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●特集『2008 木製サッシフォーラム』

木造住宅における耐震性能と開口部

北海道大学大学院農学研究院 環境資源学部門森林資源学分野 教授 平井卓郎


■構造設計とは

 今日いただいた課題は耐震性能にかかわることですが,耐震性能と言っても独立したものではなくて,構造設計のひとつの要素です。それで,まず構造設計全体にかかわる総論的な話をします。

 構造設計は,実際の作業では大きく分けて二つの段取りに分かれます。一つは構造全体のイメージを決めて,そこから具体的な力にどのように抵抗させるかという全体的な計画です。これを構造計画といいます。
 そのあと個々の点について,経験的なものも含めて考えて,計算をして,本当に大丈夫かどうかを確認します。これを構造計算といいます。


■建築物にかかる力

 普通,建築物で考慮する力というのは,建物の自重ですとか中にある家具ですとか人間の重さ,北海道の場合大きいのが雪の重さといった鉛直荷重と,風圧力や地震力のような水平力です。

 木造建築は,軽いので風圧力の影響が大きいのです。普通に構造計算していきますと,風に耐えられるとだいたい地震にもOKという場合が多いです。
 ただし,北海道のような多雪地域では雪が多いと,建物の重さが重くなるので,地震でかかる力もその分大きくなります。そのため,風ではなくて地震で決まるというのが結構出てきます。

 これらの力に耐える構造としては,ラーメン構造,トラス構造や壁式構造などがあります。


■ラーメン構造とは

 地震や風のような水平力に抵抗するための構造要素の一つは,図1(1)のような骨組みの構造です。こういう構造をラーメン構造といいます。
 鉄骨構造ですとか,鉄筋コンクリート構造ですと,ラーメン構造というのは角のところがみんなしっかり接合された剛接合ですけれど,木造はちょっと特殊で,釘を打ったりボルトで取り付けたつなぎ目や角の所は,変形が出ます。こういうのを半剛節構造といいます。
 それともうひとつ,静定ラーメンというのがありまして,図1(2)の上の階だけ見たとき,棟と,登り梁と柱の接合部をピン接合にした構造で,ピン接合であるけれども安定したものです。
 木造の場合,普通の金物を使っている場合はみんなこの半剛節ラーメンですが,接着ガセットのような接着接合によるものは剛節ラーメンです。
 ラーメン構造の特徴は,開口部を簡単に作れることです。骨組みだけあればいいんです。これは,開口部ということを考えたら一番よい構造ですが,剛性が低いんですね。横から力が来たときに大きく変形してしまいます。それをどう抑えるかというのが技術的課題です。
 このやり方への工夫は色々ありまして,例えばまぐさのようなものを一体化してしまう。あるいは,土台のところも一体化して,交点をたくさん増やすと,限界はありますが剛性は高くなります(図1(3))。
 昔からある貫構造とか日本の伝統工法はこういう構造です。ただあまり剛性は高くはありません。


図1 ラーメン構造


■トラス構造

 それを補うのが筋かいや立体トラスのようなトラス構造です(図2)。
 筋かいは,一本しか入っていなくても,計算上足りることがあります。しかし,地震が来る向きによって強さが違うというのは建物の設計であまりいいことでないので,できるだけ筋かいを交差させるか,あるいは対称に配置する必要があります。


図2 トラス構造


■壁式構造

 壁式構造は,ツーバイフォーのような骨組み材の外側から面材を当てて,釘をどんどん打っていくというパターン(図3(1))もあれば,骨組み材の間に何か受け材を入れて,すっぽり真壁型に入れるというのもあります。
 開口部がある場合には,上下に面材を張って真ん中に窓を残すやりかたがあります(図3(2))。
 それから開口部が小さい場合には,枠さえしっかりとめておくと,多少開口部があってもこれ全体で保ってくれます(図3(3))。
 ちょっとした換気扇の開口などがあっても全部埋まっているパネルとあまり変わりません。
 それから,接着してしまうやり方もあります。
 筋かいは,施工を十分注意しないと脆く壊れる場合があります。
 それに対して,べったり面材を張ったものはけっこう粘りもあって,耐震性能は今の段階で日本の研究分野の中ではこれが一番いいといわれています。ただ,開口部の制約はあります。


図3 略式構造


■開口部まわりの構造上の注意点

 次に,今のような構造の中に窓のような開口部を組み込んだときの構造上の注意点をいくつかお話します。

 開口部の両側の柱には,屋根や雪などのかなりの鉛直荷重が分かれてかかります。それで,この柱には注意が必要です。多分,実際に構造計算していくと柱の材質というより,土台のめり込みで設計が決まってしまうだろうと思います。
 それから,窓の上に柱がある場合,特に上に雪が載っていると,相当の雪荷重が窓の上のまぐさの真ん中に掛かってきます。これは,かなり慎重にまぐさの設計をしておかないと窓が開かなくなったりします。


