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林産試だより2007年12月号 JSTの助成による研究について

 

JSTの助成による研究について



 研究の助成事業を実施している機関の一つに(独)科学技術振興機構(JST)があります。JSTは,国内のイノベーション創出の源泉となる知識の創出から研究成果の社会・国民への還元までを総合的に推進するとともに,基盤となる科学技術情報の提供,科学技術に関する理解増進,戦略的国際活動等の推進を行っています。
 その中,北海道内の大学や試験研究機関等の連携を図り,地域における研究成果の活用・実用化に向けた育成を推進しているのがJSTイノベーションプラザ北海道です。
 ここでは,そのプラザ北海道から頂いた助成事業の申請に向けた助言を紹介します。




JST「シーズ発掘試験」等への応募のすすめ

JSTイノベーションプラザ北海道 コーディネータ 清水 條資

 研究者の皆さんにJST研究資金の利用を気楽に,しかも,戦略をもって確実に確保していただきたいと思い,応募の実情などをお話します。

 まず,基盤的な技術に基づき,地域の,日本の,ひいては世界の技術進展につながってゆくという流れをイメージして応募していただきたいと思います。

 JSTの事業の中で「大学等」という表現がありますが,これは「研究開発に携わる機関すべて」と読み換えてください。すなわち,研究に携わる研究者の方々すべてを対象にしているという意味です。プラザ北海道は,地域で特徴がある科学技術について,その実用化を期待して,開発資金を支援する部分も多く,地域にある研究機関からの応募を真に期待しているところです。遠慮がちな研究機関も多く応募数の確保はままなりませんが・・・。積極的な応募で真に地域経済の発展・科学技術の振興に役立つ研究を推進してほしいところです。何かキラリとひかる研究を特に切望します。科学技術開発は,模倣→イノベーション→模倣→イノベーションの繰り返しの連続だそうですが,是非,模倣からイノベーションにさしかかるところで支援したいものと考えます。その応募タイミングは難しいかもしれませんが,他と違った開発研究をしていると感じているのでしたら是非とも気軽に応募を検討してください。また,機関としての活性度も見ていますので,三銃士の合い言葉ではありませんが“一人はみんなのために,みんなは一人のために”シーズ発掘試験に協力体制をとって応募してください。







研究費助成事業に向けて

企画指導部 企画課

 林産試験場は,木材にかかる生産・加工技術の向上,森林バイオマスの利活用,木質系新製品・新部材の開発等に取り組んでいます。この,研究開発のゴールまでの道のりは平坦なものではなく,見直しや再構築を余儀なくされたり,研究費の更なる負担が必要なことも多いのが実際です。

 平成19年4月号林産試だよりの特集『産学官連携による開発研究の進め方』でご紹介しましたように,技術開発,製品開発等を進める上で「開発研究の10段階」があります。その「最初の段階」,すなわち研究アイデアの具現化に向けた予備調査・試験,ひらめきを裏付けるデータの収集・解析を果たして目標・目的が明確になった開発研究については,より良い研究環境をつくるべく「研究費助成事業」等の支援獲得を目指すことが必要です。

 研究費助成事業とは,産業の持続的発展,生活の安定向上,経済の健全な発展等を目的とする研究開発の助成事業で,政府全体の競争的研究資金は約4,700億円にも上ります。その対象は多種多様ですが,独創性・新規性が高く,イノベーションや国際競争力に寄与し,社会ニーズに応える課題が採択,支援されます。この支援が,研究開発の推進に加えて,研究機関や企業の研究者・技術者の意欲向上,自信につながることは言うまでもありません。

 シーズ発掘試験


 研究費助成事業の一つに,(独)科学技術振興機構(JST)の「シーズ発掘試験」があります。これは,コーディネータが見つけた研究シーズの実用化を支援するものです。なおコーディネータとは,研究シーズと企業ニーズを探索,マッチングし,各種制度や企業への橋渡し,育成を担う専門家のことで,JSTや公的な研究機関の職員が登録されています。また研究シーズとは,実用化が期待される研究で,特許等の知的財産権の取得が有望または既に取得し,発展が大いに期待される課題のことです。

 平成19年度は,この「シーズ発掘試験」に対して全国で約6000課題の応募があり,1250課題が採択されました。林産試験場は,平成18年度,19年度ともに4課題が採択されています。

 研究のひらめき


 「シーズ発掘試験」は予備調査・試験,裏付けデータの収集・解析を済ませた上で,展開のポイント,ターゲットを明確にすることが必要です。平成18年度に採択された研究課題の概要とその成果は次章でお話ししますので,ここでは,応募段階でのひらめきとはどのようなものかをご紹介します。

