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林産試だより2007年6月号 平成19年度 林産試験場の試験研究の紹介

 

平成19年度 林産試験場の試験研究の紹介



 林産試験場は,19年度に29課題(うち新規14課題,19年4月時点)の試験研究に取り組みます。これらの内訳は,北海道の研究予算である重点領域特別研究8課題および一般試験研究12課題,国や法人等の北海道以外の公的な予算である外部資金活用研究4課題,民間企業との共同研究4課題,民間企業からの受託研究1課題となっています。


重点領域特別研究と一般試験研究


 I.木質材料の需要拡大を図る技術開発

1)北海道の木造住宅の耐震改修促進を目的とした耐震診断・補強効果評価法に関する研究 (重点:H18~20)

 北海道では,これまでに地震による木造住宅の損傷や倒壊等の被害が数多く発生しており,被害を軽減するために既存建築物の耐震性能を適切に診断し,効果的な耐震改修を進める必要があります。そこで,道内の既存木造住宅に適した合理的な耐震診断方法と,住宅全体に及ぼす補強効果の評価方法を提案します。



耐震診断試験の様子


2)寒冷地仕様木造軸組外壁の防耐火性能推定手法の開発 (一般:H17~19)

 北海道の住宅は壁内に断熱材が充てんされており,無断熱外壁とは防火性能が異なっています。ここでは,道内の建材メーカーによる防耐火構造外壁の開発および認定取得を支援するために,壁内に断熱材が充てんされた住宅外壁の防耐火性能を熱伝導モデルに基づいて推定する手法を開発します。

3)道産針葉樹に適した準耐火集成材の開発 (一般:H19~20)

 公共施設等の大規模建築物を木造とする場合は,通常燃えしろ設計を適用した大断面集成材を使用していますが,断面寸法が大きくなるため製造面およびコスト面でネックとなっています。そこで,燃えしろ設計に代わる,道産針葉樹材に適する耐火被覆技術を活用した新たな準耐火集成材を開発します。

4)既存木造住宅の生物劣化診断手法の開発 (重点:H17~19)



生物劣化の様子

 阪神・淡路大震災を機に建築基準法が改正され,木造住宅における耐震安全性が重視されるようになりました。住宅構造部材に腐朽などの生物劣化が生じると,新築時に確保した耐震安全性が著しく損なわれてしまうことから,適切な生物劣化の診断と処置が重要になります。しかし,現状での生物劣化の検査・診断は目視などの主観的評価にとどまっています。そこで,木造住宅の長寿命化・構造安定性を確保するために,目視以外の客観的で信頼性の高い生物劣化診断技術や,生物劣化を受けた住宅に残存する構造性能の推定手法を開発し,生物劣化の状況に応じた処置方法を整理・提案します。

5)道内未利用資源を利用する建材開発と評価システムの提案 (重点:H17~19)

 道内の未利用資源として豊富な資源量を有するもみ殻,木工場廃材,ホタテ貝殻,火山灰,珪藻土,廃石膏ボード,住宅用グラスウール廃材を用いて,低コスト・簡便な加工・成形技術を開発し,内装材や断熱材,構造面材などの新たな建材を開発します。また,建材としての用途に応じた強度や耐久性能などの各種性能水準とVOC等の吸着性能などに関する評価手法を提案します。

6)アセチル化による人と環境に安全な性能強化木材の製造技術の開発 (一般:H19~20)

 自然環境との調和や安全・安心な製品を求める消費者ニーズが高まる中,木材も人体への安全性が高く,リサイクル・リユースしやすい耐久処理が要望されています。そこで,人や環境に安全・安心な性能強化処理であるアセチル化の実用化・製品化に向け,製造技術の開発や性能評価を行います。

7)光触媒機能評価システムの構築および活用製品の開発 (重点:H17~19)

 酸化チタンを用いた光触媒技術は,大気中の有害物質の分解,抗菌,防汚,水質浄化など,様々な業種・事業分野での環境ビジネス技術として注目されています。しかし,その特長や性能などに関しては,まだ知られていない面が多くあります。そこで,道内の中小企業による光触媒活用製品の開発に貢献するために,光触媒製品の総合的な評価システムを開発します。

8)腐朽を原因とした緑化樹折損危険木診断技術の開発 (重点:H18~20)

 都市に植栽された緑化樹は,高樹齢化,劣悪な立地環境,除雪時等の傷害などで腐朽が発生しやすい条件にあります。適切な措置が実施されていない場合,台風などの災害時には樹木の倒壊,枝落下などによる人身事故や交通傷害が発生し,社会的に大きな影響を与えます。そこで,市街地に植栽されている緑化樹を対象に,樹木の外観から危険度を判定する技術を開発します。