■まぐさの水平せん断に注意

 ただ,荷重が大きいからといって,非常に背の高いまぐさを取り付けると,木材は曲げ破壊でなく,真ん中辺からピッと割れが入るせん断破壊を起こします。
 それで,ものすごく背の高いまぐさを配置したときには,曲げだけではなく,せん断のチェックを必ずしておかなければならない,ということになります。


■水平力に対する設計

 もう一つ開口部周りの構造上の注意点は,水平力に対する設計です。

 まず風です。当然ですが,開口部のところは柱とか梁とか中間にないわけですから,風の負担面積が大きくなります。
 普通は,風に対しては特別に設計をしておかなくても,大体普通に胴差と柱が配置されていれば保つんですけれど,負担面積が大きくなると厳しくなります。

 それから,地震の時に開口部脇の柱には,非常に大きな力がかかります。それで,慎重を期して柱の上下のところをきちっと補助金物でつないでおかないとあぶない場合があります。


■コーナー窓の注意点

 特に注意する必要があるのは,コーナー窓(L型窓)です。コーナーにL型窓があって,壁の角に柱1本だけ立っている。これも,建物全体としては,設計をクリアできる場合があります。
 しかし計算上の水平耐力を確保するために,開口部脇にとても強い壁がある時には,コーナーの柱にものすごく大きな引き抜き力がかかります。

 普通の標準的な仕様の金物だけでは足りないことがありますので,ここはがっちりしておかないと,大地震のときにこのコーナーの柱が万が一抜ける,浮き上がる,そして次に逆方向の地震力が来たときに土台を踏み外すともう鉛直力に耐えられなくなりますから,そこから崩壊してしまいます。


■耐震設計の考え方

 現在の日本の耐震設計の考え方は,いわゆる許容耐力度設計といわれる建物に損傷を生じさせない範囲内で設計することが基本です。これを耐震設計では耐震一次設計と言います。

 これは地震規模で言うと,だいたい建物を建てて50年に1回くらいはその場所に来るかもしれない程度の中規模地震で,あちこち傷ついてしまうことは起こらないようにしましょう,というのが耐震一次設計こらないようにしましょう,というのが耐震一次設計です。
 建物に地震や風などの力が横から来ると,建物が横にひしゃげます。このときの角度を層間変形角と言います(図4)が,この角度があまり大きくならないようにしましょう。
 この角度はどのくらいかというと,木造の建築設計の場合の一般的な目安として,高さに対して横の動きが150分の1とか120分の1を超えないようにしましょうというこですが,最近は結構がっちりした建物が多くて木造とは言っても普通の中地震程度ぐらいだと階の高さに対して横の変形が200分の1以内に実際には収まっているという建物が多いと思います。
 北海道の家は結構そうだと思います。


図4 層間変形図


■層間変形角の重要性

 それでこの変形が何で重要かというと,建物自体が損傷しないようにということも大きいのですけれども,大地震が来たときに変形が大きいと家具がまず倒れます。それから照明器具が落ちてきます。
 実際に大地震が来たときに,人身被害はどういうものが起こっているかというと,阪神淡路大震災のときに家がぺしゃんこになってその下で圧死したっていうのは盛んにテレビに出ましたので,それがどうしても目に付くのですけど,実際にはそんなことよりも本棚が倒れてきたとか,上からシャンデリア風の重たい照明器具が落ちてきたとかいったことが,死ぬ確率は低いのですけれど結構大怪我します。

 これを起こさせないためにはどうしたらいいかというと,水平方向の変形をある一定範囲内に抑えるということになると思います。


■外壁の剥落(はくらく)

 それからもう一つ大きいのは外壁,サイディングの剥落ですね。
 サイディングが落ちると,建物自体としても損傷が起こって困るんですけど,もうひとつ,不燃のサイディングなどが落ちて可燃物の骨組みの構造が露出します。
 そうすると,外からもらい火するときに,いっぺんに燃えてしまう。こういうことを考えると変形を抑えることがかなり大きな要素になります。

 次に,本当の大地震が来たときにはどうするかというと,建物が損傷しない設計を大地震でも同じようにすれはよいのですが,そこまでやるとかなりガチガチに家を固めなければならない。
 そうなると,とてもお金が掛かりますし,開口部などを広くすると大変なので,強度優先で,居住性はある程度犠牲にするという設計にせざるをえなくなります。
 けれど,来るか来ないかわからないことだけのために,他のものを犠牲にして構造設計だけを優先するというのは,やっぱり現実的でないので,大地震が来たときに建物は部分的には壊れてもよいけれど,倒壊するのは防ぎましましょう,ということになります。


