Q&A 先月の技術相談から
写真1 木質ペレット燃料(トドマツおが粉)
A:木質ペレット燃料(写真1)は,地球環境に優しいカーボンニュートラルなエネルギーとして注目されています。粒が小さく均一で,自動運転も可能であるため,家庭用暖房等に向いています。
木質ペレット燃料は工業製品ですので規格化が望まれますが,残念ながら現在日本国内における統一された品質基準はありません。ここでは諸外国における品質基準についてご紹介します。
現在,オーストリア(ONORM M 7135)・スウェーデン(SS 18 71 20)・ドイツ(DIN51731)及びアメリカにおいて木質ペレット燃料に関する国内規格が制定されています。またヨーロッパにおいては欧州標準化委員会により地域規格(CEN/TC 14961)が暫定的に提示されています。
これらの規格は原料又は製品の品質により数種に分類し,区分ごとに寸法・密度(見掛け密度,かさ密度)・水分・灰分・発熱量等の基準が設けられています。
木質ペレット燃料の寸法はストーブやボイラー等の燃焼機器を設計する上で重要な要因となります。サイズが合わない原料を使用すると燃料詰まり等の原因となります。一般に北海道内では直径6mm長さ30mm以下のペレットが用いられています。
見掛け密度(ペレット一本当たりの密度)は1.0~1.4g/cm3以上,かさ密度(一定容積当たりの密度)は500~600kg/m3以上が要求されます。見掛け密度やかさ密度は成型状態の指標となります。
水分(水を含めた全重量中の水の重量を%で表したもの)は10~12%以下とされています。伐採された直後の木材が50%以上の水分を含んでいることが多いのに比べて,低水分で燃やしやすい燃料です。
灰分は0.5~3.0%以下とされています。灰分が多いと燃焼障害を起こす可能性があります。また,灰の後始末も煩雑になります。ペレットストーブで使用する場合,アメリカ規格におけるプレミアムクラス(灰分1%以下)以上が必要になると考えられます。
発熱量(真発熱量)については,16.9MJ/kg以上から19.5MJ/kg以上が要求されます。これはカロリーに換算すると4_037kcal/kg以上から4_658kcal/kg以上,ワットに換算すると4.7kWh/kg以上から5.4kWh/kg以上となります。
参考までに林産試験場で試作した木質ペレット燃料の真発熱量及び水分・灰分の値を示します(表1)。トドマツ(おが粉),カラマツ(おが粉)を原料とした場合,主な規格を満たすことができると考えます。
表1 木質ペレット燃料の真発熱量及び水分・灰分
なお,ドイツ規格においては,ヒ素やカドミウム等の有害元素含有量に関する基準があります。間伐材や製材工場から発生するおが粉等を原料とする場合は,ほとんど問題はないと考えられます。しかし,建築解体材などの汚れたバイオマスを利用する場合には,十分注意する必要があります。