9)維持管理による木質構造物の耐朽性向上のための検討 (一般:H18~20)

 景観に配慮した街づくりの観点から,道路施設や公園事業への木材の積極的な利用が期待されています。屋外で使用する木質構造物では,構造物の安全性を長期間維持するために生物劣化に対する初期の措置に加えて,設置後の適切な維持管理のための処理(二次的処置)が不可欠です。しかし,現状では,その実施時期や効果を予測することが困難です。そこで,必要とされる使用期間にわたり構造物の安全性を維持するために必要な二次的処置の方法とその効果について検討します。

10)カラマツ人工林材の性能予測技術の開発 (一般:H19~21)

 道内のカラマツ人工林は成熟期を迎えつつあり,付加価値の高い建築用材としての利用促進が求められ,特に集成材としての需要が高まっています。カラマツの集成材への効率的利用を促進する技術の一つとして,集成材用ラミナや製材の強度性能や材質を立木や原木の段階で予測する技術を開発します。

11)道産建築用材の環境優位性の評価 (一般:H19~20)

 道産木材の利用促進を図るためには,コスト面や流通面,品質面などからの取組みも必要ですが,環境面からの取組みも欠かせません。そのため,道産建築用材および輸入木材・木製品等を対象に,LCA(ライフサイクルアセスメント)の手法を用いて環境負荷を定量的に評価し,道産建築用材の環境へのやさしさを明らかにします。


 II.木質資源の有効利用を図る技術開発

1)木質系バイオマス燃焼灰の有効利用に関する研究 (重点:H18~19)

 京都議定書の発効にともない,地球温暖化防止対策として木質系バイオマスの熱利用が増えつつあります。しかし,排出される燃焼灰は主に埋立て処分されており,有効利用が求められています。そこで,林業分野(苗畑・治山事業等)での活用や農業分野における需要拡大を目指して,燃焼灰の発生状況や有効成分を明らかにするとともに,樹木への施用効果やハンドリング性に優れたペレット化の検討および,重金属の溶出を簡易に抑制するための技術開発を行います。

2)森林バイオマスを用いたアンモニア吸着材の製造技術および再利用に関する研究 (重点:H17~19)

 アンモニアは悪臭の主要成分であり,工場等で排出する場合には悪臭防止法により規制対象となる物質です。堆肥製造工場や畜舎では大量のアンモニアが発生しており,作業環境の改善や近隣住民等への配慮のために悪臭抑制策の確立が急務となっています。そこで,中小径間伐材やチップなど森林バイオマスを原料として,熱化学変換技術を用いた環境にやさしい高性能アンモニア吸着材料を開発します。さらに,実用生産機での製造技術を確立するとともに,畜産施設等での利用方法ならびに利用後の土壌改良材としての適性を検討します。

3)バイオガス利用促進に向けた森林バイオマス利用技術に関する研究 (一般:H19~20)

 近年,家畜排泄物の管理適正化や再生可能なエネルギーへの変換という観点から,バイオガス製造が注目され道内でも積極的に普及展開が進められています。一方,バイオガス製造時に発酵残さとして消化液が大量に発生します。これを液肥として有効に利用することが必要不可欠ですが,貯蔵,農地散布過程でアンモニアを主とする悪臭ガスが大量に揮散することからその対策が求められています。そこで,木質熱処理物によるアンモニアガス揮散抑制効果を検討し,バイオガスの利用促進とともに,森林バイオマスの有効利用を図ります。


 III.木材産業等の体質強化を図る技術開発

1)集成材用ラミナの品質を向上させる乾燥技術の開発 (一般:H18~19)

 道産人工林材の需要拡大を図るために,構造用集成材を含む住宅用部材への利用促進が進められていますが,集成材用ラミナとして使われるためには,乾燥に伴う損傷や変色の抑制が課題となっています。そこで,乾燥後の変形や変色,強度低下を改善するとともに,燃料消費量を抑えた省エネルギー型のラミナ乾燥技術を開発します。



集成材用ラミナの乾燥試験


2)電磁波シールド性能を有する合板の開発 (一般:H18~19)

 電磁波シールド性能を有する物質を混入した接着剤を数種類調製して,それらを単独あるいは組み合わせて合板を製造し,低コストで幅広い周波数帯をカバーする電磁波シールド合板を開発します。

3)建築廃木材を原料とした構造用MDFの検討 (一般:H18~20)

 近年,資源環境問題から国内未利用資源を原料とした国産構造用ボードが注目され,その開発が急務となっており,特に建築廃木材を原料とした構造用MDFの技術開発に対する業界ニーズが高まっています。そこで,建築廃木材を原料としたMDFについて,解繊技術や剛性および寸法安定性を検討し,安価で材質を向上させた構造用MDFを開発します。
 注)MDF:Medium Density Fiberboard(中質繊維板)の略。主に木材などの植物繊維を成形した繊維板で密度0.35g/cm3 以上0.80g/cm3 未満のもの

