本文へ移動

Q&A 先月の技術相談から

地球温暖化防止と間伐の関係

Q:間伐を行うことで,どのくらい地球温暖化防止に貢献できますか?


A:植栽した苗木は,成長するにしたがい混み合ってきます。その結果,樹木は十分な太陽光を受けることができずにやせ細った樹形となります。そこで,適当に樹木の間引きを行い,太陽光が森林の中に入るようにします。この作業を間伐といいます。間伐を行うことで肥大生長が促進され,樹木の幹材積は増加します (図1)


図1 間伐前後の森林イメージ

 樹木は大気から吸収したCO2 (二酸化炭素) と土壌から吸収した水を用いて光合成を行い,樹体を大きくしていきます。樹木は光合成と同時に呼吸もしていますが,呼吸によるCO2放出量よりも吸収量の方が成長量の分だけ多くなっており,大気中のCO2を直接的に減らしています。樹体を構成するC (炭素) はすべて大気中のCO2に由来するので,樹木の材積や重量を調べればCO2の吸収・固定量を推定することが可能です。
 それでは,間伐を行った場合と行わない場合ではどちらの森林の方がCO2吸収・固定量が多くなるでしょうか?木材の予想収穫量から比較を行ってみたいと思います。収穫量は各種育成条件によって異なりますが,造林樹種として一般的なカラマツを例に,1等地,2000本植,中庸仕立て,伐期50年の条件で比較を行います。
 まず,適切な間伐を行った場合,間伐材,主伐材を含めた1haあたりの収穫量は581m3,約238トンのCO2に相当します1)。これに対し,植栽後から全く間伐を行わずに50年後に皆伐する場合の収穫量は551m3,約225トンのCO2に相当します2) (図2)

写真2 pH測定器の一例
図2 丸太のCO2固定量の比較


 一方,間伐作業等の収穫作業や育林作業では林業機械等の重機が使用され,化石燃料の消費に伴ってCO2が排出されます。適切な間伐を行った場合,50年間の造林,育林,収穫作業で排出されるCO2は約5.5トンと試算されます3)。同様に,間伐を行わない場合で排出されるCO2は約3トンと試算されます3) (図3)


図3 育林・収穫作業からの排出量の比較


 以上,丸太のCO2吸収・固定量から作業にかかる排出量を差し引いてCO2収支を求め比較をしたところ,間伐を行った森林の方が無間伐のものよりCO2収支は約10トン,5%程度向上する可能性があります (図4)


図4 CO2収支の比較

 間伐を行うことが地球温暖化防止に貢献するかどうかは伐採した木材をどのように扱うかで変わってきます。木材は建築物などに加工し,利用することによって,長期間CO2を固定しておくことが可能です。また,再生可能な植物資源である木材は化石燃料と異なり,燃焼によるCO2排出をカウントしないカーボンニュートラルという概念があります。それゆえ,エネルギーとして利用することで,化石燃料を代替した分のCO2を減らす効果が期待されます。しかし,間伐の中には切捨て間伐といって伐採した丸太を森林内に放置する場合もあります。この場合,残された丸太は腐朽分解されCO2を排出することになります。
 間伐には,人工林の経済価値を高めたり,水源涵養能力の向上,病虫害・山地災害の防止等の重要な役割があります。近年では地球温暖化対策として森林の炭素吸収機能が注目され,全国的に間伐の実施が進められています。間伐を行うことによって木材の収穫量は増え,CO2の吸収・固定量は増加します。そして,得られた間伐材を有効的に利活用していくことが温暖化防止への貢献に必要不可欠といえます。

参考資料
1)北海道立林業試験場 : “カラマツ人工林施業の手引き”, (2007).
2)北海道立林業試験場 : “北海道版カラマツ人工林収穫予測ソフト”, (オンライン), 入手先
http://www.hfri.pref.hokkaido.jp/syukakuyosoku/syukakuyosoku.html
3)古俣寛隆, 由田茂一, 加藤幸浩, 高山光子 : 日本LCA学会誌(査読中)

(企画指導部 経営科 古俣寛隆)

前のページへ|次のページへ