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林産試だより2007年1月号 Q&A 先月の技術相談から 家具から出てきた虫への対処法

Q&A 先月の技術相談から

家具から出てきた虫への対処法

Q:人工乾燥材で製作した家具に直径4~5mm程度の穴が開き,中から虫が出てきました。
  この虫の名前および被害への対処法について教えてください。


A:発生した虫はオオナガシンクイムシ(学名 Heterobostrychus hamatipennis)と呼ばれる種です。



オオナガシンクイムシ(学名 Heterobostrychus hamatipennis

 本種は東南アジア原産と考えられていますが,現在では中国,台湾,日本(本州西南部以南)においてもその生息が確認されています。写真のとおり外見は円筒形をしていて,ナガシンクイムシ類の中では体長が8.5~15.5mmと大型の種に分類されます。ラワンなど南洋材を食い荒らす乾材害虫(含水率の低い木材を食べる虫)で,成虫はまず材に6~13mmの深さの孔を開け,その孔から材表面に平行して左右数cmの母孔を作り産卵します。孵化(ふか)した幼虫は母孔から材中に侵入し,材を食い荒らして成長した後,蛹(さなぎ)となり最終的に成虫として木材の外に大量の木粉を排出しながら脱出してきます。大型種であるため,その脱出孔は直径5mm内外にもおよび非常に目立つものとなります。

 日本では主にラワンの合板や製材に対する被害が報告されていますが,成虫による穿孔(せんこう)・産卵は日本においても発生する可能性があるため,実際にどの時点で材に侵入されたのかを特定することは困難です。また成虫の脱出時期も7~8月ごろとされていますが,製品の保管環境次第では通年の発生も予測されます。 今回は製作の前に人工乾燥を実施し,人為的に熱を加えた木材から発生したとのことですが,一般的に60℃以上の熱が加わった場合,多くの乾材害虫は死滅するとされています。これは体を構成したり生命活動を維持するためのタンパク質が変性してしまうためです。しかし乾燥の際,乾燥室内で熱むらが生じ,材内部まで均一に熱がかかっていない場合などには,内部にいる虫が完全に死滅していない可能性も考えられます。

 今後の対処としては,脱出した成虫による同一あるいは他の製材品への穿孔・産卵による二次被害を完全に防ぐために,薬剤による処理を実施されることをお勧めします。具体的にはエアゾール製剤の脱出口への注入処理,ガス製剤によるくん蒸処理,防虫成分を含んだ塗料による表面処理などがあげられます。さらに,これからの予防策として,薬剤(ホウ素系など)をあらかじめ加圧注入した製材を用いることで被害を抑制することができるでしょう。


 参考資料

 1)野淵 輝,鈴木憲太郎:“乾材害虫と屋内で発見される昆虫”,(財)林業科学技術振興所,1993,p42-43.
 2)中根猛彦,大林一夫,野村 鎮,黒沢良彦,福田元次朗:原色昆虫大図鑑 第2巻(甲虫編),北隆館,1963,p180.

 3)“実務者のための住宅の腐朽・虫害の診断マニュアル”,(社)日本木材保存協会刊,2004,p48.




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