■終局限界耐力の確保

 日本の現在の設計の基本的な考え方は,終局限界耐力を確保しておくということです。


 図5のグラフの縦軸が力,横軸が変形です。地震や風の力が来ます。あるところまで頑張っています。どこかで壊れます。そうするともう力を支えられなくなります。そのときの力と変形の関係を示している図がこれです。
 実はこの力と変形で囲まれるこの面積をその建物の中に蓄えられるエネルギーという捉え方をします。


 ここで,変形しにくい家(三角形の方)と変形しやすい家(台形の方)を考えてみます。
 地震でぐらぐら揺すられる時に,三角形に囲まれた部分と台形の部分の面積が同じだったら,同じ大きさ(エネルギー)の地震にあったということです。
 ここでは,三角形の方は一気に力が落ちているときに倒壊です。台形の方は,変形は大きくなっています。でも建物はまだ倒壊していません。それで,一応いいことにしよう,というふうに考えます。
 そうすると強度はここまであります。でも簡単に壊れないようにぐにゃぐにゃ粘ってくれなくちゃいけない,という評価をします。これが終局耐力,耐震二次設計の考え方です。


図5 終局限界耐力における力と変形


■開口部の配置

 原理的には,ラーメン構造では全面ガラス張りというのは可能です。しかし,開いているところが多くなると壁の比率が少なくなりますので,それだけで抵抗力は小さくなります。

 壁がたくさんあると,それだけで強いわけです。とりあえず普通に壁を作っていて,足元が抜けないように金物さえちゃんと入れておけばそんなに壊れないので,やっぱり壁が多いというのは設計としては一番楽な耐震性能の確保の仕方です。
 でもなかなか簡単に壁を作ることはできません。普通,建物の北側に壁が多く,南側は少ない構造が多いと思います。
 この構造で,実際地震が来るとどうなるかというと,建物はねじれます。
 そうすると,南の壁が少ない面の方が北側の壁が多い面より移動量が多くなり,簡単にいうとたくさんの力が南側に掛かります。だから壊れやすくなります。

 木造住宅でも少し前の建築基準法の改正から,四周の壁の量をチェックして,大きく偏らないようにすることになっています。


■開口部まわりの水の浸入

 今までの話は,建物を建ててすぐ翌日に,どのくらいの強さを持っているのかということです。


 しかし,実際には30年,50年保たないといけない。50年後にどのくらいの強さを保っているかというのが本当は重要です。
 そのために構造計算以外にも,同等ないし場合によってもっと重要なことがあります。
 例えば,開口部は水が入らないように施工をしっかりやる必要があります。窓周りの施工が悪いとそこから水が浸みてきて,ちょうどその階の床との境の壁の中に水が溜まります。
 当然構造部材が腐りやすくなります。腐るだけではなくて,OSBや合板などは,水を吸ってふわふわに膨らんでしまうと,せっかくそこに釘を打っていても効かなくなってしまいます。
 ここが腐りますと,各階の足元のところが腐るということですから,耐震性能が大きく下がってしまいます。どんなにいい初期設計をしていても,腐ったらおしまいです。


■2階の柱が腐ると

 実例をご紹介しますと,実は窓に関するものではないのですが,阪神淡路大震災の時に1階が開放だった店舗建築は,1階からつぶれて2階だけ残っているものがたくさんありました。

 みなさんもテレビとか新聞とかでそういう写真をご覧になったと思いますが,2階が壊れている例を私は一つか二つ見ました。
 それは商店の2階のところに看板とかネオンのようなものを木ねじなどで壁に取り付けているんですが,そこの水仕舞が悪くて,隙間から雨が降るたびに水が入っていて,ちょうど下のところに溜まって2階の柱の下部のところ,足元のところがぐしゃぐしゃに腐っていました。それで,2階がつぶれてしまっていました。


■木造住宅の構造設計

 構造設計の項目は図6のような分類ができると思います。普通,最初に設計する初期耐力設計という部分が作業の大半を占めます。
 それは前述の変形を抑える剛性設計と,許容耐力設計,つまり許容応力度設計で,耐震一次設計に相当します。
 それから,次の終局耐力設計,つまり耐震二次設計までは必須です。


図6 木造住宅の構造設計の項目

 でも,実際には部材の耐久設計,これは部材が腐らないようにするために,適切な防腐処理をするといったことです。
 それから使用環境設計,つまり構造部材の木材が腐らないように,できるだけ水がそこに来ないように,そういう悪い環境に木材を置かないようにするためにはどうするかということを,最初から考える必要があります。

 それをやるために,維持管理しやすく,湿気や水が壁の中を動きやすくするにはどうしておいたらいいとか,本当に腐ってきたときには,腐った状態でどのくらいの地震まで耐えられそうか,という試算をしてみることもあります。

