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林産試だより2007年8月号 特集「2007 木製サッシフォーラム」 木製複合サッシの紹介

●特集『2007 木製サッシフォーラム』

木製複合サッシの紹介

(株)ワタナベ 旭川支店長 平井 正美



 (株)ワタナベの取り扱いサッシの変遷


 当社はビル用の金属製(スチール・アルミ)サッシの販売に携わり,時代のニーズとともに様々なサッシを製造して参りました。金属製のサッシは近年,高断熱・高気密となり,材質や性能も変わってきています。そんな中,最近では木製サッシの良さが分かり,木製複合サッシを製造・販売するようになりました。今日は当社のサッシ事業の歴史についてお話させて頂きます。

 当社におけるサッシの材質の変化を図1に表します。



図1 当社におけるサッシの材質の変化


昭和30年代から40年代はスチールサッシを主として扱っておりました。写真1はスチールサッシを使用したホテルです。図2は,鉄の型具にガラスをはめ込んだ仕様で,障子の部分にサッシバーを用いているのが特徴です。



左:写真1 昭和40年代のスチールサッシのホテル  ,  右:図2 サッシバーのスチールサッシ


昭和40年代に入りアルミサッシが主流となり,昭和50年代には図3~4に示すように,硬質ウレタンなどで断熱したアルミサッシがヨーロッパから日本に輸入されるようになりました。これは,アルミの枠を断熱材で絶縁し断熱性を高め,結露を防ぎます。また,ガラスとガラスの間にはブラインドが入っています。なお,ヨーロッパ製は,スイング系の回転サッシが主流であるため引き違いがありません。



左:図3 ヨーロッパから入ったアルミ断熱サッシ
右:図4 ヨーロッパから入ったアルミ断熱サッシ




図5 国内メーカーのアルミ断熱サッシ

そこで,国内メーカーは日本向け商品として片引きと引き違いを製造するようになりました。図5はその一例で,ヨーロッパで製造したアルミ部材を持込んで,日本のメーカーが製造したアルミの断熱片引きサッシです。当社もアルミ断熱サッシを製造することを考えましたが,まだ完全な北海道向けの断熱仕様まで発展しておらずあきらめました。また,この当時木製サッシもありましたが,耐候性に問題があり,外部にさらされる部分での使用は難しいと判断しました。

 昭和60年代に入り樹脂サッシが登場します。これもヨーロッパの技術を導入し日本で改良を加えたものが,一般住宅や中程度のビルに採用されていきました。アルミ製よりもコストは高いですが,寒冷地でも充分に対応できることから現在は幅広く普及しています。当社でも樹脂サッシを販売し,昭和60年には北海道立林産試験場の試験棟に,写真2のような連窓のサッシを施工しました。この時,試験棟にある大断面集成材の梁(写真3)や,庁舎棟にある木製のサッシやカーテンウォール(写真4)を見て,木材への認識が変わり,工夫次第では木製サッシもビル用やカーテンウォールとして使用が可能ではないかと考えるようになりました。



左:写真2 林産試験場の連窓,中央:写真3 試験棟の大断面集成材,右:写真4 林産試験場庁舎棟のカーテンウォール


 木材・アルミ複合カーテンウォールの開発


 平成9年には,図6のようにアルミ製断熱カーテンウォールを自社で開発し製造販売しました。そして同じ年に,木材とアルミの複合カーテンウォールを久保木工株式会社と共同で開発し,『層雲峡のホテル』に施工しました(写真5)。



左:図6 当社のアルミ断熱カーテンウォール  ,  右:写真5 層雲峡のホテル


また写真6図7は,平成12年に本格的にアルミと木材の複合カーテンウォールを製造するため,久保木工株式会社およびアルミ型材メーカーと共同開発した商品です。



左:写真6 木アルミ複合カーテンウォール  ,  右:図7 木アルミ複合カーテンウォール



左:写真7 旭川市障害者福祉施設
右:写真8 旭川市障害者福祉施設


アルミの断熱性能は,H-3等級(注)が限界でしたが,木材を使用することでH-5等級まで性能を上げることを目標に開発しました。これは外部にアルミ型材,その間を硬質ウレタンで絶縁し,木材で強度を受ける構造です。雨水は外側のアルミ材が受けるため,内側の木材には触れません。このカーテンウォールは平成13年には,旭川市内の学校や障害者福祉施設(写真7~8)に導入し実績を作りました。




また写真9~10は,平成16年に旭川市青少年科学館に採用されたカーテンウォールで,外部カバーにはゴム製のガスケット(写真10,図8参照),内部のフレームには木材が使用されています。



