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林産試だより2007年4月号 Q&A 先月の技術相談から ステーキ皿を載せる木製トレイに適した樹種

Q&A 先月の技術相談から

ステーキ皿を載せる木製トレイに適した樹種



Q:レストランで使われるステーキ皿(鉄板)を載せる木製トレイを扱っています。今まで,スプルース材に濃色の塗装をかけていましたが,塗装が剥(は)げると見ばえが悪くなるので,タモ材に替えたところ,レストランから「重い」とのクレームがありました。どんな樹種を使えばよいのでしょうか?


A:木材の性質は樹種により様々ですが,ここに登場した2種類の木材は,偶然にもかなり対照的なものです。樹種による材質の違いと,ステーキ皿用トレイに要求される性能について考えてみましょう。

 スプルースは北米産の針葉樹で,マツ科トウヒ属に属する複数の樹種が含まれます。SPF(スプルース,マツ,モミ)と称して他属の針葉樹材とも混みで扱われることが多く,北海道でエゾマツとトドマツの材が「エゾトド材」として一括扱いされるのと似ています。建築構造材に使う強度はあり,言わばきわめて「普通」の木材,各種材質が程々である樹種と言えます。

 タモは,植物図鑑に載っている名称(標準和名)ではヤチダモといい,モクセイ科トネリコ属の広葉樹です。北海道では川沿いなどによく見られます。野球のバットや階段の踏み板,手すりなどにも使われる強靱な材であると同時に,木目が多様で美しいことから,装飾性の高い内装パネルや工芸品にも使われます。

 さて,「重さ」が問題とされていますが,単位体積当たりの重さを表す「密度」で,二つの樹種を比較してみましょう。スプルースの一般的な密度0.41g/cm3に対し,タモは0.65g/cm3で,重さは約1.6倍増となり,25×15×1.5cmの板とすると,約135g違います。従業員は,重い鉄板を載せた重いトレイを片手で水平に保ちながら,お客様の前に静かに置き,食事が済んだら下げる動作を繰り返すうち,筋肉痛にとどまらず,肘・手首などの慢性的な炎症に至るおそれもあります。この点で,軽い=密度の低い木材が望まれます。また,木材の密度は,重さだけではなく,いろいろな材質と関係があります。木材の熱膨張率や水分変化に伴う収縮率は,密度が高いほど大きい傾向があり,鉄板の熱や洗浄・乾燥による割れの発生率は高くなります。また,このトレイの重要な機能である断熱性は,密度が低い木材ほど高くなります。木材の密度は,木材の中にある隙間の比率で決まります。密度が低い木材は隙間が多く,そこに入ってる空気が熱伝導を抑えるのです

表 各樹種の材質


 では,密度は低いほどよいのでしょうか?トレイは重い鉄板を載せるのですから,簡単につぶれたり傷ついたりしない強さ,硬さも必要です。傷のあるトレイは,マイナスイメージを生むだけでなく,食品への破片混入や,洗浄・乾燥不十分による雑菌の繁殖など,衛生上の問題もはらんでいます。この,木材の強さ,硬さといった強度的性質は,密度が高いほど高くなります。軽い木材の代表は,模型飛行機などに使われるバルサですが,この材は非常に柔らかく,ステーキ皿で潰れたり,ちょっとした衝撃で傷がついたりすると考えられ,トレイには不向きです。

 今まで,この用途にスプルースが使われてきたのは,密度がちょうどよかったからと考えられます。変えたいのは見た目ですから,スプルースと同等の密度で,色合いの濃いものを探してみましょう。針葉樹ではカラマツやスギ,北米のベイスギの心材は赤味を帯びたり,濃褐色になったりします。しかし,カラマツはやや密度が高く,スギやベイスギは逆に柔らかく傷がつきやすくなります。広葉樹では,色味のある材は密度も高いことが多いのですが,例えば,北海道にも産するキハダは,緑色を帯びた渋い褐色の材で,年輪の模様も見え,密度が0.45 g/cm3と比較的軽く,窓枠材などとしても使われていますので,強さや寸法安定性の面でも期待できると思われます。スプルースやタモほど大量に流通していないので,安定して入手できるかどうかが問題ですが,北海道の山野では珍しくはない樹種ですので,試してみる価値はあると思います。




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