○ 「浮造り(うづくり)合板の開発」

 木材は,長い年月を積み重ねたことを示す表情とも言える「年輪」を持ちます。これが,プラスチックや金属など他素材と異なる大きな特徴です。

 浮造りとは,柔らかくて削りやすい早材部と,硬くて色の濃い晩材部をブラシなどで研削することで年輪を浮き出させる手法ですが,ここでの「ひらめき」は合板の接着層に着色を施し,制御して研削することで,意外な表情に変化させることです。なごみを感じさせるモノトーン調,軽快なパステル調,存在感を示す原色調など,色使いにより全く新たな部材となり,用途展開も大いに期待される研究です。

○「製材におけるエア式のこ屑固着防止装置の開発」

 木材が住宅部材として安心,信頼されて活用されるには,鋼材やプラスチック材料と同様に,製品の寸法が正確であることが不可欠ですが,例えば製材については凍結時のひき曲がりの課題がありました。しかし,製材加工する際に,エアを吹き付けてのこ屑を除去しながら切削する,この単純な工夫の「ひらめき」で,それまでのこ屑が邪魔となって発生していたひき曲がりは解消され,表面仕上げは向上し,品質の安定化が図られました。さらにコンピューター制御によるシステムも同時に開発されれば,高精度な製材加工が可能となります。しかし,切削幅が刻々と変化するのに追随して正確にエアを吹き付ける必要があり,丸太を実際に切削しながら試行錯誤するといった,デリケートさと大胆さが求められる研究です。

 「研究費助成事業」のステップアップ


 「わん曲集成木材の生産性向上を目的とした製造装置の開発」。これは,初めて林産試験場が「JSTシーズ育成試験(現:発掘試験)平成17年度」に採択された課題です。

 住宅や家具を組み立てるとき,通常は通直な部材が使用されます。しかし,デザインによっては,わん曲部材を用いると,フレームの強度性能と作業性は高まりますし,部材の丸みは優しさや暖かみを感じさせることもできます。ただ従来のわん曲集成材の製造方法では,生産効率が低く,コストがかさむため,利用されるケースも少ないものでした。そこで,曲がりを持った型枠フレーム上に接着剤を塗布したひき板を積層し,その上に同じ曲がりを持ったフレームを被せ,フレームに取り付けたゴムホースの空気圧で均等に圧力をかけることを「ひらめき」として,簡単にわん曲集成材を製造する技術を開発しました。

 シーズ育成試験で基礎づくりを果たしたわん曲集成材は,JSTのステップアップ事業「平成18年度産学共同シーズイノベーション化事業顕在化ステージ」に提案し,採択されました。この事業は,基礎レベルから次の段階である実用化への柱づくりを行うべく,いよいよ企業が主導的に携わる開発研究を対象にしています。ここでは,民間企業2社とともにわん曲集成材の実大製造装置の開発と性能評価,わん曲を活かす商品戦略を検討し,特許「湾曲集成材の製造方法およびその製造装置(特願2006-299607)」を出願することができました。

 「研究費助成事業」の活用


 ここで紹介した以外も含めて「研究費助成事業」は,林産試験場や共同研究企業の研究開発の推進に大いに寄与することとなっています。前述のわん曲集成材については,さらに実用化に向けた民間企業との共同研究に発展しており,近い将来,商品化も果たせそうです。

 今年度の「シーズ発掘試験」には,以下の課題が採択されており,これらを発展させた実用化のための研究助成事業に,一緒に応募してくださる企業を募集しています。これらの成果は林産試験場のホームページ,林産試だより等でご紹介していきます。ステップアップ事業等への共同提案に向けてご協力,ご支援をお願いします。

○芳香性を有する木質材料の開発
○立木での非破壊評価法の道産針葉樹への適用と応用
○ホットプレスを用いた熱圧硬化処理木材の開発
○担子菌を用いた機能性アミノ酸「GABA」の富化技術の開発







浮造り合板の開発

技術部 合板科 松本 久美子



 はじめに




写真 カラマツを用いて製造された色彩浮造り合板

 林産試験場では,北海道内の人工林から出材されるトドマツ,カラマツの有効利用や高付加価値化に関する様々な研究を行っています。合板科ではこれまで構造用として使われることの多かった,これら針葉樹を用いた合板の用途拡大を目的に,内装用合板の開発とその実用化に関する研究を進めています。

 そのひとつとして,針葉樹合板の更なる高付加価値化を目指して,合板の表面に浮造り(うづくり)による凹凸と色彩を加えた浮造り合板(以下,色彩浮造り合板と呼びます。)を開発中です(写真)。
※針葉樹は春に形成される早材部が夏ころに形成される晩材部よりも柔らかいため,材の表面をブラシなどで研削すると早材部の方が深く削れ,晩材部が浮き出てきます。このことを利用して年輪を引き立ててみせる加工法(加工品)を浮造りと呼びます。

