(扱い:企画指導部普及課) |
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NHK 今朝のテーマは,わん曲集成材の製造装置と,わん曲材料のデザインを活かした開発製品についての紹介です。集成材,これはいろいろな性質の板を張り合わせて作る木材のことですよね?
石川 まず,普段聞き慣れない集成材という言葉ですが,これは,木材の大きな節や割れなどの欠点を取り除いた板状の材料を数枚重ねて接着して作った材料のことで,一般的な木材と比較すると,材質が均一でねじれや割れ,反り等が少ないといった特徴があります。また,板状の材料を幅方向や長さ方向に張り合わせることによって,自由な長さや断面寸法の材料を作ることができます。さらに,森林を育てる過程で発生する間伐材などの細い木材も有効利用することができます。このような利点から,集成材は家具や住宅の柱や梁など身近なところで使われています。そして,このような集成材のうち,真っすぐな形状ではなくて,曲線を持たせて作られた集成材をわん曲集成材と呼んでいます。
NHK 集成材は,材質が均一で環境にも優しい材料と言うことですね。では,わん曲集成材はどのようにして作るのですか?
石川 一般的なわん曲集成材の製造方法は,まず,大きな万力のような締め付ける道具を床の上に扇形にたくさん配置して,その中に接着剤を塗った薄い板を曲げながら一枚一枚挟めていき,最後にひとつひとつ万力を締め付けて薄い板どうしを接着します。しかし,この製造方法では,同じ形の部材を大量につくるには手間と時間がかかります。また,接着面に均一な力をかけるには,熟練者によるテクニックが必要となります。そこで,林産試験場では,生産効率が高く,接着面に均一な力をかけることが可能なわん曲集成材の製造装置を新たに考案しました。
NHK 林産試験場で曲がった集成材を作るための機械を開発したのですね。この製造装置は,どのような特徴があるのですか?
石川 今回開発した製造装置は,品質や性能の安定したわん曲集成材をスピーディーに製造できる,というところが特徴です。
この装置を用いた製造方法は,あらかじめ,接着剤を塗って重ねた数枚の板材を真っすぐな状態のまま,目的のわん曲形状を持った鉄製のフレームの上に乗せます。そして,その上から同じ形のフレームを油圧式のアームによって挟み込みながら,一気に曲げて作ります。また,挟み込んだ後は,フレームの内部に設置した耐圧ホースに空気を送ることで,板材全体に均一な力がかかり,完全に接着させることができます。この方法により,これまでのように,いくつもの圧締装置をひとつひとつ締めながら曲げていく,といった作業がなくなり,品質が安定したわん曲集成材をスピーディーに製造できるようになります。
NHK 鉄板をプレスするようなイメージですね。それでは,わん曲集成材はどのようなところに使われていて,どのようなメリットがあるのですか?
石川 わん曲集成材は,住宅や家具部材として使うことで,コーナー部分の複雑な接合を省略することができるため,施工性や強度性能の向上が期待されます。さらに,曲線的な形状を活かして,ざん新なデザインの商品開発も期待されます。
NHK 林産試験場ではこのわん曲集成材を使ってどのような製品を開発したのですか?
石川 オフィス内で隣の机との間に設置したり,会議スペースなどを仕切るときなどに使われているパーティションを開発しました。
このパーティションは,同じ形状のわん曲集成材を大量に使うものであり,先ほどご紹介したわん曲集成材製造装置の「品質安定」「スピーディー」といった特徴をよりよく活かした製品となっています。
この開発製品の主な特徴は,わん曲集成材をブロックのように高さ方向に積み上げたり,長さ方向に連結できる仕組みとすることで,自由なサイズや形状のパーティションを簡単に組み立てられるところです。また,部材どうしの接合に,接着剤を使っていないため,簡単に解体し,再びレイアウトを変えて組み立て直すことも可能です。さらに,接地ラインがわん曲なので,転倒防止のための脚材をつけなくても安定するとともに,曲線的な形状によって,優しさや柔らかさ,軽快さを表現したデザインとすることができました。
NHK パーティションというと金属によるものが多いと思いますが,木でできたパーティションも味があって良さそうですね。製造装置や製品はどのように商品化されるのでしょうか?
石川 製造装置については,現在,共同研究先の機械メーカーによって商品化が検討されています。パーティションについては,まだ商品化には至っていませんが,オフィス用の家具としてだけではなく,店舗や公共施設,そして一般家庭用としても利用できるものと考えていますので,今後は実用化へ向けた検討をさらに進めていく予定です。(以上)