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林産試だより2007年10月号 ランプシェード用単板の開発

 

ランプシェード用単板の開発

きのこ部 主任研究員 由田 茂一
技術部 合板科 平林 靖



 1.はじめに




写真1 ペンダントライト
(2006年度グッドデザイン賞受賞作品)

 札幌市にある(有)イリスが販売している,ランプシェード(電灯の笠)に単板を使ったペンダントライトが,2006年度グッドデザイン賞を受賞しています(写真1)。この単板製シェードは,H16~17年度にノーステック財団がコーディネートして開発したもので,デザインを札幌市立高等専門学校と(有)イリスが,単板の加工性を空知単板(株)が,製品の安全・安定性を林産試験場が分担しました。

 林産試験場では,製品の安全・安定性の研究として,発火の危険性,変色防止および寸法安定性を検討しました。ここでは,紙面の都合から発火の危険性の検討と変色防止の取組みについて紹介します。


 2.発火の危険性の検討


 室内で使われる照明には様々な種類とデザインがあります。ここでは,主にペンダントタイプやスタンドタイプのシェードに単板を活用する際,安全性を考慮したデザインの条件を明確にすることを目的としました。具体的には,電球とシェードの安全な間隔はどの程度必要か,電球上部をふさぐようなデザインにする場合に留意すべきことは何か,といったことに答えられるデータを得ることです。

2.1 試験内容・方法

 試験には,白熱電灯およびランプシェードに見立てた直径の異なる単板製の円筒とこれに着脱可能なフタを使いました(写真2)。

 試験では,円筒ごとにフタをつけない場合とつけた場合について,円筒内表面の温度を10秒間隔で測定しました。写真3では円筒から線が出ていますが,これは熱電対と呼ばれる温度を測定するセンサで,線の先端が温度測定点となっています。



左:写真2 試験に使用した単板製の円筒など   右:写真3 円筒内表面の温度測定(室温雰囲気)


 円筒の温度測定点は,電球の真横とその上側に3点および下側に2点の合計6点としました(各40mm間隔)。また,このほかにフタ中央の温度および周囲の温度も併せて測定しました。フタの取付け位置は,円筒の上側の温度測定点(3点)とほぼ同じ位置としました(電球との隙間は13,53,93mm)。この試験は,暑い夏の室内での使用も考慮し,約40℃の容器内(写真4)でも行いました。



写真4 試験前の様子(恒温器内に設置)


 なお,円筒およびフタの厚さは約0.40mmで,厚さ0.17mmのヒバ単板を和紙の両面に接着したものを使用しました。円筒の高さは400mm,内径はφ105,125,145,165mmの4種類で,フタの直径はそれぞれの円筒の内径より15mm小さくしました。電球は製品イメージや試験の意味などを勘案し54W(100V)を使用しました。

2.2 試験結果

 図1に,温度測定の一例を示しました。これは内径φ105mmの円筒を室温(約21℃)におき,電灯に通電後,(1)フタのない状態から,(2)フタを電球の上側93mmに取り付け,(3)次いでフタの位置を電球の上側53mmに変え,(4)更にフタの位置を電球の上側13mmに変えていった場合のものです。


図1 各部の温度変化(φ105円筒,室温)


 このため,フタ中央の温度が室温から始まり3段の階段状になっています。凡例の円筒内表面の温度測定点は,電球横を基準に,その上下に1,2,3です。

 ここではフタの温度が最も高くなり,フタと電球の隙間が13mmの時には120℃を超えますが,53mmの時には90℃以下でした。また,円筒の各温度はフタの位置に関わらず,電球横が約45℃で最も高く,次いでその上下がほぼ同じ約37℃となりました。φ105mm円筒では電球との隙間は約22mmとなっており,電球の表面温度は150~170℃でした。これらのことから,円筒内表面は電球からの輻射(ふくしゃ)は受けるものの,円筒とフタの間に適切な隙間があると対流により熱が奪われ,フタがない場合とほとんど変わらない温度になると考えられます。ここでは,内径φ105mmに対し,その断面積の約27%に相当するフタと円筒間の隙間が対流に都合の良い条件であったといえます。

