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林産試だより2007年10月号 「NHKおはようもぎたてラジオ便-北海道森物語-」林産試版

 

「NHKおはようもぎたてラジオ便-北海道森物語-」林産試版

企画指導部 普及課



 NHKラジオ第一では,一週おきの水曜日の朝7時49分~55分ごろ,「NHKおはようもぎたてラジオ便-北海道森物語-」を放送しています。森林や木材に関する様々な話題が取りあげられ,アナウンサーと専門家との掛け合いによりアピール点や問題点が明らかにされていきます。林産試験場でも,平成18年6月から,ほぼ2か月に1回のペースで研究員が出演し,ホットな研究情報の数々を紹介しています。
 朝のあわただしい時間帯の放送なので,これらの情報をじっくりとはお聞きをいただけなかったものと思い,本誌に,アナウンサーとのやり取りをできるだけ忠実に再現してお伝えすることにしました。今月号は,18年6,8月に放送された2回分を紹介します。

(文責:林産試験場 企画指導部 石倉信介)



カラマツ材を使った木製ガードレール

出演:技術部 加工科 研究職員 今井 良
放送日:平成18年6月28日




 木製ガードレールってどんなもの?メリットは?


Q:道立林産試験場では,北海道産のカラマツ材を使って,木製ガードレールというものを開発したということですが,木製ガードレールとはどのようなものか,簡単に紹介してください。

A:ガードレールは,自動車が路外に転落したり対向車線にはみ出したりしないように取り付けられた柵のことです。通常は全体が鋼鉄製ですが,今回開発した木製ガードレールは横材の部分にカラマツ材を使っています。

Q:北海道で木製ガードレールを使うことのメリットについて説明してください。

A:北海道は,森林面積が土地総面積のおよそ7割を占める森林王国で,そこから供給される道産材は,全国の国産材供給量のうちの約2割を占めます。この豊富な資源を有効に使うための一つの手段として,旭川にある北海道産木材利用協同組合との約2年間の共同研究により木製ガードレールを開発しました。

 木材は炭酸ガスと水と太陽のエネルギーでできている自然素材です。切る,削るといった加工が容易なことから,木製ガードレールの製造エネルギーは小さく,再利用や廃棄にかかるエネルギーも小さいので,環境負荷が小さい製品であると言えます。さらに道内各地で簡単に材料を入手できるので,輸送にかかる費用やエネルギーも大幅に節約できるメリットもあります。


 強度はだいじょうぶ?


Q:木は,鉄などと比べてやわらかいイメージがあり,強度的には不安を感じますが。

A:強度計算を行い,木材だけでも十分な強度が得られることを確認しています。ただ,木材だけで作ろうとすると,必要な強度を確保するために太い木材を使ったり木材の本数を増やす必要があります。そうすると木製ガードレールが塀のようになって景色を見えにくくしてしまいます。このため今回開発したガードレールは,木材の裏側を金属で補強して木材のボリュームを調節し,強度の確保と同時に眺望の確保も心がけました。

 また,木材部分には,厚さ2~3cmの板を4~5枚接着剤で張り合わせて作った集成材を使っています。集成材は,強度の信頼性や寸法の安定性などに優れているので,安全第一であるガードレールにも安心して使うことができ,また,原料に太い丸太を必要としないので,間伐材など中小径木の活用にも役立つと考えられます。


 どのようなところで使うとよいのか


Q:木製ガードレールの特徴やメリットがよく分かりました。
  では,これからどのようなところに使われていくことを想定しているのでしょうか。

A:現在期待しているのは,シーニックバイウェイの指定ルートや観光地周辺です。シーニックバイウェイというのは,「美しい景観づくり」や「魅力ある観光空間づくり」などを目的とし,住民と行政とが協力して道路を中心にした地域づくりをする取り組みのことです。

 開発した木製ガードレールは景観とよく調和し,自動車からの眺望をさまたげにくい形状なので,雄大な自然が観光の目玉となっている北海道にとって美しい景観形成にふさわしい製品と言えます。


 現物はどこで見られる?


Q:木で作られたガードレールは,きれいな木目が生かされるのだと思います。
  実際に使っているところがあるのでしょうか。

A:まだです。実は,公道で採用されるためには,実際に乗用車やダンプカーを衝突させる試験を行って安全性などを確認する必要があります。資金面の都合により,この衝突試験はまだ実施しておらず,近いうちの実施を前向きに検討しているところです。

 ただ,林道や橋などには構造計算だけで採用できる場合があるので,今年度から一部の道路で試験的に採用してもらう予定です。その一つとして,この夏,林産試験場の近くにある小さな橋に欄干として取り付ける予定ですので,是非,意見や感想などをお寄せください。今後の改良に向け参考にしたいと思っています。

Q:試験場近くの一般の人達が通るところで見られるようになるのですね。北海道産のカラマツ材をいっぱい使って,北海道らしい風景の形成につながりそうなガードレールですね。(以上)



追記:林産試験場近くの橋への施工は,工期等の都合から取りやめとなりました。現在までのところ実際に施工したのは,平成18年秋の八雲町内の林道(写真)での施工1件です。  なお,林産試験場の木と暮らしの情報館前に見本を展示していますので,ご覧いただければ幸いです。



写真 八雲町内の林道への施工






新しいきのこ

出演:きのこ部 生産技術科 研究主任(現品種開発科長) 宜寿次(ぎすし) 盛生
放送日:平成18年8月30日




 きのこの研究って?


