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林産試だより2007年2月号 ハタケシメジの栽培試験

 

ハタケシメジの栽培試験

企画指導部 主任普及指導員 森 三千雄




 今月は,「きのこセンター瓦版」の中から,きのこ研究のむずかしさについて紹介します。現在,スーパーなどで売られているきのこのほとんどが人工栽培のものです。しかし,ご存じのようにマツタケなど人工的な栽培方法がまだ確立されていないきのこもあります。では,試しに栽培してみたら育ったきのこは,すぐに生産者により栽培され店頭に並ぶでしょうか?答えはノーです。店頭に並ぶためには,採算良くかつ安定的に生産されるものでなければなりません。
 ここでは,現在,北海道では生産されていないハタケシメジについて,簡易な栽培方法が可能かどうか試してみた結果を紹介します。




 はじめに




写真1 北海道に自生しているハタケシメジ

 ハタケシメジをご存じですか?北海道にも自生している歯触りの良いおいしいきのこです(写真1)。しかし,残念なことに店頭ではあまり見ることはできません。ハタケシメジの栽培は,一般にバーク堆肥(たいひ)を使って行われるため,手間がかかることや生産性が安定しないことなどの課題があり,北海道では栽培されていません。また,国内生産量でも900トン程度にとどまっています(平成17年度)。

 そこで,一般的なきのこ栽培で行われているおが粉を使った栽培方法を試し,その可能性を見てみました。なお,これは研究テーマとして取り組んだものではなく,テーマとして取り組むに足るものかどうかをみる,いわば予備試験的に行ったものです。


 試験Ⅰ(おが粉培地による栽培試験)


 試験は,2種類の菌株を使い,一般的なきのこ栽培で使われるカンバおが粉および安価に入手できるカラマツおが粉で行いました(表1)。ここでは,おが粉20%,栄養体15%,水分65%に調整した培地を片面フィルターの袋に1kg充填(じゅうてん)し,菌株を接種,通常の管理で培養しました。そして,きのこの芽ができた時点(写真2)で芝用の目土(めつち)を覆土し,発生室(温度18℃,湿度90~95%,照度350Lx/日(12hr))に展開してきのこの生育を促しました。

表1 試験条件と結果


 収穫は,傘がある程度開いた時点で行いました(写真3)。収量は,A(カンバおが粉と菌株1)の組合わせが243gで最も多く,ほかの組合わせ(B~D)はAの24~60%と低い結果となりました(表1参照)。



左:写真2 きのこの芽ができた時点の菌床の様子
右:写真3 傘がある程度開いた時点の菌床の様子


 このことから,これらの菌株にはカラマツおが粉はあまり向いていない,また菌株2にはここで試した培地組成は適していないと考えられました。


 試験Ⅱ(さらに省力化を考慮した試験)


 試験ⅠでのAの収量(243g)は,ほかの栽培きのこの収量と比較すると決して満足できる量ではありません。しかし,栽培の可能性を見るのが目的なので,試験Ⅰで収量の良かった培地条件(組合わせA)を繰り返し試験しました。ただし,培地調整から培養までは試験Ⅰと同じ工程で行いましたが,今回は工程の省力化(一般的な菌床栽培と同様の方法)を考慮して覆土を省略したところ,側面にも芽がついたので大きな袋に入れ替えて発生室に展開しました(表2)。

表2 試験条件


 この結果,培養日数は短縮されましたが,収量は逆に少なくなりました(表3)。また,菌回りしない菌床があるなど安定性・均一性にもかける状況となりました。

表3 試験結果



 おわりに


 ここでは,手持ちの少ない菌株と限られた栽培条件で試した状況を紹介しましたが,本格的に研究を進める時には多くの菌株と多様な条件の組合せによる試験を繰り返し,収量性や安定性などが良い菌種や栽培条件を見つけていくことになります。北海道に適した樹木の研究(樹木の選抜)ほどのことはありませんが,新しいきのこが店頭に並ぶには多くの時間を必要とすることがご想像いただけたでしょうか?

 ハタケシメジについては,今後も培地組成や発生環境などについて検討を続けていく予定です。

 最後に,新しいきのこの開発にはベースとなるきのこの菌株が大きな財産となります。きのこ狩りの好きな方で,例えばここで紹介したようなハタケシメジや他の食用きのこの中でも少し変わった特徴を持った「新鮮なきのこ」を見つけることがありましたら,一かけらでもいただければ助かります。その際には,是非,林産試験場までご連絡下さい。



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