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林産試だより2007年4月号 わん曲集成木材製造のシーズ育成試験,顕在化ステージの研究について

●特集『産学官連携による開発研究の進め方』

わん曲集成木材製造のシーズ育成試験,顕在化ステージの研究について

技術部 加工科 八鍬 明弘



 (独)科学技術振興機構(JST)重点地域研究開発推進事業 平成17年度シーズ育成試験で行った研究の概要


 この事業は,研究費助成事業の2-3段階(本誌記事「競争的研究資金を活用する開発研究の進め方」参照)に相当する研究シーズの実用可能性の検証と位置づけられており,林産試験場はこの補助によって「わん曲集成木材の生産性向上を目的とした製造装置の開発」についての研究を行いました。

 集成材は乾燥した挽(ひ)き板(ラミナ)を接着して作ります。そのため,細い間伐材からでもラミナが得られ,むくの製材に比べ狂いが少ないことなどの利点があり,住宅部材等に広く使われています。わん曲集成材は,力をかけて曲げたラミナをその状態を保持したまま接着固定することによって製造される曲率を持った集成材で,通直な部材に対してやわらかさを感じるなどの独特な意匠性を有しています。住宅部材やインテリア,エクステリアに用いることで心地よい生活空間を提供できるとともに,画一的なデザインを脱却し,製品のバリエーションを広げることができると考えられます。

 さらに,わん曲集成材は図1のように通直部材を用いた骨組みよりも構造強度上の弱点となる接合部を減らすことができ,部品点数が減ることから施工性の向上につながります。このようなメリットを持つわん曲集成材が安価に提供できれば,利用範囲は飛躍的に広がることが期待できます。

図1  わん曲部材と通直部材で構成された構造体の部品点数,接合部数の違い



 従来のわん曲集成材の製造装置は例えば写真1のように多数のクランプで構成されており,接着剤を塗布したラミナを曲げるためにそれらのクランプを順次動かして,さらに接着に必要な圧締圧を発生させる必要がありました。この方法によると部品点数の多さから装置の価格が高く,また作業にも多くの時間を要することから生産効率が低くなり,その結果,製品は高価にならざるを得ませんでした。



写真1 従来のわん曲集成材の製造装置の例



 そこで,これらの課題を解決するために,クランプを用いない圧締方法によるわん曲集成材の製造装置を開発することを目標としました。これは,図2の概念図のように,所定曲率の型枠フレームと押さえフレームの間に,接着剤を塗布したラミナを必要な枚数だけ積層して挿入し,押さえフレームを固定した後に,圧縮空気によって短時間で均等に所要圧締力を発生させる装置で,現在特許申請中です。

図2  シーズ候補の概念図



 JST産学共同シーズイノベーション化事業 顕在化ステージによる研究の概要


 この事業は,研究費助成事業の4-5段階に相当するもので,産業界の視点からシーズ候補を顕在化させ,大学等と産業界との共同研究によってイノベーションの創出に繋げることを目的として,実現の可能性を検証するための試験および調査(フィジビリティスタディ)を行うものです(http://www.jst.go.jp/innovate)。

 今回,平成18年11月から19年3月の期間でこの事業により「わん曲集成材を使った生活空間の創出および生産技術の顕在化」の研究を行いました。これは,前述の「わん曲集成木材の生産性向上を目的とした製造装置の開発」をシーズ候補として株式会社アサヒに取り上げていただき,共同で申請し採択されたことによるものです。また,フィジビリティスタディに関して専門的知識を有する株式会社アイ・ピー・エスの参画も得ました。

 研究の分担は,株式会社アサヒはシーズ顕在化プロデューサーとしてマネージメント,成果の公表,関係書類の作成・提出等全体の責任者としての役割を担うとともに製造装置の試作を行いました(写真2)。株式会社アイ・ピー・エスは企業への聞き取り調査を主とした市場調査を担い本研究の中心的な役割を果たしました(図3)。林産試験場はこれまで十分になされていなかったわん曲集成材の性能評価を行いました(写真3)。



図3 調査プラン






左:写真2 試作した製造装置      右:写真3 性能試験の様子



 現在,取りまとめの段階ですが,はたして品質が安定したわん曲集成材を製造できるのか,わん曲集成材のコストがどのくらい下がるのか,用途は,市場価格は,などの調査結果を「イノベーション創出プラン」としてまとめる予定です。



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