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林産試だより2007年1月号 第56回日本木材学会大会報告

 

第56回日本木材学会大会報告

利用部 化学加工科 東 智則


 はじめに


 平成18年8月8日~10日の3日間,第56回日本木材学会大会が開催されました。今回の開催地は「秋田美人」「なまはげ」「お酒」「きりたんぽ」で有名な秋田でした。東北地方での開催は今回で3回目で,平成5年の盛岡以来とのことです。東北四大祭りの一つ,竿灯(かんとう)祭りが6日まで行われていたのですが残念ながら期間が重ならず,祭りを見ることはできませんでした。

 本大会への参加者は約800人,研究発表はポスター発表,口頭発表合わせて約600件の発表が寄せられ,内容によりA~Uの21の部門に分類され,連日各大学,研究機関,関連企業の研究者,技術者間で活発な意見交換,討論が行われました。林産試験場は14件(口頭発表9件,ポスター発表5件)の発表を行いました。また昨年に続いて韓国木材工学会との交流のため韓国研究者の招待枠が設けられ,今回の学会には10名ほど参加し発表を行いました。

 今回の学会の研究発表要旨集は和文200~400字または英文100~300字の短い要旨が掲載された薄型の冊子となり,従来と同様の比較的詳しい要旨はCD版で配布されるという方法が試行されていました。


 ポスター発表


 初日の8日は秋田市内の秋田県総合生活文化会館・美術館アトリオンで,ポスター発表(写真1),企業展示が行われました。説明時間はポスター番号が奇数の発表者は午前,偶数は午後と2組に分けられました。参加者が1つの会場に集まり,まだまだ元気な初日ということもあって,説明者とじっくりと意見交換を行う姿があちこちで見受けられました。



写真1 ポスター発表の様子


 学会賞授賞式


 ポスター発表後に行われた学会賞授賞式では,林産試験場からは第14回日本木材学会地域学術振興賞に森泉周性能部長が「北海道産材の活用指針の構築ならびに技術普及」の業績,第7回日本木材学会技術賞に前田典昭性能部主任研究員と森満範耐朽性能科長が「腐朽による強度低下を考慮した木製土木構造物の耐久設計手法の開発」の業績により,それぞれ受賞しました。


 公開シンポジウム


 授賞式の後には,公開シンポジウム「森と木と環境 part2~日本の森林と国産材利用/国産材供給の現場から~」が開催されました。今回のシンポジウムは,4月に東京農業大学で開催された日本森林学会大会において日本木材学会と日本森林学会が合同で主催したシンポジウム「森と木と環境~森をまもり,国産材を利用すること~」を引き継ぐかたちで行われました。

 総合司会は秋田県立大学木材高度加工研究所の飯島泰男先生,コーディネーターは京都大学の川井秀一先生が務め,3つのテーマ「森林-木材-建築の共同作業をどう進めるか?」「森林・木材と市民をどう結びつけるか?」「木材学会・森林学会に何を期待するか?」に関連して,5名のコメンテーターから報告,発表が行われました。

 はじめに東京農業大学の宮林茂幸先生から,4月の森林学会で開催されたシンポジウムの概要について報告が行われました。

 続いて秋田県立大学の板垣直行先生から『秋田県の森林・木材・建築の現状』について報告が行われ,「乾燥秋田スギ柱材90本プレゼント」,「秋田スギの家供給グループ」,「乾燥秋田スギ認証制度」の設立など,秋田スギの需要を喚起するための様々な取り組みが紹介されました。

 さらに民間から3件の発表があり,最初に古河林業株式会社阿仁林業所所長の福森卓氏による「山は今「林業」から「森林業」へ」の発表が行われました。話の中で「現在林業は「業」として成り立っていない,林業が魅力のある職になっていない」「製材業の木材加工ではコスト削減できると思われる部分が多い。コスト削減できた分を製品価格ではなく,山元へ還元することが大切なことでは」「国産材は豊富に山にある。それをいかに利用できるよう環境を整えるかにより大きく変わるはず」などの意見が提案されました。

 次に木曽善元建築工房代表の木曽善元氏から「ある建築家の活動」のタイトルで,木曽氏が携わった住宅建設の事例が報告されました。この住宅では,施主自らが山に入り伐採したスギの丸太を皮むきして大黒柱として用い,また秋田県が実施していた「乾燥秋田スギ柱材プレゼント事業(最大90本プレゼント)」材を使用し,土台にヒバを使用した以外はすべてスギ材を使用したとのことでした。さらにこの活動を通して,山と施主を結びつけることの大切さを感じたことを訴えていました。

