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木材乾燥の管理支援システムの紹介

企画指導部 普及課 中嶌 厚


 はじめに


 昭和60年代,(株)デックシステムとの共同研究により,乾燥中の木材の含水率を検出するためにロードセル式含水率センサーを考案し,これを用いた蒸気式乾燥装置の自動制御システムを開発しました(写真1,以下,従来システム)。
 従来システムは操作性や機能性などが評価され,当時,四十数社の製材工場等に導入されました。しかし,導入後20年以上たつこともあり,装置の老朽化に伴う不具合が最近目立ちはじめています。このため,最新のコンピュータを用いたシステム開発を行ったのでご紹介します。
 システム(写真2)は平成19年に製品化され,(株)デックシステム(旭川市)より販売されています。

左:写真1 従来システム,右:写真2 タッチパネル式ディスプレイ部

 従来システムから新システムへ


 今回開発したシステムの特徴や新機能などを紹介します。

(1)温度・湿度制御

 従来システムでは,含水率減少経過に応じて温度・湿度を連続変化させる含水率スケジュールを基本に自動制御の開発を行いました。
 今回開発したシステムでは,含水率スケジュールを基本とした組立てに変更はありませんが,温度・湿度制御に関しては従来の連続式に加え,含水率経過に応じて一定条件を与えるステップ式を採用しました。
 乾燥スケジュールにおける温度と湿度の変化のさせ方は小刻みで滑らかな方が望ましいとされています。従来システムではこれを実現させるため,含水率を変数とした乾球温度と乾湿球温度差を求める関数式を検討することで連続変化による乾燥スケジュールを作成していました。
 今回,ステップ変化式を取り入れた理由は,ステップ変化が元来の乾燥スケジュール型のため操作管理者になじまれており,仮に乾燥途中で制御トラブルが発生した場合にも状況把握が容易で適切に対処できると考えたからです。
 なお,ステップ式・連続式いずれかの方法を選択できるので工場の実情に合った使い分けが可能となっています。

(2)乾燥スケジュールの選択

 相違の2点目は,乾燥スケジュール選択方法の変更です。従来システムでは,樹種ごとのスケジュールデータを磁気カードに保存し,コントローラに付属するカードリーダで読み込みスケジュールを呼び出す仕組みでした。新たなシステムでは,操作画面上で樹種ごとの最適スケジュールを選択する方式に変更しています。
 また,樹種の追加作成機能が付加されました。現時点で対応可能な樹種は針葉樹が26種,広葉樹が45種の計71樹種となっています。

(3)含水率センサー

 乾燥スケジュールは,狭義に含水率スケジュールと呼ばれています。すなわち,乾燥過程の水分量に応じて組み合わせた温度・湿度条件をあらかじめ工程表にして表します。

表1 ミズナラ35mm厚材の含水率スケジュール

 例えば,ミズナラ厚さ35mmの製材に対しては表1が示されています。この時,工程情報として水分量(含水率)が必要です。乾燥中の含水率を知る方法として,一般的に重量による換算法と木材水分計を用いて電気的に測定する2通りがあります。
 重量による方法は,通常2枚程度の試験材を桟積み材のなかに挿入し,乾燥工程中,随時取り出し台ばかり等で測定し含水率を計算により求めるので多少の作業手間はありますが,温度・比重補正の必要な水分計に比べると信頼性が高く現場に定着しています。
 システムでは,重量式含水率センサー(写真3)を用いて,常時,含水率に換算検出しているので,温湿度の自動操作とともに0.1℃単位での小刻みな制御が可能となりました。


写真3 重量式含水率センサー

(4)タイムスケジュール

 含水率スケジュールは前述のとおり含水率と温湿度との組合せで構成されますが,これを一歩進め時間と温湿度条件との対応に組み替えたタイムスケジュールによる方法があります。
 この方法は,工程ごとの処理時間を事前に予測し乾燥を行う方法ですが,樹種や材種,初期含水率,あるいは温湿度条件などによって乾燥速度は千差万別なため,予測は非常に困難です。このため,乾燥経験を持ち同一条件で行う場合に限って適用すべき方法であり,割れが生じやすいなど乾燥が難しいとされる広葉樹には不向きと思われます。
 新たなシステムでは,主に建築材として使われる道産針葉樹カラマツ・トドマツを対象に,材厚や初期含水率,温度条件などを操作画面上で入力することで即座にタイムスケジュールが得られるプログラムを開発し,システム機能の一つに加えました。
 この機能は,普段扱う製材と異なる材種や初期含水率のものが対象となる場合にも,適切な温湿度条件が提供されるとともに事前に乾燥時間の見当がつくので,生産計画が立てやすいなどの利点があります。

(5)遠隔監視

 システムは普及型PC(OS:Windows)で動作しており,各乾燥装置(最大32室)とLAN通信させることで遠隔管理を実現しました。
 また,インターネット環境があれば,例えば自宅から含水率経過や温度制御の状況を監視することが可能です。
 さらに必要に応じて,工程変更などの操作が自宅で行える機能を付加することも可能です。

 システムを用いた乾燥試験例


 試験材にヤチダモ板材(寸法:30×110×2400mm)82枚を用いて,ステップ変化式スケジュールによる乾燥試験を行いました。
 初期条件は表2のとおりです。これをシステムとの対話方式で各種条件の選択ないし数値入力を行うことで,含水率スケジュールが決定します。

表2 乾燥の初期条件

 乾燥経過モニターを図1に示します。初期含水率85%から10%までの乾燥時間は,調湿処理(合計30時間)を含め223時間でした。乾燥装置の制御能力の限界から工程の一部で湿度の低下不足も見られましたが,全体を通じてシステムの作動状態は良好でした。
 初期含水率と仕上がり含水率のヒストグラムを図2に示します。仕上がり含水率の平均が11.3%と目標の10%に対しやや高めとなりましたが,ばらつきは極めて小さなものでした。

図1 乾燥経過モニター  図2 乾燥前後の含水率ヒストグラム

 おわりに


 人工乾燥装置の普及率で8割以上を占める蒸気式乾燥装置の制御を支援する自動化システムの開発を行いました。既にお使いの装置にも導入できますので,興味を持たれた方は,林産試験場(0166-75-4233),または(株)デックシステム(0166-54-7934)までお問い合わせ下さい。

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