 それから,これはちょっと今日のテーマとは関係ないですけれども,そういうことが起こったときにどう補強するか,それから最後に建物を改修した後,取り壊したり,どこかに材を使用したりするときに,リユース・リサイクルをどうするか,といったようなことも考えておく必要があります。


■ガラスに注意

 留意しないといけない点で大きいのは窓ガラスです。地震のときにガラスが割れて飛び散ると,足を怪我するんです。足を怪我すると,避難の時に大変です。
 ガラスが割れないようにするにはどうすればよいかというと,窓枠の変形が大きくなった時に窓ガラスが割れないようにクリアランスをたっぷりとって,ちゃんとコーキングしておいてかなり変形があっても割れないようにします。


■居住性能と耐震性能

 日常生活に快適性を求めるということと,風や地震に耐える構造にするということには,やや背反的なところがあります。

 何でもかんでも強くすればいいというわけにはいかないです。大地震というのは500年に一回くらい来るかもしれないので,大抵は会わないで済むんですね。
 一生に一度会うか会わないかわからないことのために,その準備を万全にして,日常生活の快適性を犠牲にするということは,違うのではないでしょうか。
 ただ,ある時大阪の意匠を手がけられている設計士さん達とこの話をしました。そうしたら,その人たちは,いやそれは違うという話をされました。
 普通,意匠・計画系の人の方が広い窓を採りたがりますが,その人達はやっぱり構造が大事だ,と言っていました。

 なぜかというと,1軒の家というのは,その人の財産ではあるけれどもやはり社会的な資産だから,ある地域の中でほとんどの家は壊れないということを守らないと,避難の話とか,火災の話とかいろんなところでほかの家にも迷惑をかけることになる。
 そのため,いくら自分の家であっても,自分が死んだらそれでいいよということでは困る,ということを言われていました。

 それから,日本は家1軒建てると,次の人が更地にして建て替えるということが多いですが,これからは,1軒の家を補修・改修しながら,2代,3代,できれば50年,100年住むことになると思います。
 そうなると,ある意味ではその家は単にその時住んでいる人が,構造安全性はあまり気にしなくてよい,という権利はないのかもしれません。

 もちろん,最低の安全性,構造安全性はまず基本として義務として守った上でより安全な物を求めるか,毎日の生活の快適性を求めるかは,自分の判断だということなんだろうと思います。


■窓を広くとるということ

 広い窓というのは光が入るということだけではなく,熱の損失も考える必要があります。
 住宅の熱は,窓からかなり逃げるので,設計をする場合は,壁が多い方が楽です。
 だから,北海道の家は耐震性が高いんです。耐震性を高くしようと思って,みんな壁をたくさん作っている訳ではなくて,冬暖かくしようと思って自然と壁が増えてしまうから,なんとなく耐震性も同時に向上するということです。

 そこで,断熱性の高い窓を作って,ある程度開口面積を広くしたいわけですが,それをカバーする構造的な性能の高い構造というものを開発していくことも重要だと思います。


■よりよい北海道の住宅設計のために

 最後に,この木製サッシフォーラムにお集まりの皆さんにお願いしたいと思います。
 それは,開口面積というのは壁面あたり何%開口があるから明るいとか,非常に開放的な感じがするとか,必ずしもそういう単純なものではありません。実は,ここにも設計というものがあります。

 同じ開口率であってもその窓をどこに配置するか,というだけで,明るく感じます。
 そんなに広くないのだけれど適切な場所に開口があることによって,そこから入ってくる光で非常に快適になります。
 実はこういうことは,住宅の構造を造りやすくすることにつながります。構造設計をする人は窓をつけることができるように,構造を何とかしようと考えます。
 そこに,窓を専門にされている方が,同じ窓の面積でもいかに開放感と明るさを感じさせるかという意匠設計と窓の配置の工夫をしていただくと,その分構造屋が楽になります。

 例えば,コーナー窓を入れることができなくて,コーナーの片側に壁は入れるけれど,敷地,隣地,傾斜,道路の方向,そういうものを全部考えて上手に窓を配置していただくと,その家の奥さんがコーナー窓があるのと同じような開放感を感じて満足してもらえるような全体の平面計画,また開口部の設計というのがあり得ると思うのです。

 これを,窓を考える人たちと構造設計をする人たちがうまく相談しながら上手にやっていくと,開口をつくっても構造的に大きな問題を生じない,そういう設計というものも可能ではないかと思います。
 その辺のところを,この機会に皆さんと一緒にご相談しながらよりよい北海道の住宅を設計していくことのきっかけになれば大変ありがたいと思います。

文責 性能部長 石井 誠


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