左:写真9 旭川市青少年科学館,中央:写真10 ガスケット木複合カーテンウォール,右:図8 ガスケット木複合カーテンウォール


このカーテンウォールは,外部のガスケットにシーリング材を使用しないことで,汚染が少なくメンテナンスフリーという特徴があります。図8のように断面を見るとゴムガスケットと木材はアルミでつながっていますが,アルミが外部にさらされないようになっています。熱伝導の低いゴムガスケットなので断熱性にも優れています。

写真11~12は,平成18年に施工した札幌の大学施設です。



左:写真11 札幌の大学施設  ,  写真12 札幌の大学施設


写真13~14は,ガラスを部分的に内部のフレームに留める構造のカーテンウォールで,外部にフレームがありません。



左:写真13 外部フレームがないガラスカーテンウォール,
右:写真14 外部フレームがないガラスカーテンウォール


写真15~16は,室外側のLow-Eガラスと室内側のガラスの間から,上下に熱を抜く構造のダブルスキンのカーテンウォールです。平成12年からは道外への販売も行っています。



左:写真15 大判のLow-E ガラスを用いたダブルスキンのカーテンウォール,
右:写真16 ダブルスキンのカーテンウォール


写真17~18は福井県の医療施設です。外側のアルミフレームの内外を木材で被覆しています。



左:写真17 福井県医療施設,
右:写真18 アルミの上を木で被覆


道外では断熱目的で木材を使用する例は少なく,写真19のようにマリオン(方立)として意匠性のために使用されています。写真20~21は,九州の学校施設で,引き違いの木製サッシを導入しました。



左:写真19 マリオン,中央:写真20 九州の学校施設,右:写真21 引き違い窓

 以上のようなサッシに,これまで使用してきた木材は,やはり人気の高い北海道の広葉樹でした。しかし,木目がはっきりとした針葉樹の要望もあることから,今後はカラマツの需要もあると考えています。


 ユニバーサルデザインに配慮したバルコニーサッシ


 写真22~23は,平成17~18年に北海道立北方総合研究所と北海道立林産試験場とで「ユニバーサルデザインに配慮した寒冷地対応バルコニーサッシの開発」として共同研究をした商品です。ユニバーサルデザインとしてフラットレールを採用した引き違いとしました。目標とする性能値(注)は,気密性能A-4等級,水密性能W-5,断熱性能H-5と寒冷地対応としました。引き違いサッシとしては,かなり厳しい条件でしたが色々なアドバイスのおかげでクリアすることができました。



左:写真22 ユニバーサルデザインに配慮した寒冷地対応バルコニーサッシ,右:写真23 試験風景




図9 バルコニーサッシの断面図

図9は断面図です。外部のデッキから室内の床面までをフラット化しており,排水機構をアルミで受けています。2007年の3月からは販売するまでに至りました。

 最後に,断熱性の高い窓は北海道だけでなく,本州でも需要が伸びてきていて,空気層12㎜の厚い複層ガラスを用いる傾向にあります。ガラス部分が重くなると,その分枠の断面を大きくする必要があります。当社の木アルミ複合サッシは厚いガラスにも対応でき,断熱性も高いので,今後さらに注目されると思います。
 また,木材は樹脂やアルミよりも製造エネルギーが少なく,再生可能な材料です。この優れた木材を今後もビル用サッシや複合サッシ,カーテンウォールなどで採用し,アピールしていきたいと思います。






注) サッシの性能について(JIS A 4706-2000サッシ)

気密性能:サッシの隙間からどれくらい空気が漏れるのか,ということを示す性能。空気の漏れが少ない方が性能が高く,A-1,A-2,A-3,A-4 の順で性能が高くなる。A-4等級では,サッシの内外で10Paの圧力差が生じたときに1時間で1m2あたり2m3以下の空気が漏れる状態。

水密性能:サッシに風雨が吹き付けたときに,どの程度雨水の浸入を防げるか,ということを示す性能。W-1,W-2,W-3,W-4,W-5の順で性能が高くなる。W-5等級では,1時間あたり240mmの降雨時に,サッシの内外で250~750Paの圧力差(脈動圧)が生じても,室内に水があふれ出ない状態。

断熱性能:サッシからどの程度熱が出入りするかという性能。H-1,H-2, H-3, H-4, H-5の順に性能が高くなる。H-5等級(H-3等級)ではサッシの内外で20℃の温度差がある場合に,1時間あたり2.33W/m2k(3.48W/m2k)以下の熱量が流れる状態。

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