 また,最も厳しい条件と考えられる周囲が40℃の中で電灯に通電したφ105mm円筒(フタの位置は13mm)の場合でも,円筒内表面の最大温度は約85℃でした。この時,フタの温度は90℃を超えましたが,変色等は認められませんでした。

 このような温度データと熱分解の有無の目視確認から,安全な大きさなどの条件を検討しました。この際の安全性が確保できる温度の目途は,一般的に言われている木材の炭化温度(約260℃)ではなく,スチーム配管脇で長期間加熱された場合に発火したという報告事例があることを踏まえて90℃としました。実際には,単板製シェードはごく薄く蓄熱しないため,このような低温では炭化・発火の可能性はほとんどなく,90℃は十分安全な温度と考えました。

 これらのことから,φ105mm円筒のシェードの場合,54W電球とシェードの間隔は最も狭い部分でも22mm以上確保し,フタに相当するものがあるデザインでも,フタを電球から50mm以上離し,フタとシェードの間に2340mm2以上の隙間を確保すると発火の危険性はなく十分安全と判断しました。現実には,単板の加工性から極端に小さく曲げることは難しくボリューム感のあるデザインが予想されることから,ほぼ自由なデザインに対応できると言えます。


 3.変色防止の検討


 木材は,木の種類によって色合いが異なります。そして経年変化による変色の度合いも樹種ごとに異なります。供試材に,マカバ,ヒノキ,カラマツ,ウォールナット,シナ,ヒバ,ホワイトオークのスライス単板を用い,樹種ごとに光変色の度合いおよび,変色防止用塗料として汎用のポリウレタン塗料,UVカット塗料を用いた時の変色防止効果について検討しました。

3.1 試験内容・方法



写真5 板ガラスを通過した太陽放射光に暴露


 光による変色は,太陽光による変色と,キセノンランプの紫外線照射による促進耐候試験で評価を行いました。
 まず,室内での太陽光による変色を想定し,アンダーグラス暴露試験方法(JIS Z 2381)に準じて,試験片を南向き仰角45度に設置し,2か月間の暴露試験を行いました(写真5)。



 色の変化はカラーコンピュータと呼ばれる装置(写真6)で色差(ΔE*ab)として測定し,その値が大きいほど変色の度合いが大きくなります。色差とその感覚的表現を表1に示しました。



左:写真6 カラーコンピュータによる色差の測定   右:表1 色差とその感覚的表現


3.2 試験結果

 各々の樹種ごとに,無塗装,ポリウレタン塗装(以下PU塗装),UVカット塗装(以下UV塗装)試験片の色差(ΔE*ab)の変化を図2に示しました。



図2 太陽光暴露による色差(ΔE*ab)の変化

 マカバ,シナ,カラマツは,塗装処理の違いによる色差(ΔE*ab)の変化の差異が明確ではなかったのに対し,ヒノキ,ヒバ,ホワイトオークでは,PU塗装処理を施された試験体が最も低い値を示しました。反対に,ウォールナットはUV塗装が最も低い値を示し,無塗装とPU塗装は暴露時間とともに大きな変化が見られました。

 この結果から,マカバ,シナ,カラマツは,太陽光暴露において塗装による変色抑制効果が全くなく,ヒノキ,ヒバ,ホワイトオークにはPU塗装に変色抑制効果が観察されました。これに対し,ウォールナットは,UV塗装に大きな抑制効果が観察されました。これらのことから,樹種によって変色の度合いは異なり,変色抑制効果を示す塗料もまた,樹種により異なることが分かりました。

 これらの研究結果が,シェードに単板を使ったペンダントランプの製品化に生かされました。今後の製品についても,安全性が高く品質の優れたものが数多く生まれてくることが期待されます。

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