Q:林産試験場では木材だけでなく,きのこについても研究しているということですが,普段,どのような研究をしているのですか?

A:きのこは,木材を分解して成長したり生きている樹木と共生して成長したり,と木材とは関係が深いものです。林産試験場では,普段,スーパーなどで売られている,シイタケ,エノキタケ,ブナシメジ,マイタケ,ナメコといった食べられるきのこの栽培に関する研究を行っています。最近では,ブナシメジやマイタケ,黄色いのが特徴的なタモギタケなどの新しい品種を開発しています。また,生産性が向上するように,つまり,あまり時間と資金をかけないで,たくさんのきのこが収穫できるよう,品種に適した栽培条件等を研究しています。


 店頭のきのこの種類が増えました


Q:新しい品種の開発をしているとのことですが,今日の本題である「新しいきのこ」についてのお話に関わるものかと思います。そういえば最近は,昔に比べていろいろな種類のきのこがありますよね?

A:内閣府の調査では,一世帯あたりの生(ナマ)野菜の購入量は年々減ってきているのですが,その中のきのこの購入量は,逆に増えてきています。実際,国内のきのこで生産量が増えているのは,マイタケ,ブナシメジ,エリンギといった比較的新しく栽培できるようになったきのこです。そのほかに,ハタケシメジやヤマブシタケといった耳慣れないきのこもスーパー等で見かけるようになりました。長いあいだ北海道でしか栽培されていなかったタモギタケも本州で栽培され始めているようです。消費者は新しいきのこを好んで買ってくれるようです。

 そこで,林産試験場では,今までの研究で得られたノウハウを生かして,まだ店頭に並んでいない新しいきのこの人工栽培技術や優良品種の開発も進めています。


 新しいきのこってどんなもの?


Q:なるほど,最近になって栽培されるようになったきのこですね。
  それでは,新しく開発されたきのこは,どのようなものか説明してください。

A:一つ目は,野生型のエノキタケで「えぞ雪の下」,通称,「雪の下」です。スーパー等でよく見られる細くて白いエノキタケと違い,野生の姿かたち,色合いを活かして作ったエノキタケです。適度なぬめりがあっておいしいきのこです。道内でもすでに栽培されていますが,ほとんど加工食品用にまわっており,店頭で見かけたり,生を調理して食べた人は少ないのではないでしょうか。

 二つ目としては,ナラタケ,北海道では「ボリボリ」といったほうがおなじみです。野生のボリボリは,きのこ採りで大変人気のあるきのこです。林産試験場では,このボリボリの人工栽培技術を初めて開発しました。

 三つ目は,ムキタケです。ムキタケも,天然もののきのこ採りでは,大変人気のあるきのこで,傘の部分の皮をむいて食べるので,ムキタケと名前が付いたようです。ちょうど桃の皮をむくようにむけます。林産試験場で品種開発したムキタケは,実は,皮をむかなくてもおいしく食べることができます。



写真左:えぞ雪の下  中央:ナラタケ(ボリボリ)  右:ムキタケ


 新しいきのこ,もうすぐ食卓へ


Q:普段,山にきのこ採りに行く人でなければ,口にすることのできないおいしいきのこが,簡単に食べられるようになるということですね。
  その日は,近いのでしょうか?

A:今日紹介した3種類のきのこは,林産試験場の実験室レベルでは栽培できます。残念ながら,ボリボリとムキタケは,たぶん道内ではまだ誰も栽培には手をつけていません。これから,実際にきのこを作っている人たちと協力しながら,それぞれの栽培施設に合った細かい栽培条件などを検討し,また,生産コストとどのくらいの値段で売れるのかといったバランスなどを見極めながら,具体的な技術移転を始めたいと思います。食卓にならべられるまでにはもう少し時間がかかりそうです。

Q:早く食べられるようになるといいですね。
  これからも新しいきのこづくりを進めていくのですか?

A:きのこは健康食品というイメージがありますから,これからは,よりおいしいきのこの開発とともに身体に良いきのこの開発などを続けていきます。また,ラクヨウキノコやマツタケといった栽培が難しいきのこの人工栽培にも挑戦しようと思います。(以上)

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