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林産試だより2007年8月号 品種登録されたエルムマッシュについて

 

品種登録されたエルムマッシュについて

きのこ部 品種開発科 原田 陽



 エルムマッシュ291が品種登録されました


 タモギタケ道産品種「エルムマッシュ291」(写真)が,平成19年3月22日に種苗法に基づいて品種登録(登録番号 第15387号)されました。18年6月21日に出願公表後,当場における現地調査を経て,登録されました。



写真 登録されたエルムマッシュ291のきのこ
左:ビンからの発生  右:収穫後


 品種登録とは


 毎年きれいな花や高品質野菜等,新品種がたくさん作り出されています。農林水産業において優良品種の確保は,生産の基礎となります。そこで,農林水産省では,種苗法に基づく品種登録制度により育成者の権利を保護し,新品種育成の振興を図っています。

 新品種として認められるためには,以下の区別性,均一性,安定性の要件を満たすことが必要となります。

  1.区別性とは,既存品種の特性と明確に区別できること。
  2.均一性とは,同一世代で特性が十分均一であること。
  3.安定性とは,増殖を繰り返しても特性が安定していること。

 すなわち,特性が既存品種と明らかに異なり,かつ品種として確立されているものが品種登録の対象となります。

 上記の要件を満たすことが,出願時に添付した品種の特性を示すデータや品種の栽培状況の現地調査により確認されると,新品種として認められます。


 開発のきっかけ


 新品種は,(株)スリービーと共同開発したものです。この共同開発を始める前,同社はタモギタケの生産事業のほか,市場の拡大を目指して水煮やエキス製品をはじめとする種々の加工事業を展開していました。

 そのような状況下で同社は,各事業の売り上げを伸ばすために,美味しさや健康へ好影響を与える機能性を兼ね備えたより良い製品作りを行い,タモギタケのさらなる知名度アップを図ることが必要と考えました。そのためには,市場や店頭で高い評価を得るような生きのこの生産や,規模の大きい工場でも作りやすい品種が必要でした。

 そこで,品種改良および栽培技術に関する豊富な蓄積があり,食味の評価技術の研究を進めていた当場と共同研究を行うことになりました。


 登録品種の開発


 食品機能性の高いタモギタケの生産システムを開発することを目標に掲げて,食品としての機能に関する評価をしながら,以下のように新品種の選抜と育成を行いました。

  1.小規模栽培施設における品種の選抜
  2.中規模以上の栽培施設における品種の選抜
  3.大規模栽培試験における生産性および生鮮品の評価
  4.水煮製造における加工適性評価

 収穫したきのこについては特に,外観,石づき部の軟らかさ,食味や健康に関わる食品機能性について評価しました。4では,得られた新品種の有効性について検証しました。結果として,生きのこの生産および加工品の製造に適した優良な品種が得られたので,品種登録出願に向けた準備をしました。


 登録品種の特性


 登録品種は,「エルム・マッシュ北菌2号」に「北海道産野生菌株Pc 87-2」を交配し,得られた菌株の中から選抜後,増殖を行いながら特性調査を継続し,16年にその特性が安定していることを確認したものです。

 施設栽培向きの品種で,以下のような特徴を持っています。

  1.発生温度を高めに設定しても,きのこの変形が起こりにくく,発生環境の許容範囲が広いことから,規模の大きい施設でも生産しやすい。
  2.きのこの形が円く見栄えが良いことから,生きのこの価値が上がった。
  3.石づきが軟らかい。このため,従来品に比べて食感が改良された。
  4.うま味成分が多く,特徴的な風味を実感できる。
  5.水煮製造のボイル工程できのこが崩れにくい。このため,加工時にクズが発生しにくく,加工品の収率がアップした。


 登録品種の活用


 タモギタケは,国内生産量の8割程度が道内で生産されている北海道に特化した作目です。

 共同開発した当品種は,道と許諾契約を締結した企業で実生産に使用され,種々の加工製品()に活用されています。また,生きのこは,札幌および旭川市内を中心とした市場や店頭で高い評価が得られ,出荷量がかなり増え,売り上げを伸ばしています。



図 エルムマッシュ291を活用した各種製品


参考

1)原田陽:きのこの品種登録-ブナシメジ道産品種「マーブレ88-8」を例に-,林産試だより2004年7月号,8-9ページ /list/forest/research/fpridayori/0407/kinoko.htm
2)原田陽:食品機能性の高いタモギタケの開発,林産試だより2006年4月号,9ページ http://www.hro.or.jp/list/forest/research/fpri/dayori/0604/7.htm

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