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林産試だより2007年2月号 外付け木製ルーバーの開発

 

外付け木製ルーバーの開発

技術部 金森 勝義




 1. はじめに


 住宅の断熱・気密化は温暖地でも家づくりに不可欠なものですが,夏の日ざし対策を怠ると室内に熱がこもり,かえって暑い家になる危険が潜んでいます。このため,平成11年に改正された次世代省エネ基準(「住宅に係るエネルギーの使用の合理化に関する建築主の判断の基準」及び「同設計及び施工の指針」)では,地域・方位別に窓の日射遮へい対策が強化されています。窓は屋根や壁などの部位に比べて,冬には室内の熱を外に逃がし,夏には日射熱を室内に取り入れる割合が非常に高くなっています。したがって,窓ガラスは光を通しても熱を通さない複層のものを使い,窓の外に日射をさえぎるルーバー(ブラインド)やひさしなどを取り付ける必要があります。

 一方,大きなガラス壁面のあるオフィスビルでは冷房負荷を軽減する方策として,室内ではなくてガラスを2重にした壁面の中に,日射に応じて角度や昇降が自動調整可能なスラット(羽板板)を備えたルーバーを取り付ける事例が増えています。

 住宅及びオフィスビルを対象とした市販ルーバーのスラットはアルミ合金製が主流であり,木製のものは極めて少ないのが現状です。これは,アルミ合金製の方が寸法安定性や耐久性などに優れているためと考えられます。林産試験場では平成15年度から2か年間,オイレスECO株式会社との共同研究により外付け木製ルーバーの開発を行い,それらの実用化に向けた課題について検討しました。市販ルーバーの最近の動きと併せて,今回試作した木製ルーバーの概要を以下に説明します。



 2. 市販ルーバーの最近の動き


 近畿,九州及び関東などの新築住宅では従来の雨戸に代わって鋼製やアルミ合金製窓シャッターが急伸し,そのシェアは8割に達しています。これは,窓シャッターが従来の雨戸よりも台風などの災害に強く,しかも近年関心を集めている防犯機能にも優れているためと言われています。さらに,最近は外断熱効果の高いシャッターにブラインドの機能を付加させて,省エネ,通風・換気,採光さらにプライバシー保護を可能としたアルミ合金製ルーバーが注目されており,平成16年度の販売実績は約16_500台に達しています。



写真1 電動式ルーバー



 写真1は市販品の一例で,スラットの回転と昇降は電動によって任意に調整ができます。また,スラットの下降時に障害物を検知すると,直ちに停止する安全装置が付いています。このような電動式ルーバーは窓シャッターよりも価格が高いことから,廉価版としてスラットの回転と昇降を手動式にしたものが市販されています。


 写真2は通りに面した壁面すべてがガラスで覆われたオフィスビルにおいて,屋外側と室内側のガラスの間にアルミ合金製スラットのルーバーを取り付けている事例です。



写真2 大きなガラス壁面のあるオフィスビル(左)と
その室内から見たルーバー(右)





図1 新しい窓システム


 これは図1のように,オフィスビルの窓に求められる機能として,夏の日射遮へいや冬の断熱に限らず,年間を通して窓際の快適な室内環境を維持するための採光や自然換気などが求められるようになってきたためです。大きなガラス壁面をファサード(建物正面)としたオフィスビルでは,このような新しい窓システムの導入が増えています。なお,住宅と同様に窓の外側にアルミ合金製スラットのルーバーを設置している建物もみられます。





 3. 木製ルーバーの開発


 住宅とオフィスビルをそれぞれ対象とした木製ルーバーの開発を行い,いずれのスラットも回転(角度)と昇降(開閉)を自由に調整することができます。

3.1 住宅を対象とした試作品

 試作にあたってはひさしが深くて腰壁のある比較的小さな窓の外側に取り付けるものを検討しています。これは,スラットが雨晒(ざら)しになるのを避けて,反りやねじれなどの変形を極力抑えるためです。

