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Q&A 先月の技術相談から

きのこの鮮度について

Q:きのこの生産をしています。夏場,鮮度低下によるクレームが発生することがあります。そのため出荷段階での鮮度に関する品質管理をしたいのですが,目安となる方法について教えて下さい。


A:きのこ類の流通形態は出荷後,保冷トラック等により搬送され卸売り市場に持ち込まれたり,直接,小売店に陳列されるなど多岐にわたっています1)。最終的には小売店の店頭で消費者にわたりますが,流通途中の管理状態によって,品質が大きく変化することがあります。このような場合,消費者等から生産者に直接あるいは販売店を通じ,購入品の鮮度が悪い,痛んでいるのではないかといったクレームが入る可能性があります。しかし,具体的な品質管理の方法,すなわち説明可能な指標を示すことができれば十分な対応ができると考えます。
 林産試験場では鮮度の基準を得るためにいくつかの手法を用いて品質の変化を調べてみました。試験にあたっては流通実態調査に基づき,収穫したきのこをトレーに入れてラップ包装し,10℃の一定温度下に保存しました。
(1)外観的変化
 外観上では写真1に示すように日数の経過とともに傘色が変化します。色差計を用いて調べると鮮度低下により傘色が退色しました(D:収穫後10日)。この時点で傘をよく観察すると傘裏のヒダに相当する管孔と呼ばれる器官が肥大化し,粉を吹いたように見えます。また傘表面に飛散した胞子の付着も見られ日数の経過が伺えました。


写真1 子実体の外観

(2)微生物の付着
 きのこの表面には他の微生物が付着しており,鮮度に影響を及ぼす要因の一つとなっています。日数の経過にともなう一般生菌数を測定した結果,収穫後10日では食品の一般的基準である10万個/g以上に達し,微生物的な劣化が進行していることがわかりました。
(3)pHの変化
  ナメコでは鮮度低下により酸味臭をともなう酢酸が生成され,きのこのpHの変化が顕著であることが示されています2)。前記の保存方法によりマイタケ,タモギタケのpHについて調べると,鮮度低下により0.6~1.0ポイント変化することがわかりました。
(4)食味の変化
 実際に味がどのように変化しているかを,日数が経過したマイタケを油で炒め,味見(官能試験)してみました。10日以上経過したきのこについては酸味が強く感じられるという傾向がわかりました。
 以上のように,鮮度低下に伴い,外観や味等に明らかな変化が生じ,他の微生物による劣化も進行することがわかりました。これらのうち,出荷段階での品質管理について考えると,外観検査や生菌数等の検査ももちろん必要ですが,簡易な測定装置(25,000円~)を使って簡単に品質を数値化できるpH測定が有効であると考えます(写真2)。この方法はロット管理においてあらかじめpH値により管理基準を定めておくことにより,抜き出し検査に適用することが可能です。
 この方法は生産者だけではなく,小売店での管理にも活用可能だと考えます。
参考資料
1) 米山彰造:林産試だより2005年9月号, 1-2(2005).
2) 南出隆久, 岩田隆, 沖野宏士:日本食品工業学会誌 32, 413-418(1985).


写真2 pH測定器の一例

(きのこ部 生産技術科 米山 彰造)

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