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平成20年度 林産試験場の試験研究の紹介



 林産試験場は,平成20年度に35課題(うち新規15課題,20年5月時点)の試験研究に取り組みます。これらの内訳は,道の研究予算である重点領域特別研究5課題および一般試験研究12課題,国や法人等の外部予算である外部資金活用研究10課題,民間企業等との共同研究4課題,受託研究4課題となっています。


重点領域特別研究と一般試験研究


 I.木質材料の需要拡大を図る技術開発

1)北海道の木造住宅の耐震改修促進を目的とした耐震診断・補強効果評価法に関する研究(重点:H18~20)

 北海道では,これまでに地震による木造住宅の損傷や倒壊等の被害が数多く発生しており,被害を軽減するために既存建築物の耐震性能を適切に診断し,効果的な耐震改修を進める必要があります。そこで,道内の既存木造住宅に適した合理的な耐震診断方法と,住宅全体に及ぼす補強効果の評価方法を検討し提案します。


耐震診断


2)道産カラマツ材に適した準耐火集成材の開発(一般:H19~20)

 公共施設等の大規模建築物を木造とする場合は,通常燃えしろ設計を適用した大断面集成材を使用していますが,断面寸法が大きくなるため製造面およびコスト面で課題があります。そこで,耐火被覆技術を活用し,道内で生産量の多い中小径カラマツ材が使用できる準耐火集成材を開発します。

3)維持管理による木質構造物の耐朽性向上のための検討(一般:H18~20)

 景観に配慮した街づくりの観点から,道路施設や公園事業への木材の積極的な利用が期待されています。屋外で使用する木質構造物では,構造物の安全性を長期間維持するために設置時の防腐・防蟻処理等に加えて,設置後の適切な維持管理のための処理(二次的処置)が不可欠です。しかし,現状では,その実施時期や効果を予測することが困難です。そこで,構造物の安全性を維持するために必要な二次的処置の方法とその効果について検討します。


ファンガスセラーによる促進劣化試験(維持管理)

4)木材保存剤の迅速性能評価技術の開発(一般:H20~21)

 木材製品を腐朽から守る木材保存剤は,その防腐効果の高さのみならず,安全性や環境への配慮,リサイクル性などが求められています。現在,新規に木材保存剤を開発する場合には,日本工業規格(JIS)や日本木材保存協会規格(JWPA)などに定められた試験による評価が必要ですが,試験に多くの費用や期間がかかるため,製品開発を行う企業にとってはリスクの高い事業となっています。そこで,安価かつ短期間で木材保存剤の性能を評価し,候補物質を絞り込むための技術を開発します。

5)可視光応答型光触媒を用いた室内空気浄化建材の開発(一般:H20~21)

 住宅等の室内には多くの化学物質が放散されており,これまでも有害物質を吸着する製品が数多く市販されてきました。しかし,これらの製品は吸着した化学物質を分解・無害化するものではなくいずれ交換が必要となっていました。近年,新技術として注目されている光触媒は,これら化学物質を分解する機能があり,室内光でも作用可能な可視光応答型についても性能が飛躍的に向上してきています。そこで,これら光触媒材料と吸着材料を組み合わせることによって,これまでにない空気浄化機能を持つ建材を開発します。


光触媒材料の性能試験

6) シックスクール対策用木質内装材料の開発(一般:H20~21)

 平成15年度に施行された改正建築基準法以前の学校施設について室内空気中の化学物質濃度を測定したところ,半数以上の学校でホルムアルデヒド濃度が指針値を超えており,その中には教室の使用禁止等の対応をとっている学校もあります。学校における化学物質については躯体や下地から発生するケースが多いため,化学物質を遮断し室内へ流入させないような性能を持つ内装材料を開発します。

7)アセチル化による人と環境に安全な性能強化木材の製造技術に関する研究(一般:H19~20)

 自然環境との調和や安全・安心な製品を求める消費者ニーズが高まる中,木材にも人体への安全性が高く,リサイクル・リユースしやすい耐久処理が要望されています。そこで,人や環境に安全・安心な性能強化処理であるアセチル化の実用化・製品化に向け,製造技術の開発や性能評価を行います。

8)腐朽を原因とした緑化樹折損危険木診断技術の開発(重点:H18~20)

 都市に植栽された緑化樹は,高樹齢化,劣悪な立地環境,除雪時等の傷害などで腐朽が発生しやすい条件にあります。適切な措置が実施されていない場合,台風などの災害時には樹木の倒壊,枝落下などによる人身事故や交通障害が発生し,社会的に大きな影響を与えます。そこで,市街地に植栽されている緑化樹を対象に,樹木の外観から危険度を判定する技術を開発します。

9)カラマツ人工林材の性能予測技術の開発(一般:H19~21)

 道内のカラマツ人工林は成熟期を迎えつつあり,付加価値の高い建築用材としての利用促進が求められ,特に集成材としての需要が高まっています。カラマツの集成材への効率的利用を促進する技術の一つとして,集成材用ラミナや製材の強度性能や材質を立木や原木の段階で予測する技術を開発します。