 色彩浮造り合板の作り方


 色彩浮造り合板を作るには,まず合板の内部に顔料や染料などを用いて色彩の基となる着色部を設けます。そのような合板を製造した後に,表面に浮造りを施して凹凸をつけ,削られた早材部分の着色部を見えるようにすると完成です。合板の表面には,ロータリー単板,スライス単板どちらも使うことができますが,使用する単板によって加工の難易や,仕上がりの意匠が大きく異なります。

 今後の展開


・意匠性の評価方法の検討

 合板やパーティクルボードなどの木質材料にはJISやJASで規定される様々な性能の評価基準が存在します。しかしながら,意匠性についてはメーカーやユーザーの主観によって評価されており,数値などによる客観的な評価がないのが実情です。色彩浮造り合板は意匠性が最大の特徴ですので,その客観的評価法についても検討を行っています。ここでは,合板表面の着色部分の面積と,浮造りによって生じた表面の削り込みの深さを測定し,これら合板の表面性状が意匠性とどのように関連しているのか,また,意匠性を評価する指標となりうるのか,検討を進めていく予定です。

・材料から製品へ

 これまでに,様々な意匠の色彩浮造り合板を製造してきました。今後は,材料の開発だけでなく,この色彩浮造り合板のもつ意匠性を最大限に生かした製品のデザイン開発()・試作に取り組み,製品化を目指して企業との連携を深めていきたいと考えています。



図 色彩浮造り合板を用いてデザインされたパーティション







ジテルペノイドを用いたグイマツ雑種F1苗木判別法の開発

利用部 成分利用科 佐藤 真由美



 はじめに




写真1 F1とグイマツの苗木

 グイマツとカラマツの種間雑種であるグイマツ雑種F1(以下F1)は,野ネズミや野ウサギの食害・病虫害・気象害に対する抵抗性,成長速度,材質に優れた,北海道の有望な造林樹種です。採種園においてグイマツから採取される種子には,F1とグイマツの種子が混在しており,育苗段階でF1の苗木を判別する必要があります。現在は,苗の形態的特徴(苗長,枝数)や季節的変化(黄葉期,芽止まり期,冬芽形成期)の違いから判別していますが,確実な方法とはいえないことから,高精度なF1苗木の判別法が望まれています。

 そこで,この研究では樹皮に多く含まれる樹脂成分をジテルペノイドの解析を通して,高精度にF1とグイマツの苗木を判別することができる方法の開発を目標としました。

 F1とグイマツのジテルペノイドの違い


 まず,F1とグイマツのジテルペノイド組成の違いについて調べました。あらかじめDNA解析によりF1かグイマツかを判別した,5交配家系の苗木(グイマツ:127本, F1:82本)の枝の樹皮からジテルペノイドを抽出し,その組成と含有量を調べました。その結果,樹皮にはおもに7種のジテルペノイドが含まれていました。F1はグイマツに比べてabietic acid(図1)やdehydroabietic acidなどが多いことが特徴でした。また,グイマツはF1よりもジテルペノイド含有量が多く,とくにlarixol(図1)が多いことが特徴でした。



図1  abietic acid(左)とlarixol(右)


 F1とグイマツの苗木の判別


 そこで,これらの各ジテルペノイドの含有量をもとにF1とグイマツの苗木の判別を試みました。これらの判別には,統計解析手法のひとつである「判別分析」を使用しました。判別分析とは,たとえば2つのグループが与えられた場合,新たなデータはどちらのグループに属するか判別する方法です。データが各グループの特徴を表していれば,図2のように色分けされた2つのグループに分けることができます。判別分析の結果,前述の苗木209本のうち,誤判別された苗木は16本(7.7%)でした。この結果から,ジテルペノイドによる判別方法は,かなり高い判別能力があると考えられました。



図2 判別分析の一例


 今後の展開


 今回の結果から,ジテルペノイドの含有量によって,苗木の雑種判別が可能であることがわかりました。将来的には,苗畑などで測定可能なポータブル式装置による雑種判別技術の確立を目指します。







木質耐火被覆材を用いた耐火集成材の開発

性能部 防火性能科 河原ア 政行



 平成10年の建築基準法の改正により,木質構造部材も法規に規定される耐火性能を満たせば,鉄筋コンクリートと同等の耐火構造部材として認められることになりました。このことにより,従来不可能であった大規模な建築物(延べ床面積3000m2を超える建築物等)や,都市中心部の建築物を木造で建てることが可能になりました。

