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●特集『2008 木製サッシフォーラム』

大開口部を可能にする木質ラーメンの動向

性能部構造性能科 野田康信


■ラーメンとは?

 ラーメン,これはドイツ語で「枠組み」「フレーム」という意味ですが,建築用語としては,各節点で部材が剛接合されている骨組みの総称で,「剛節骨組」のことをいいます。鉄骨や鉄筋コンクリート構造の基本的な構造形式です。
 各節点というのが接合部で,鉄の場合ですと溶接,鉄筋コンクリートでは一括成型することでこの剛接合を実現しています。


■剛接合とは?

 各接合部が十分に拘束されていない,回転が自由にできる構造ですと,地震や風によって横から力が加わった場合には菱形に変形してします(図1)。
 ここで,接合部を「剛にする」,つまり固くすることで,地震や風に抵抗することができます。これがラーメンです。
 剛接合のキーポイントは,ラーメンが横荷重を受けたときでも,接合部自体の角度が一定に維持されていることです(図1)。


図1 接合部の変形


■木質ラーメン構法とは?

 ラーメン構法は大開口部,大空間を実現することができるため,間取の自由度が高いということが長所といえます。
 木質ラーメンはこれまで,工場,校舎,共同住宅,庁舎などの大規模木質構造を対象に発展してきた技術です。
 近年の事例としては,登別明日(あけび)中等教育学校,足寄町新庁舎,帯広市保健福祉センター(旧森林管理局帯広事務所)などがあります。
 これらの技術が最近では,住宅で取り入れられるようになってきていますので紹介します。

 写真1は木質ラーメンを使用した住宅の一例です。
 市街地では,狭い敷地面積の場合,一階をビルトインガレージにしたいという要望があり,これをかなえるためにラーメン構法が住宅に取り入れられてきています。


写真1 住宅用木質ラーメンの例(ラグスクリューボルト研究会HPより,http://universetest.ciao.jp/lsb2/)


■在来構法とラーメン構法の構造的な違い

 一般的な木造,在来構法は,屋根上の積雪荷重や建物自体の重さを柱で支え,地震や風による水平荷重が加わると容易に菱形に変形するものと見なし,壁や筋かいで変形を抑えるというように役割分担しています。

 この原則から外れて,接合部をガッチリと固めることで,柱や梁だけでも水平力に耐えることができるようにしたものがラーメン構法です。
 ただしこの場合,接合部には相当な負担がかかることになりますので,接合部の設計は非常に重要になってきます。


■木質ラーメン構法の接合部

 写真2は大規模木質構造では最も一般的な木質ラーメンの接合方法です。鋼板をスリットの入った部材に挿入してドリフトピンやボルトで接合するもので,金物の形状によって,三方向,四方向につなぐことも可能になります。

 また,右の写真は合わせ梁というもので,柱に対して両サイドに梁を挟んでボルトで固めるものもあります。
 比較的加工が簡単な接合法ですが,柱梁の断面が同じ方が好まれるようになり,あまり用いられなくなってきています。

 このほか,鉄の棒を接着剤で固めて一体化するものや,ラグスクリューボルト(大型の全ネジボルトのようなもの)のように接着剤を用いず,柱と梁の両方にねじ込んでおいて,連結金物を用いて現場で一体化するというものがあります。
 また,もっと大胆に,集成材の木口をフィンガーカットして接着するラージフィンガージョイント構法などがあります。


写真2 鋼板挿入接合・合わせ梁の例


■接合性能を決定する要素

 ラーメン構法の性能は接合部で決まるといっても過言ではありません。したがって,接合部の性能(強さ,固さ,ねばり強さ)をどのように発揮させるかが重要な課題となります。

 強さは柱や梁を太くする,固さは金物を増やしたり接着剤で固めたり,ねばり強さは金物のねばりを上手に使う事が考えられます。
 しかし,住宅規模に使用できる部材断面に限界がありますし,金物をむやみに取り付けることは母材の強度を下げることになります。
 また,接着で固めても,ねばり強さが無くなるというジレンマがあります。したがって,建物によって重要視する性能にあった接合部を選択する必要があります。

 また,木質ラーメンの接合部は鉄骨の溶接のように完全に剛とできないという課題があり,通常,木質ラーメンは半剛接合と位置づけて,設計することになっています。
 この半剛接合というのはピンと剛の中間的な位置付けの接合です。

 接合角度を維持しているのが剛接合ですと説明しましたが,半剛接合では,接合部の変形を無視することができません。したがって,接合部自体が開いたり,閉じたりしますので,この変形角を設計に反映させることが必要になります。


■実際に住宅に取り入れるには?

 通常の木造住宅の設計法である壁量計算,これは壁がどれだけあるか,それがバランス良く配置しているかということを確認する設計法ですが,現在のところ,ラーメン構法はこの設計法には適用できません。なぜならば,ラーメンが壁の代用ではないとされているためです。

 したがって木質ラーメン構法を用いて建築するには許容応力度計算が基本となります。
 この設計法は鉄骨造やRC造では通常の設計法であるので,それと同等の計算が求められるということです。
 ただし,木質ラーメンは半剛ですので,変形を考慮した設計を行うことになります。ここが構造設計者の腕の見せ所というわけです。

 実際には数多くのメーカが商品として提供しています。多くの場合は6m,8mスパンができます,構造計算をサポートします,施工指導,研修などもします,とうたっているものがほとんどです。
 これらの商品は,重要な要素である強度,剛性,ねばり強さの評価値が接合部の試験によって確認されており,それが仕様書に反映されています。

 写真3は私自身が携わっているラーメンの接合部の実験風景です。このようにT字形,L字形の試験を実施しています。また,門形のフレームを組んで,水平荷重にどれだけ耐えるのかも実測しています。

 このように,ラーメン構法は開口部を確保しながら耐震性を有する構法です。
 何か,開口部の設計で困っていることや,おもしろいアイデアがありましたら,是非ご相談ください。ラーメンの技術が解決の糸口になるかもしれません。


写真3 接合部性能試験の例


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