10)道産建築用材の環境優位性の評価(一般:H19~20)

 道産木材の利用促進を図るためには,コスト面や流通面,品質面などからの取組みも必要ですが,環境面からの取組みも欠かせません。そのため,道産建築用材および輸入木材・木製品等を対象に,LCA(ライフサイクルアセスメント)の手法を用いて環境負荷を定量的に評価し,道産建築用材の環境優位性を明らかにします。


 II.木質資源の有効利用を図る技術開発

1)廃棄物系バイオマスを利用した固形化燃料に関する研究(一般:H20~22)

 家庭用燃料として開発された木質ペレットは,産業用燃料としては価格が高いため需要が伸び悩んでいます。そこで,ペレットの原材料として,資源量が豊富で安価な建築廃棄物や農産残さ等の廃棄物系バイオマスを活用した固形化燃料を開発し,その安全性や品質の調査および製造技術を検討します。

2)バイオガス利用促進に向けた森林バイオマス利用技術に関する研究(一般:H19~20)

 近年,家畜排泄物の管理適正化や再生可能なエネルギーへの変換という観点から,バイオガス製造が注目されており,道内でも積極的に普及展開が進められています。一方,バイオガス製造時に発酵残さとして消化液が大量に発生します。これを液肥として有効に利用することが必要不可欠ですが,貯蔵,農地散布過程でアンモニアを主とする悪臭ガスが大量に揮散することからその対策が求められています。そこで,木質熱処理物によるアンモニアガス揮散抑制効果を検討し,バイオガスの利用促進とともに,森林バイオマスの有効利用を図ります。

3)改質木材を利用した育苗培土の開発(重点:H20~22)

 農作や園芸作で利用される育苗培土には,保水性や通気性,軽量性に優れるピートモスや広葉樹バークなどが用いられていますが,近年,資源の枯渇や環境保全による採取規制などにより供給や品質の不安が懸念されています。そこで,資源量が豊富で未活用な木質系廃棄物を原料として,植物の生育に親和性を示すよう改質する技術を検討し,苗生産に適した育苗培土を開発します。


 III.木材産業等の体質強化を図る技術開発

1)針葉樹合板の節脱落防止自動処理装置の開発(重点:H20~21)

 針葉樹から合板を製造する過程で節が抜け落ちるのを防止するための処理方法を確立して,工場内で実用可能な自動処理装置を開発します。

2)建築廃木材を原料とした構造用MDFの検討(一般:H18~20)

 近年,資源・環境問題から国内未利用資源を原料とした国産構造用ボードが注目され,その開発が急務となっており,特に建築廃木材を原料とした構造用MDFの技術開発に対する業界ニーズが高まっています。そこで,建築廃木材を原料としたMDFについて,解繊技術や剛性および寸法安定性を検討し,安価で材質を向上させた構造用MDFを開発します。
 注)MDF:Medium Density Fiberboard(中質繊維板)の略。主に木材などの植物繊維を成形した繊維板で密度0.35g/cm3 以上0.80g/cm3 未満のもの

3)DNAマイクロアレイ法を用いたきのこの食品機能性評価(一般:H20~21)

 きのこは食物繊維やミネラルなどを豊富に含む低カロリー食品で,健康機能に関しても脂質代謝改善効果や血圧降下抑制効果などがあるといわれています。しかし,それらの機能性については検証が十分ではなく,科学的確証の蓄積や消費者への適切な情報提供が必要です。そこで,食品機能性の探索に有効とされるDNAマイクロアレイ法を用いてきのこの機能性を解明し,きのこの消費拡大につなげるための科学的な根拠の取得を目指します。

4) 糖脂質を主とするきのこの機能性成分の効率的生産技術と素材加工技術の開発(重点:H19~20)

 食生活の欧米化にともない,生活習慣病等の予防に対する社会的ニーズが高まっています。
 きのこ類は古くから抗腫瘍効果があることが知られており,さらに,様々な保健機能性も注目され,健康食品の素材としての期待が高まっています。そこで,タモギタケ,マイタケ等の道産きのこが有する保健機能性の評価と,機能性成分を高める栽培方法を検討します。また,健康食品等に活用できる素材への加工方法を開発し製品化を図ります。


外部資金活用研究


 外部資金活用研究は,農林水産省や独立行政法人などの公募型研究開発事業に応募して採択された場合に実施される競争型研究です。比較的大規模な研究予算を活用して他の研究機関や企業と連携しながら製品開発・技術開発を行います。

 I.木質材料の需要拡大を図る技術開発

1)地域材を活用した保存処理合板の開発(H19~21)

 保存処理合板のJAS規格化に向けて必要となる,安全性を担保するための資料整備を行うとともに,国産針葉樹を用いた保存処理合板の製造技術を確立します。

2)バイオマス利用に向けたCCA処理木材からの薬剤除去技術の検討(H18~20)