4)シイタケ菌床栽培における生産効率向上技術の開発 (一般:H17~19)

 シイタケ菌床栽培に用いる培地の組成や栄養源の添加により栽培期間の短縮を図る栽培技術を検討するとともに,収穫後の廃菌床やチップダストを培地材料に利用し,生産コストを低減する栽培方法を検討します。

5)道産マイタケ新品種の高品質化を目指した栽培技術の開発 (一般:H17~19)

 林産試験場が開発した道産マイタケ新品種の法的保護に必要な各種特性の把握と,新品種の特性を活かした針葉樹おが粉を培地に利用する低コスト栽培方法を検討します。さらに,安全に対する信頼性を高めるため,子実体の分析により安全性を検証し,培地材料の選別と栽培条件を検証します。

6)糖脂質を主とするきのこの機能性成分の効率的生産技術と素材加工技術の開発 (重点:H19~20)

 食生活の欧米化にともない,生活習慣病等の予防に対する社会的ニーズが高まっています。
 きのこ類は古くから抗腫瘍性効果があることが知られており,さらに,様々な保健機能性も注目され,健康食品の素材としての期待が高まっています。そこで,タモギタケ,マイタケ等の道産きのこが有する保健機能性の評価と,機能性成分を高める栽培方法を検討します。また,健康食品等に活用できる素材への加工方法を開発し製品化を図ります。


外部資金活用研究


 外部資金活用研究は,農林水産省や独立行政法人などの公募事業で採択されて実施する競争型研究です。比較的大規模な研究予算を活用して他の研究機関や企業と連携しながら製品開発・技術開発を行います。


 I.木質材料の需要拡大を図る技術開発

1)開口部一体型省エネ断熱システムの商品化 (H18~19)

 近年,省エネルギーへの意識が広がりはじめ,既存建築物の外断熱改修が普及し始めています。しかし,これまでの鉄筋コンクリート造の外断熱改修工事では,窓等の開口部の断熱改修が十分には行われていません。そこで,従来の外断熱方式よりも断熱性と日射遮蔽性に優れた,省エネ外断熱システムを開発します。

2)エゾマツ・トドマツ,カラマツ及び外国産材を用いた異樹種積層集成材の製造と強度性能評価 (H17~19)

 木造住宅における構造用集成材の使用量が近年大幅に増加するなかで,地域材の利用が全国的に期待されています。そこで,道産材を用いて高い強度を持つ構造用集成材を安定的に供給するために,外国産材を併用した異樹種積層集成材の効率的な断面構成を検討し,その強度性能を明らかにします。

3)バイオマス利用に向けたCCA処理木材からの薬剤除去技術の検討 (H18~20)

 建設リサイクル法の基本方針では建設発生木材の再資源化がうたわれていますが,CCA処理木材はCCA成分の除去技術が確立されておらず,現状ではリサイクルできない状態にあります。そこで,CCA処理木材のバイオマス利用に向け,各種CCA成分の除去方法を検討します。

4)太陽熱木材乾燥装置の性能向上に関する研究開発 (H18~19)

 太陽熱を利用したパッシブ型の木材乾燥装置について,木材を乾燥する際の桟積み条件等を検討し,良好な品質の乾燥材を生産するための乾燥方法を提案します。



太陽熱木材乾燥装置



民間等共同研究


 民間等共同研究は,林産試験場と民間企業等が共同で製品開発や技術開発を行う制度です。研究の成果は,共同研究を行った企業が優先的に使用することができます。また,研究成果により得られる特許は,北海道と企業の双方に帰属します。


 I.木質材料の需要拡大を図る技術開発

1)北海道における住宅の温室空間計画に関する研究 (H18~19)

2)観賞用植物の室内での管理法および室内環境に及ぼす影響に関する研究 (H18~19)



 III.木材産業等の体質強化を図る技術開発

1)乾燥材の簡易形状検査装置の開発 (H18~19)

2)畜産廃棄物を用いた食用菌の生産性向上に関する研究 (H19~21)


受託試験研究


 受託試験研究は,民間企業から依頼を受けて,林産試験場が自ら保有する技術蓄積をもとに,企業の技術向上や製品開発につながる研究を実施する制度です。共同研究との違いは,民間企業に研究の分担がないこと,研究成果により得られる特許は,北海道に帰属することなどがあります。


 I.木質材料の需要拡大を図る技術開発

1)伝統的木造住宅等の接合部性能評価 (H18-20)

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