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林産試だより2007年3月号 油吸着材による水面の油膜の除去

 

油吸着材による水面の油膜の除去

利用部 主任研究員 梅原 勝雄



 はじめに


 1991年の湾岸戦争で大量の油が海に流出し,周囲の環境を破壊したことを発端として,林産試験場では木質油吸着材の研究を始めました。その結果,木質繊維の熱処理物が,強い油吸着性能を持っていることを見い出しました。そこで,熱処理材料の選定,熱処理条件の決定,製造機械の開発,特許取得を経て,実用化のための共同研究を北海道森林組合連合会と開始し,現在は東川町にある工場で同会による木質油吸着材の生産が行われています1~4)

 白い不織布(ポリプロピレン製)に黒い木質油吸着材を入れた「もりの木太郎」MPW-45は,海上や河川の油吸着用に開発され商品化されました。これまでに,防災の日を中心とし,河川での使用のための普及活動を,最初は林産試験場が行い,その後は同会と木質油吸着材の総販売元が,道内だけでなく,全国各地で積極的に販売活動を行っております。

 そうした中で,私はある釣りの好きな人から,港に浮いている油が魚に付きはしないかと気になるので,油膜を吸うことができる製品ができないものかと相談を受けました。その検討の結果2005年には,木綿の袋に木質熱処理物(油吸着材)を入れた,薄い油膜を吸う製品「もりの木太郎」M-COPを開発・発売しました。


 油膜を吸着する原理


 油を吸着する材料はいくつかあります。土壌や砂のような無機物,木材の破砕物(おが粉,チップダスト,樹皮),ピートモス,カポック,コーヒーかすなどの天然有機物その他,ポリプロピレンで代表される石油化学製品や,木質油吸着材,木炭,もみがら炭などの炭化物または熱処理物などです。

 油は,これら吸着材同志の隙間や自らの持つ穴や細孔に保持されます。特に木質油吸着材の場合は自らの持つ細孔のほか,長い繊維の絡み合いの中に多くの油が保持されます。さらにこの素材は,ポリプロピレンに代表される石油化学製品と同じく,水をはじいて油になじむ性質があります。


 港や河川などの水面に浮いた油


 一般的に,水面に油が浮くと徐々に広がって,分子の層が薄くなっていきます。さらに薄くなると写真1に見られるようなギラギラした虹色に光る油膜か,写真2に見られるような白い薄い油膜になります。港でよく見られるのは写真2のような油膜が多いと思います。



左:写真1 虹色に光る1から2層の厚さの油膜   右:写真2 写真1より少し厚く白い油膜



 一般的にこの油膜は薄く,そのままでは油吸着材で吸着することは難しいと言われています。このような油を吸着するために,写真3に示す吸着オイルフェンスF5018(木質油吸着材を入れた吸着材とオイルフェンスの兼用品)などのオイルフェンスでせき止めるなどして油膜を厚くします。そして,その内側に「もりの木太郎」MPW-45のような油吸着材を使うと,油が吸着しやすくなり油処理の作業がスムーズにできます。このような油の吸着処理が,河川などで実際に行われています。



写真3 吸着オイルフェンスF5018



 水面上の薄い油膜の除去


 一般的な油吸着材は水をはじいて油になじむ性質を持っていて,この性質を利用して油を吸着しています。しかし,その反対に水を吸着する素材の袋に木質油吸着材を包んだ製品は,写真1や2に示したような薄い油膜を容易に吸着することができます。



写真4 薄い油膜も吸う油吸着材M-COP


 そこで開発されたのが写真4に示す「もりの木太郎」M-COPです。河川,港,湖などの水面に浮いている薄い油膜をとるのに最適です。また河川の油吸着処理で薄い油膜が残った場合に使うと,袋の木綿を通して水と共に入ってくる油膜を木質油吸着材が吸着しますので,他の油吸着材では難しい薄い油膜を吸着できます。ただし,袋が水を吸うため,吸着する油が多い所で長時間使用すると,沈む可能性がありますので,従来の油吸着材との使い分けが必要です。



 まとめ


 河川に油が流れ込んだ場合はこれまでどおり,「もりの木太郎」MPW-45と吸着オイルフェンスF5018などを併用して使っていただければいいと思います5)。そして,吸着されずに残った薄い油膜の場合は「もりの木太郎」M-COPを使っていただくことで,油は一層きれいに除去することができます。

 なお,木質油吸着材の詳細については林産試験場ホームページ
http://www.fpri.hro.or.jp/yomimono/biomass/treatment/OilAdsorption.html)をご覧ください。



 文献


1)峯村伸哉:油吸着材の特性と木質油吸着材の誕生,林産試だより1998年2月号,1-4.
2)梅原勝雄:木質油吸着材の特徴,同上,5-7.
3)中村史門:木質油吸着材の応用製品,同上,8-9.
4)渋谷良二:木質油吸着材の工場生産を開始,同上,10-12.
5)梅原勝雄:河川の油流出事故への木質油吸着材の利用,林産試だより2001年6月号,1-3.


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