 スラットにはタモの乾燥材を用い,その断面形状は図2のように寸法安定性や剛性(たわみにくさ)などを考慮しています。1枚の板からこのような断面形状に削ると,材積歩留まりは半減するため,今回は断面寸法の異なる2枚の板を幅はぎしてから削っています。板厚を薄くすると全開(開口部の上部や下部にスラットを収納する)状態のときのかさ高は低くなって軽量感を演出できますが,剛性は弱くなり防犯上も好ましくありません。反対に,板厚を厚くすると含水率の変化に伴う変形は生じにくくなりますが,全開状態のときのかさ高は高くなり自重によるたわみも大きくなります。



図2 スラットの断面形状(住宅)




写真3 木製ルーバーの試作(住宅)

 試作したスラットは写真3のように,開口幅1.65mの市販アルミ合金製ルーバーの躯体(フレーム)に取り付け,横浜市内の住宅で屋外暴露試験を行っています。表面仕上げは屋外用表面保護塗料を2回塗りしています。

 実用化への課題としては寸法安定性の向上とともに,かさ高を小さくし,スラットと躯体の接合方法を強固にすることなどが挙げられます。



3.2 オフィスビルを対象とした試作品

 試作にあたってはダブルスキンやエアーフローウィンドウなどと呼ばれているガラス壁面の通気層に取り付けるものを検討しています。スラットにはタモ集成材を用い,その断面形状は図3のように曲率を設け,すっきりとした眺望と適度な曲げ剛性を確保しています。また,板厚は全開時のかさ高を小さくするために6.5㎜とし,表面仕上げは紫外線吸収剤入りの屋外用表面保護塗料を2回塗りしています。



図3 スラットの断面形状(ビル)




写真4 木製ルーバーの試作(ビル)

 試作したスラットは写真4のように,有効開口幅1.6mとし,ガラス壁面の通気層内ではなく,共同研究先の滋賀工場事務室窓(単板ガラス,西向き)の室内側に取り付け,反りや曲がりなどを観察しています。なお,設計用気象データ(東京冷房用,西向き)を基に各種窓の侵入熱量を計算した文献によると,ダブルスキン(8mm厚ガラス+明色ブラインド+8mm厚ガラス)では自然換気によって通気層内の温度上昇が抑えられるため,一般窓(8mm厚ガラス+明色ブラインド)の場合の半分以下と報告されています。したがって,今回試作した木製ルーバーの夏季における設置条件は,ガラス壁面の通気層内に比べて厳しいことが予想されます。

 スラットの連結具(タナー)はプラスチック部品とひもを用い,破損等による部材交換はワンタッチで行うことができます。スラットをアルミ合金から木材に替えることによって,木の温もりを保ちながら,紫外線の反射を抑え,電波障害(携帯電話の送受信トラブル)の軽減などが期待されています。

 実用化への課題としては,有効開口幅を大きくするとスラットが曲がりやねじれなどの変形を起こしやすいこと,紫外線によってスラット材面が退色することなどが挙げられます。

 今回試作した住宅及びオフィスビルを対象とした木製ルーバーの実用化にあたっては,いずれも現在継続している暴露試験などの経過を踏まえながら,更なる改善が必要と考えています。



 4. 今後の展開




写真5 高窓への施工事例


 共同研究先のオイレスECO株式会社では,図3の木製スラットを,防犯性能がさほど要求されない部位であれば,様々な建築物に適応可能であると考えています。写真5のように,住宅の高窓に外付けした木製ルーバーへの適応はその一例です。しかし,このような用途であっても,スラットの寸法安定性を確保するためには,その長さを1 m以下に制限しています。今後は長さが1 mを超える木製スラットの実用化に向けて,寸法安定性や耐候性などに優れた木質材料の利用について技術指導などを行っていく予定です。




参考資料

 1) 次世代省エネルギー解説書編集委員会編:住宅の省エネルギー基準の解説,建築環境・省エネルギー機構(2002)
 2) 建材情報:カロス出版(株),No.306(2006)
 3) オイレスECO株式会社のホームページ: http://www.oiles-eco.co.jp
 4) 日経アーキテクチュア:日経BP社,11-10(2003)
 5) 月舘司,廣田誠一,鈴木大隆,樋口豊,中村洋志:道立北方建築総合研究所,調査研究報告No.183,3-4(2006)


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