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木材乾燥における木屑だきボイラーの利用について

技術部 製材乾燥科 北橋善範


 はじめに


 現在,原油の高騰が企業経営を圧迫している状況は,木材産業も例外ではありません。中でも,木材の乾燥工程では,多くの企業が人工乾燥装置のボイラー燃料に灯油や重油を使用していることから,エネルギーコストが数年前の2倍以上というところも少なくありません。このような状況の下,木屑を燃料とする『木屑だきボイラー』(写真1)の導入を図る企業が増えてきています。現在,道内の木材産業では約50施設に木屑だきボイラーが設置されており,その多くで発生させた蒸気を利用して木材乾燥を行っています。本稿では,木屑だきボイラー導入のメリット,導入に際しての注意点,ならびに導入例についてご紹介します。


写真1 木屑だきボイラー(道内S社)

 導入のメリットについて


 木屑として利用される主なものは,製材工場で発生する端材,樹皮(バーク),おが屑(写真2),かんな屑などの工場残材,建築物の建設過程や解体過程において発生する端材や廃材,林地で切り払われた枝条や,切り捨てられた除・間伐材などの林地残材などがあげられます。これらの資源を有効活用することによって,燃料費を大幅に削減することが可能です。ただし林地残材の利用に関しては収集・搬出に要するコスト高に注意しなければなりません。
 また,木屑は地球温暖化防止に寄与する燃料と言われています。それは,木屑はもともと大気中に含まれていた二酸化炭素を樹木が光合成によって固定したものなので,燃やすことで二酸化炭素が発生しても,実質的には大気中の二酸化炭素を増加させたことにはならないからです。さらに,新たに苗木を山に植えることで二酸化炭素は再度吸収されることになります。


写真2 集積したおが屑

 導入に際しての注意点


 木屑だきボイラーの導入にあたって,いくつか注意しなければならない点があります。まず,法規制への対応です。導入前に,設置するボイラーが規制対象か否か,必要な許認可の内容や取得方法をしっかり把握しておく必要があります。関係する法令には『ダイオキシン類対策特別措置法』や『大気汚染防止法』,『廃棄物の処理及び清掃に関する法律』など,様々なものがあります。
 次に,木屑の必要量の確保です。想定される収集範囲内で利用可能な木屑の量や性状を事前に調査しておく必要があります。特に,製紙に利用されるチップなど,燃料以外への利用が考えられる木屑については,競合状況等も考慮に入れなければなりません。他にも,15~20年ほどの長期にわたる事業期間を想定した採算性の検討を行うことなどもあげられます。初期投資に関しては,国や都道府県および市町村等の補助金を活用して建設費の低減を図ることも考えられます。
 採算性に関しては,自社の乾燥材生産規模も十分考慮しなくてはなりません。木屑だきボイラーは設備費が高いため,有る程度の生産量が無いとむしろ採算が悪くなります。しかし,ここ最近の石油価格高騰のため,採算の合う生産規模はかなり小さくなってきています。あくまで一例ですが,高温型蒸気式乾燥機(収容材積20m3)2室,乾燥材生産量年間2,000 m3,木屑だき貫流ボイラーの蒸気発生量1,000kg/hrの場合でも,年間の乾燥コスト(設備費とエネルギー費)が約5~10%削減できるという結果も出ています。

 最近の木屑だきボイラー導入例


 下川町森林組合では,平成20年3月に木屑だきボイラー(写真3)を導入しました。同組合では主に集成材を生産しており,この工程から出るかんな屑,おが屑,端材などを燃料として,発生させた蒸気を5基の乾燥装置と工場の暖房用に供給しています。暖房を使用しない夏季は,木屑でブリケット(圧力をかけて固めた成型燃料)を製造し,冬季用の燃料として保管しています。余剰のブリケットは販売も計画されています。導入費は木質バイオマス蒸気ボイラー一式2500万円,チッパー機600万円の計3100万円です。しかし,これまでは重油・灯油ボイラーの使用で燃料費に年間約1400万円必要であったものが,木屑を活用することで,燃料費を約800万円削減できると試算しています。同組合の話では,順調にいけば数年ほどで導入費を回収することが可能とのことです。


写真3 木屑だきボイラー(下川町森林組合)

 おわりに


 本稿では木屑だきボイラーのメリットや導入の際の注意点などをいくつかあげましたが,これ以外にもあらかじめ考慮しておくべき点がいくつかあります。燃料費の低減に対して木屑だきボイラーが果たす役割は大きいと思われますが,そこだけを安易に捉えず,長期的な視野で導入を検討することが必要ではないかと考えます。
 最後になりましたが,本稿の作成にあたり,下川町森林組合には多大なるご協力を頂きましたことに感謝の意を表します。

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