 建設リサイクル法の基本方針では建設発生木材の再資源化がうたわれていますが,CCA処理木材は薬剤成分の除去技術が確立されておらず,現状ではリサイクルできない状態にあります。そこで,CCA処理木材のバイオマス利用に向け,各種薬剤成分の除去方法を検討します。

 

3)道内カラマツ資源の循環利用促進のための林業システムの開発(H19~22)

 道内のカラマツ人工林材は梱包材等の付加価値の低い用途が主流で,カラマツ林業の持続のためにも建築用材等高付加価値製品への活用が必要です。そこで,人工林の施業の違いが材質に及ぼす影響の調査,建築用材に適した家系の選抜,立木・原木段階での強度把握による利用適性評価等を行い,カラマツ材の高付加価値製品としての効率的な利用を促進させることで,林業経営の収益性を上げて再造林を促すシステムづくりの提案を行います。

4)海岸流木のリサイクルに向けたシステム提案(漂着ごみ問題解決に関する研究)(H19~21)

 海岸は景観や自然環境の提供,憩いや産業の場等さまざまな機能や役割を担っています。しかし,これらを損なうごみの漂着が問題となっており,特に北海道では流木の漂着による漁業被害等が顕著となっています。現在は関係者が海岸の機能回復,維持を図るため処理していますが有効な処分,活用策は確立されていません。そこで,流木の発生源,発生量を把握し,その発生予測や推定手法を確立するとともに,塩分等の性状調査と処理技術の検討をおこない,適切なリサイクルフローを検討し提案します。

5)色彩浮造り合板を用いた製品開発(H19~20)

 道産トドマツおよびカラマツを用いた合板の付加価値向上のために開発した,意匠性の高い色彩浮造り合板の評価方法の検討と製品のデザイン開発を行います。

6)相乗効果発現薬剤による木材の発熱性,ガス有害性の抑制(H20~22)

 木材の防火性能を向上させるために,作用の異なる薬剤を組み合わせ,相乗効果を発揮するような混合薬剤処理技術を開発するとともに,燃焼ガスの有害性に対する新たな評価・抑制方法を検討します。

7)木質材料による「剛」なコーナー要素の開発と究極の木質ラーメンの実現(H20~22)

 ラーメン構法は,住み手の変化による間取りの変更など,長期的な使用に対応できる構法として期待されています。しかし,木質ラーメンは接合部を鉄骨の場合のように剛接合と見なすことができないため,変形を考慮した複雑な構造計算が必要となります。そこで,これまでにない高剛性なコーナー要素を木質材料で実現し,接合部を「剛」と仮定できる新しい木質ラーメンを開発します。

8)土壌成分や木材の腐朽生成物が関与する塩化ベンザルコニウムの溶脱メカニズムの解明 (H20~21)

 保存処理木材中の有効成分が雨水や河川水等に接触することで溶脱すると,保存処理の効果が低下します。そこで,土壌中での溶脱メカニズムを解明するため,土壌成分や木材の腐朽生成物が溶脱に及ぼす影響について検討を行います。

9)膨潤処理による木材の特性の変化(H20~21)

 木材を膨潤剤を用いてさまざまな条件で処理し,木材の特性の変化を把握するとともに,特性の変化に影響を与える因子について調査します。

10)樹木の分子系統と動植相互作用系に着目した化学的防御と投資配分機構の実証的研究(H20~22)

 農薬等を低減させる方法として,植物自身の抵抗性を利用した農林業の推進が提唱されています。そこで,昆虫等,植物を食用とする小型動物に対する樹木の抵抗性物質を調査するとともに,樹種間における抵抗性物質と成長との関係を調査し,樹木の化学的防御について検討します。


民間等共同研究


 民間等共同研究は,林産試験場と民間企業等が共同で製品開発や技術開発を行う制度です。研究の成果は,共同研究を行った企業が優先的に使用することができます。また,研究成果により得られる特許等の知的財産権は,北海道と企業の双方に帰属します。

 I.木質材料の需要拡大を図る技術開発

1)環境対応型フェノール樹脂系接着剤の道産針葉 樹合板への適用性の検討 (H20)

 III.木材産業等の体質強化を図る技術開発

1)道産人工林材の建築用構造材利用における乾燥割れ抑制技術の開発(H19~20)

2)高品質新規きのこの安定生産技術の開発(H19~21)

3)畜産廃棄物を用いた食用菌の生産性向上に関する研究(H19~21)



受託試験研究


 受託試験研究は,民間企業等から依頼を受けて,林産試験場が保有する技術蓄積をもとに,企業の技術向上や製品開発につながる研究を実施する制度です。共同研究との違いは,民間企業に研究の分担がないこと,研究成果により得られる特許等の知的財産権は,北海道に帰属することなどがあります。

 I.木質材料の需要拡大を図る技術開発

1)伝統的木造住宅等の接合部性能評価(H18~20)

2)道産I形梁の新たな製造方法の開発と性能評価(H19~20)

 III.木材産業等の体質強化を図る技術開発

1)福祉食器類の凹面3次元加工に関する検討(H20)

2)円弧刃形を有するチップソーによる曲面の切削加工(H20)

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