 木造住宅メーカーでは,このことを受けて木質構造部材に耐火性能を付与する技術を開発し,都市中心部に建てることのできる木造住宅を実現しました。それらの住宅の構造部材は,図1に示すように内装の下地材に使用する石こうボードを重ね張りしています。この石こうボードの重ね張りは,火災の発生から終了後まで内部に熱が伝わるのを防ぐため,柱が燃焼せず,建築物の倒壊を防ぎます(図2)。この石こうボードのように,被覆することで構造部材等に耐火性能を付与させる材料を耐火被覆材といいます。



左:図1 住宅部材の耐火性能付与技術
右:図2 重ね張りした石こうボードの遮熱効果


 大断面集成材は,これまで学校や公共施設等の多くの人が集まる建築物に使用されてきました。これは,地場の木材を有効利用することへのアピールの他に,集成材の意匠が建物に暖かみや重厚感等,他の材料では得られない雰囲気を与えるためです。つまり,大断面集成材では意匠が重要視されるので,耐火性能を付与するために,周囲を石こうボードで覆う前述の方法は適していません。



図3 木質耐火被覆材を用いた大断面耐火集成材

 そこで,本研究では木質耐火被覆材を用いた耐火集成材の開発を試みました(図3)。この木質耐火被覆材は木質材料で構成されるため,取り付けた後も木材の意匠を維持することができます。なお,耐火被覆材を取り付けた構造部材では,耐火性能における要求は耐火被覆材,構造性能における要求は構造部材というように,部分ごとに受け持つ性能が明確に分かれます。このことから,耐火被覆材に使用する材料は,これまで集成材の製造において除外されていた木材等,強度の低い木材を使用することができます。

 研究では,木質耐火被覆材の構成と厚さの検討,および集成材への取り付け方法の検討を行いました。その結果,集成材に耐火性能を付与できる被覆材の仕様を明らかにするとともに,集成材への簡易な取り付け方法を開発することができました。

 今後は,本研究で得られた技術を特許出願した後,関係する企業などと共に実用化を目指した研究開発を進めていきたいと思っています。また,この技術は集成材に限らず,壁や床等の部材への耐火性能付与にも応用できます。当該技術を用いた製品開発に興味のある方はご一報下さい。







製材におけるエア式のこ屑固着防止装置の開発

技術部 製材乾燥科 大崎 久司



 1.のこ屑(くず)の生成,挽(ひ)き曲がり


 帯のこ盤は,原木および角材・板材の縦挽きに広く用いられています。帯のこ盤では,切削時に発生するのこ屑はいったん帯のこの歯室に滞留し,その後,歯室から被削材と帯のこのこ身との間にあふれ出します。のこ屑の排出が円滑に行われない場合,まっすぐ鋸断(きょだん)できない状態,すなわち挽き曲がりを引き起こす可能性があります。この挽き曲がりを防止するために,古くから歯先にはアサリが設けられています(図1,2)。

左:図1 歯型要素
右:図2 アサリ

 2.凍結材の製材による挽き曲がり


 北海道では冬期間,原木が凍結する場合があり,往々にして歯室からあふれ出したのこ屑が瞬時に再凍結して挽き材面に固着します(写真1)。このため,のこ身がのこ屑によって押しつけられることで正規の位置からずれてしまい,それに伴って歯先位置もずれ,挽き曲がり現象(写真2)が発生します。また,凍結して固着したのこ屑は,それ自体が製品の汚れとなるとともに,カビの原因となることもあります。しかし,製品一本一本の表面から凍結して固着したのこ屑をかき取ったりすると,作業能率が低下し,製品コストの増大を招きます。

左:写真1 のこ屑の固着
右:写真2 挽き曲がり

 このような背景から,凍結材の製材にあたっては,帯のこのアサリ幅を小さくし主軸回転数を落とし送材速度を遅くしたり,のこ屑の排出を容易にするためにのこ身に長穴をあけたり,歯室の底に副歯を設ける方法などが実用化されてきました。しかしながら,夏期間に比べると作業能率は低下しており,さらなる改善が求められています。


 3.研究の目的


 本研究では,テーブル式帯のこ盤で凍結した木材を鋸断する際に,空気の噴射でのこ屑を吹き飛ばすことによって,のこ屑が挽き材面に付着することを防止する装置(のこ屑の除去装置)を設計試作し,その効果について検証しました。

 装置および結果の詳細は,知的財産権の関係上割愛させていただきますが,この装置が実用化されると,のこ屑の付着が抑制されるので,のこ身に対する抵抗が小さくなり,挽き曲がりの発生を少なくすることが期待されます。そうすると,送材速度を速くすることができ,通年,安定した作業能率の確保が可能となります。

 今後は「のこ屑の除去装置」の実用化に向けて,さらに研究を進める予定です。

文献
1)枝松信之,森稔:実用木材加工全書1 製材と木工(1963)

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