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Q&A 先月の技術相談から

敷料と堆肥化における針葉樹オガ粉の性能


Q:針葉樹のオガ粉を敷料に使い,使用後は堆(たい)肥にしています。敷料や堆肥には広葉樹が良いとの話も聞きますが,違いについて教えてください。


A:針葉樹と広葉樹の違いはいくつかありますが,以下で紹介する特徴を理解して,正しく利用することが良いでしょう。

保水性; 敷料に求められる性能として,糞(ふん)尿を流出させないということ,すなわち,保水性が高いということが重要になっています。この保水性を考える場合,粒が細かいほど保水性が高い1)のですが,加えて敷料としてどれだけ空隙(げき)があるかが関係しています。

 木材の真密度(真比重,空隙を含まない木材実質部の密度)は,一般的に針葉樹,広葉樹を問わず1.5とされています。また,

 空隙率=1-ρ0/真密度=1-ρ0/1.5

とされています2)。さらに,

 最大含水率=(真密度-ρ0)/(真密度×ρ0)+FSP×100(%)

   ρ0:全乾密度,FSP:繊維飽和点0.28

 これらから,密度の低いものほど空隙が大きいことになり,含みうる最大の含水率は密度の低いものが大きいことになります。

 オガ粉の保水の模式図をに示します。木材は多孔質材料で,細胞壁に囲まれた中に細胞内孔である空隙があります。一般的には広葉樹よりも針葉樹のほうが空隙率が高く,針葉樹の方が多くの水を吸うことができます(水分調製能が高い)。この違いは後述する堆肥化にも関係してきます。


堆肥化; 堆肥化は,施肥した際に(ア)窒素飢餓を起こさないようにC/N比(炭素/窒素)をさげる,(イ)生育阻害成分を分解する,(ウ)高い温度で発酵させることで病原菌や雑草の種を死滅させる,などが主な目的です。

そして,高い温度をもたらすのは好気性の菌であり,含まれる有機物を,酸素を用いて分解する際の呼吸熱が堆肥の温度上昇をもたらします。したがって,適正に堆肥化させるには好気条件,すなわち,空気(酸素)が必要です。切り返しは,均質に発酵させるとともに,内部に酸素を供給する意味があります。

 一方で,酸素の少ない場合を嫌気条件と呼びますが,酸素は水に溶けにくいため,水分が多い条件では嫌気性発酵が起こります。メタン発酵も嫌気性ですが,熱をほとんど発生せず,バイオガスプラントでは逆に加温する場合もあります。このように,嫌気条件では(ウ)の高い温度で発酵させることで病原菌や雑草の種を死滅させる効果が得られないことになります。

 ここで,針葉樹と広葉樹の違いですが,同じ量の水をオガ粉に注いだ場合,図でも分かるように空隙の大きい針葉樹には,多くの空気が残ることになり,好気条件が得やすいといえます。すなわち,同じ量の水分を調整する場合,好気条件を確保するには,針葉樹は広葉樹よりも,より少ないオガ粉ですむことになります。

 なお,オガ粉の製造条件によっては,元の密度が高い広葉樹でも,針葉樹のオガ粉の嵩(かさ)密度よりも低くなることがあり,広葉樹オガ粉の方が少なくてすむ場合もあります。空隙を確保する目安としては,堆肥の嵩密度を0.5程度3)にすることです。

 一方で,針葉樹に含まれる成分が作物に悪影響を与えないかとの問い合わせもあります。しかし,適正な堆肥化により,(イ)の生育阻害成分を分解する効果がもたらされます。一般的に木質は他の資材よりも堆肥化しにくいため,数回の切り返しなどによる適切な管理を含め6か月程度堆積する必要がある3)といわれています。林産試験場で行った針葉樹オガ粉の堆肥化試験において,コマツナ発芽試験を行ったところ,適正な堆肥化条件で,6か月経過したカラマツやトドマツのオガ粉堆肥では,生育阻害は見られませんでした4)

価格; 敷料に用いられるオガ粉は見かけの体積で取引されますが,広葉樹のオガ粉は針葉樹のものの1.2倍以上の値段となります。これは広葉樹オガ粉はキノコ栽培によく用いられることと,原料に用いられるパルプ材価格の差によるものです。パルプチップは重量で取引されます。広葉樹は針葉樹に比べ密度が大きいことから,同じ材積でも,広葉樹の方が重いことが価格の高くなる要因と考えられます。

におい; 糞尿はその状態によって異なりますが,少なからず悪臭を発生していると思います。悪臭がひどくなるのは嫌気発酵が原因であり,水分が多すぎることによるものです。この点を解消するには,敷料をふんだんに使うことです。

 好き嫌いはあるでしょうが,針葉樹は精油成分が多く,この臭いが糞尿の臭いを隠す働き(マスキング効果)があります。一方,広葉樹には精油成分が少ないとともに,一部には有機酸による不快な臭いを感じるものもあります。

 以上の点から,針葉樹の敷料の方が広葉樹より,コストパフォーマンスが高いといえます。

 しかし,堆肥として使う場合,作物に影響しないことが求められます。この点では針葉樹と広葉樹の差よりも,正しい条件で堆肥化することの方が重要となります。切り返しなどを行う一次発酵で60℃以上を確保し,一次発酵を含め最低6か月堆積することが必要です。木質自体は完全に分解するには至りませんが,C/N比が下がるとともに,生育阻害成分は分解され堆肥として使用できるようになります。重要なことは,オガ粉の種類よりも正しい堆肥化を行うことです。

1)山崎亨史:林産試だより,11月号(2004)
2)例えば,浅野猪久夫編:木材の事典,朝倉書店(1982)
3)藤原俊六郎:堆肥のつくり方・使い方-原理から実際まで,農山漁村文化協会 (2003)
4) 北海道立林産試験場:林産試験場報,17巻4号,p. 9 (2002)

(再生利用科 山崎亨史)

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