 最後にNPO法人グリーンコンシューマー東京ネット理事の秋庭悦子氏より「消費者の立場から」のタイトルで発表が行われました。発表では「あなたは自分の使う木の製品についてどんな情報が欲しいですか?」とのアンケートを行ったところ①有害物質が使われていないか②何の種類の木か③どこの国または地域の木か,という順位で回答が得られたということでした。さらに①魅力的な商品づくり-消費者は国産材利用の意義だけでは購入しない。学校などの公共の建物を国産材に。②情報提供-トレーサビリティ(生産者の顔が見えるように),買い手を育てる「消費者教育」が必要,③上流から下流までのコミュニケーションの場が必要,などの意見が提案されました。

 引き続き行われたディスカッションの部ではコメンテーターのみならず,会場からも様々な立場からの意見が出されました。

 最後にこれらの意見を総括して,国産材の利用・普及で一番大切なのは「山」「作り手」「買い手」の連携・ネットワークであること,また学会には啓発・普及,オピニオンリーダー,旗振り役として民間の活動を引っ張って行く役割が期待されている,とまとめられました。また総合司会者から,このシンポジウムをここで途切れさせず是非part3を開催してほしい,との要望も出されました。


 懇親会


 大会初日の夜には懇親会が催され,約350名が参加しました。秋田といえば酒どころ,ということで乾杯も地酒で行われ,その後も多種取りそろえられた秋田の地酒を片手に歓談する参加者が多く見受けられました。秋田名物「きりたんぽ」も料理の中にあったらしいのですが,残念ながら気づきませんでした。

 懇親会の途中で学会長である京都大学の今村祐嗣先生から木材学会の近況に関するスピーチがあり,学会誌が電子ジャーナル化され,英文誌Journal of Wood Scinence(JWS)の懸案事項であった受理から掲載までの待ち時間が短縮されたこと,JWSのインパクトファクター(掲載・発表された論文がどの程度引用されたかを示す尺度。同分野の他の雑誌との重要度を比較する場合に用いられることがある)が木材科学の専門誌の中で3番目にランクされたこと(ちなみに,1位Holzforschung,2位J. Wood Chem. Technol.,4位Wood Sci. Technol.,5位Wood Fiber Sci.,6位Forest Prod. J.),木材学会のホームページに企業の求人広告を掲載することになり,学会のみならず企業にも学生にもメリットになることが期待されること,学会の広報誌のウッディエンスがメールマガジン化されたことなどが紹介されました。


 2日目


 大会2日目、この日の秋田市の最高気温は34.9℃と、連日暑かった大会の中でも最高温度を記録しました。前日の懇親会プラスαの名残に加え、北海道では味わえない朝からの猛暑に気を失いそうになりながら2、3日目の会場となった秋田大学へと向かいました。

 この日から口頭発表が始まり、秋田大学工学資源学部棟を中心に13の会場で発表が行われました。私は主に「環境・資源」部門の発表を聴講しました。ちなみに部門別にみると発表件数は「環境・資源」部門が60件(口頭発表24件、ポスター発表36件)と最多でした。社会的に関心が高い分野で、対象とする領域も広いことから当然のことかもしれません。発表内容も、木材利用による炭素貯蔵効果、廃木材の再利用、コンポスト、微生物利用、炭化、木質バイオマスのエネルギー利用(燃焼、糖化)など多岐にわたっていました。


 最終日


 大会3日目の最終日は午前に口頭発表が、午後からは各研究会が開かれました。最終日の会場は既に発表を終えた人も多く、「もうすぐ終わり」という独特のリラックスした雰囲気が漂っています。口頭発表は「熱分解・エネルギー転換」部門に参加しました。木材の炭化に関する研究では、従来の木炭以上、あるいはこれまでの木炭には無かった機能性を付与させるため、木炭の組織構造を制御する様々な試みが報告されていました。またエネルギー転換に関しては従来の酸、酵素による糖化、ガス化法を改良するため新たな手法を付加する試みが報告されました。

 午後からは各専門分野に分かれた研究会が開催されました。私は帰りの飛行機の時間の都合から前半部分のみでしたが「居住性研究会」に参加し、「木炭による床下調湿-その現状と可能性」に関する講演を聴きました。研究会によっては翌日の11日に秋田周辺の関連施設の見学会を設定しているところもあり、林産試験場からも何名かの者が参加しました。


 終わりに


 以上、3日間にわたって開催された木材学会の報告をさせていただきましたが、自分が参加したセクションに内容が偏り、全体の部門を網羅した報告とならなかった点をご容赦いただければと思います。さて、来年の大会は8月にお好み焼きで有名な広島で開催されることが予定されています。機会がありましたら多くの方が是非大会に参加されることを期待し、報告を終えたいと思います。



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