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「NHKおはようもぎたてラジオ便-北海道森物語-」林産試版



 林産試験場の職員がNHKのラジオ番組に出演し,提供した最新の研究情報について,番組でのやり取りを再現してお伝えしています。

(扱い:企画指導部普及課)



燃えにくい木材-火災にあったら木材はどうなる?-

出演:性能部防火性能科 研究職員 河原崎政行
放送日:平成20年5月28日



 熱を伝えにくい木材,内部まで燃えるには時間がかかる


NHK 今朝のテーマは「燃えにくい木材」についてです。木材というと普通,燃えやすいもの,といったイメージが持たれています。火災にあったらまっ黒こげになりますよね。燃えにくい,とはいったいどういうことでしょうか?

河原崎 確かに木材は燃える材料ですので,例えば火災になったら早い段階で表面が燃え始めます。しかし,木材は熱を伝えにくいという性質があるため,ある程度の太さを持った柱などでは,表面は燃えていても内部は意外にも低い温度に保たれています。
 さらに,表面が燃えて炭化した層がある程度の厚さになると,それが壁となって,断熱効果を発揮するとともに,内部への酸素の供給を絶つことから,木材内部への燃焼の進行を遅らせているのです。

NHK  火災後の建物の映像をニュースで見ると,柱が黒こげになっているのに倒れていないことがあります。見た目は全部が燃えているように見えますがそれは表面だけで,中身が残っている,つまり内部はほとんど焼けていない,ということですね。

河原崎 ニュースでよく見る「黒こげになっているのに倒れていない」火災現場では,おっしゃるように柱の内部は焼けていない状態のはずです。
 繰り返しになりますが,木は熱を伝えにくく表面が焼けても内部まで燃えるには時間がかかる,さらには表面の炭化層が断熱・酸素遮断の働きをする,そうした木の持つ燃えにくさの現れかと思われます。


 重いカラマツ材はゆっくりと燃える


NHK 木というものには,燃えるイメージだけを持っていましたが,お話を聞いて,中身までは焼けにくい,太い柱などではとりわけそう言える,という性質がよく分かりました。
 ところで,木材にはたくさんの種類があります。ストーブにくべる薪の火もちの違いからも実感するように,樹種によって燃え方が違うように思いますが?

河原崎  燃えるという現象は,外部からの熱により木材が分解して放出する可燃性ガスと空気中の酸素との反応です。燃焼が継続するということは,この反応がバランス良く繰り返されていることになります。断面の大きな木材では,このような反応が炭化部分を形成しながら,表面から内部に徐々に進んでいきます。
 当場で行った試験で炭化していく速さ(炭化速度)を測定した結果,樹種間の差もありますが,全体的に木材が重くなるに従い炭化速度が遅くなる傾向がありました。

NHK  重い木ほど,ゆっくりゆっくりと黒こげの炭となって内部に向かってゆく。つまりは重い木ほど燃えにくいということですね。スピードの遅いものにはどのような木があるのですか?

河原崎 道内のカラマツ材は,国産材で建築用に使用される樹種の中では比較的重い材になります。上述の試験において,道産カラマツ材を本州で産出量の多いスギ材と比較した結果,カラマツ材の炭化速度はスギ材よりも10~20%遅くなる結果が得られています。


 燃えにくい建築材料をつくる研究


NHK 北海道産のカラマツはスギよりもゆっくりと燃えてゆく。つまりは燃えにくいという考え方ができるわけですね。こうした木材の燃えにくさについては,いろいろと発展的な研究があるように思われますが?

河原崎 一つには,道産カラマツ材の燃焼性を明らかにする研究が必要と考えています。このことにより,火災においてカラマツ材を用いた木造建築物の優位性をアピールしていくことができ,同時に大規模な建築物に使用されている断面寸法の大きな柱等についても,カラマツ材を用いることでこれまでよりも断面寸法を小さくした部材の開発が可能になると考えています。
 もう一つには,平成10年の建築基準法の改正より木材の可能性が広がったことに応じた研究があると思います。

NHK 平成10年の建築基準法改正,あらたな基準ができたのですか?

河原崎 改正前は,木材は燃えるものとして認識されていたため,鉄筋コンクリート造のような大規模な建物の構造部材には使えませんでした。
 これが法律の改正により,必要とされる耐火性能が明確化されたことで,木材でもその耐火性能を満たせば,鉄筋コンクリートと同じように使うことができるようになりました。これを受けて現在国内では,薬剤処理して燃えにくくした木材や,石こうボードのような燃えにくい材料を木製部材の表面に張り付けて基準を満たす耐火性能を付与する研究が行われています。これらの研究により,建物への木材の活用の幅が大きく広がることと思われます。

NHK そういう新たな木材の使い方によって,それこそ北海道産の木材がどんどん使われるようになるといいなあ,ということですね。(以上)


写真 加熱60分の炭化状態(左:カラマツ材,右:スギ材)


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