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林産試だより2007年4月号 産学官連携で木材利用技術の開発を!

●特集『産学官連携による開発研究の進め方』

産学官連携で木材利用技術の開発を!

企画指導部 経営科 加藤 幸浩



 キーワードは産学官連携


 「木材を利用した新たな製品を開発したい。」
 「既存木製品の性能や機能を向上させて差別化を図りたい。」
 「装置を開発または改良して工場の生産効率を向上させたい。」
 日常の企業経営活動の中で,こうした局面を迎えることがしばしばあると思います。そのとき,自社の経営資源と技術蓄積だけでこれに対処できれば何ら問題はないのですが,一部の大企業は別にして,自社だけでは対処できないケースも多いのではないでしょうか。このような局面を打開するための有効なツールの一つに,産学官連携があります。

 産学官連携は,経済活性化の切り札として1995年(科学技術基本法制定)からスタートした我が国の経済政策で,大学等(「学」)で創出された知(シーズ)を企業等(「産」)が活用してイノベーションや新事業を生み出す活動を,国や自治体(「官」)が支援するものです。道でも,2000年に制定された北海道科学技術振興指針に基づき,産学官連携を推進しています。しかし,産と学との間には,様々なギャップが存在するため,その連携はなかなか一筋縄にはいきません。


 産と学のギャップと林産試験場の機能


 大学は,教員個人の知的好奇心による自由な学術研究1)(知の創造)とそれに基づく学生の教育(知の伝達)が行われる場です。一方,企業はステークホルダー(利害関係者)と良好な関係を維持しつつ,組織の持続と成長を目指して利潤を追求する場です。このように,大学と企業との間には,まず基本的な使命や目的,価値観,文化等において本質的な違いがあります。

 また,大学が行う「学術研究」と企業が行う「開発研究」2)は,同じ「研究」とはいっても全く異質なものです。その違いを整理すると,表1のようになります。学術研究は,(1)真理の探究を目的とし,(2)動機は教員の知的好奇心であり,(3)分析的・発散的な手法が中心で,(4)中長期的または無期限の研究が多く,(5)評価は学術論文によってなされ,(6)成果は早急に公表されるのが一般的です。これに対して,開発研究は,(1)イノベーションを目的とし,(2)動機は社会ニーズにあり,(3)合成的・収束的な手法が中心で,(4)短期的で期限付きの研究が多く,(5)評価は事業化の成功や収益向上によってなされ,(6)成果は原則非公開(企業秘密)となるのが一般的です。こうした学術研究と開発研究との大きなギャップは「魔の川(デビル・リバー)」3)と呼ばれていますが,産学官連携による技術開発・製品開発を推進するためには,この「魔の川」を越えるための機能がどうしても必要になります(図1)。その機能を有する機関の一つに林産試験場があります。

 林産試験場は,道内木材産業のための産業研究機関として,時には大学や他の研究機関と協力しながら,幾度も「魔の川」を越える木材利用技術の研究開発を行ってきました(図1)。企業の皆さんが冒頭のような局面にぶつかったとき,「木」に関することであれば,まずは林産試験場にご相談ください。林産試験場と共に,産学官連携による技術開発・製品開発に取り組みましょう。


表1 学術研究と開発研究との違い,図1 木材利用技術の研究開発・事業化のイメージ



 参考資料


1)科学技術・学術審議会学術分科会基本問題特別委員会:“これからの学術研究の推進に向けて”,2004.
2)文部科学省:“科学技術白書(平成18年版)”,文部科学省,東京,pp.129-130,2006.
3)出川 通:“技術経営の考え方 MOTと開発ベンチャーの現場から”,光文社,東京,pp.11-29,2004.




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