしました。



左:写真3 改良型釘抜き装置     右:写真4 釘抜き装置による作業



 釘抜き装置の性能


 釘抜き装置の性能を評価するため,建築解体材処理工場において,処理時間の比較を行いました。その結果,釘1本当たりに換算した処理時間(これには主材に付いている副材をはがす時間や,頭の取れた釘の処理時間等も含まれます)は,人手作業の約23秒に対し,釘抜き装置では約14秒でした。このことから釘抜き装置を使用することによって,従来の人手作業よりも作業時間を大幅に短縮させることが可能となりました。

 なお,この釘抜き装置ではボルト類は太すぎてつかめませんでしたが,写真5に示すような無頭釘,木ねじ,スクリュー釘,かすがい等つかめる金属はほとんど引き抜くことができました。



写真5 改良型釘抜き装置で抜いた釘・木ねじ等


 おわりに


 建築解体材の再利用方法として,例えば集成材用ラミナへの利用を考えた場合,原材料を安価に調達できる代わりに釘抜き費用や鋸・刃物の修理費用が余計に掛かります。当場では兼房(株)と共同で解体材内部に釘が残っていても切断できる丸のこの開発も行いました。また,他機関では埋没した釘の位置を自動検知する研究も進められています。これらの技術も導入し,釘抜き工程の省力・合理化が適切にできれば集成材や再生材を安価に製造でき,建築解体材の再利用用途が一層広がる可能性が十分あると考えられます。



前のページへ|次のページへ