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林産試だより2006年12月号 きのこ類の衛生管理と品質管理 -安心・安全確保のために-

 

きのこ類の衛生管理と品質管理 -安心・安全確保のために-

企画指導部 主任普及指導員 森 三千雄




 林産試験場きのこセンターでは,平成10年からきのこ生産者を対象に「きのこセンター瓦版」を発行しています。ここでは,その中から一般の方にも興味を持って読んでいただけそうな内容を紹介します。今回は,きのこそのもののことではなく,きのこも含めた食の安全性についてです。




 はじめに


 食生活の多様化により自然食品や健康食品が好まれ,また食品の3次機能(生体調整機能)が注目されています。それに伴って「食」の安全性も問われるようになりました。一方,異物混入や残留農薬など危害要因の多様化や流通の広域化,サービスの高度化などによる食品事故,食品の偽装表示による品質や表示への不信感などから安心・安全の信頼が薄らいでいます。

 消費者の信頼を回復するために野菜など農産物では,消費者の必要とする生産履歴を公開する前提で,食品の生産過程を含め流通情報の透明性を図るトレーサビリティシステムの導入が進められています。このシステムは,食品の安全性や品質・表示に対する消費者の信頼確保,食品事故等が発生した場合の製品回収や原因究明の迅速化を目的に,生産・加工・流通等の各段階で食品とその情報を追跡できる仕組みです(図1)。




図1 トレーサビリティシステムのイメージ



 また,食品全般に対し残留した農薬等が認められたものについては販売等を禁止する,ポジティブリスト制度が導入されています。ポジティブリスト制度とは,この名称が示すように,すべての農薬について残留禁止を原則とし,「残留を許容する種類のみをリストにして示す」方式です。蛇足ですが,この逆はネガティブリスト制度であり,「許容しないものをリストにして禁止する」方式です。きのこも,もちろんこの制度の対象になります。今年8月には,中国産シイタケについて水源,菌資材,農薬の使用状況等を自主的に徹底調査するため,約1か月間輸出を停止しました。また,10月には中国産マツタケから基準値を超える農薬が検出されたため,すべての輸入業者に残留農薬の検査命令が出されました。



 きのこ生産の現状


 現在,きのこ生産ではトレーサビリティシステム導入に向けた動きはありません。しかし,安全で良質なきのこを提供することが求められており,一部の量販店では生産現場に出向いて,施設から選別,包装,出荷に至るまでの衛生管理の調査や,おが粉をはじめとする培地材料の確認などを行っています。生産者側では,品質管理および品質保証のための国際標準モデルとしてISO(国際標準化機構)の「9001」認定を受けた企業や道産の培地材料にこだわった生産者も現れてきました。本州の企業では,おが粉や栄養体など培地材料の成分分析とその情報の蓄積を行っているところもあります。

 群馬県の「きのこ特産室」は,15年度から生シイタケのホルムアルデヒド含有量検査を夏と秋に2~3回実施し,その結果を公表して「県民の安心感」を確保していきたいとしています。

 北海道では,このようなシステムの重要性ときのこ生産者も参入できる体制を整えておく必要性から,16年度に「道産きのこ生産履歴管理の手引き」を策定しました。そして,義務化はされていませんが,導入を希望する生産者にはこの指導を行ってきています。



 新たな動き


 全国食用種菌協会は,無農薬栽培を基本とした「安心きのこ生産マニュアル」を策定して消費者に信頼されるきのこ作りを目指しています。原木栽培や菌床栽培でも,原材料(原木,おが粉,栄養体など)の証明や分析結果の提示が必要となります。また,使用する水も重金属やヒ素などは飲用基準以下と規定されており,地下水を使う場合は保健所などの分析や確認が求められます。特に原木栽培では,浸水時間が決められており,水温15℃以下なら72時間以内,15~20℃では48時間以内,20℃以上なら24時間以内とされています(増収剤添加の場合)。



 今後の方向


 図2は,食品の偽装事件が相次いだ14年3月に,北海道が消費者500名を対象に食品のイメージ等について実施した調査結果です(回答者は281名)。食品に関して消費者が求めているものとして,「正確な情報の伝達」と「衛生管理の徹底」の2つが重要なポイントであることがわかります。

 これらのことはきのこにも当てはまることで,15年に北海道が策定した「北海道しいたけ生産体制改善指針」でも指摘されています。したがって,生産者は生産工程に関する情報を的確に提供するため,作業記録や資材等の使用状況などを整備することが必要となります。これには,義務化はされていませんが,先述のトレーサビリティシステムを独自に実践してみることも参考になると思います。

 また,北海道では,16年度から安全で品質特性に優れた食品を独自に認証する「道産食品独自認証制度」をスタートさせています。この制度は,道内で生産された生鮮食品や道産原材料を使って製造・加工された食品が対象であり,きのこ自体が直接対象となるわけではありません。しかし,安全な加工食品には安全な素材(きのこ)が必要になります。

 このように素材から製品にいたるまで安全・安心が求められる時代であることから,きのこ類もこのような制度を活用または糸口として,他製品との差別化を図ることが可能ではないかと考えています。

図2 消費者が考える道産食品の信頼確保のために最も必要なこと



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