●特集『平成20年 研究成果発表会』
大断面集成材は,これまで体育館,学校,多目的ドーム等の規模の大きな木造建築物に使用されてきました。しかし,集成材は鉄筋コンクリート等に比べて建築基準法での火災安全性が低く位置づけられているため,使用できる建築物の用途や規模が制限されていました。
本研究では,集成材をより広い用途に使用できるようにするため,鉄筋コンクリートと同等の耐火性能を付与する技術開発に取り組みました。
1. 木質耐火被覆材の検討
集成材への耐火性能付与は,耐火被覆材を集成材の周囲に取り付ける方法を用いました。この方法は従来から鉄骨等で使用されていますが,鉄骨等の耐火被覆材は無機材料であるため,集成材に使用すると木材の意匠が失われてしまいます。
そこで,集成材に適した耐火被覆材として,薬剤処理した木材を構成の一部に用いた木質材料を考えました。
試験では,被覆材内の薬剤処理木材の適切な配置および被覆材の厚さを検討し,集成材に耐火性能を付与できる見通しを得ました。
2. 集成材への取り付け方法の検討
木質耐火被覆材の集成材への取り付けは,特別な装置を必要とせず,作業が簡易であることから,木ネジまたは釘による固定としました。
試験では,木ネジの間隔および火災による熱が木ネジを介して内部の集成材に伝わらない処置を検討し,耐火性能付与に有効な条件を得ました。
この研究により,木質耐火被覆材を用いた集成材への耐火性能付与についての基本的技術が得られました。そして,現在,この技術についての特許を出願しております。
今後は,道内企業と共同で実用化に向けた研究を行いたいと思っていますので,興味を持たれた方はお気軽にご連絡下さい。
また,この技術は集成材に限らず,壁や床等の構造部材への耐火性能付与にも応用できます。