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カラマツ構造用集成材の耐火性能について

性能部 防火性能科 河原埼政行



 はじめに


 建築物の柱など構造上主要な役割を担う木質材料に,構造用集成材があります。これは,原木から採取し,強度によって等級区分したひき材を,繊維方向を平行にして積層接着した材料です(図1)。構造用集成材の特徴としては,強度が安定していること,寸法精度が高いこと,直径が小さい原木でも大きな断面の部材を作れること等があります。これらのことから,住宅等の中小規模の建築物をはじめ,アリーナや学校等の大規模な建築物にも使用されています(写真1)。

 後者のような大規模な建築物では,多くの場合,建築基準法により防火上の規制を受け,構造部材は一定水準の耐火性能が必要になります。構造用集成材がそのような部材に使用できるのは,木材の燃焼時における特徴を利用しているからです。この特徴について少し説明します。

図1 構造用集成材の製造工程 写真1 構造用集成材を使用した大規模建築物(足寄町役場庁舎)

・木材の燃焼時の特徴について
 木材は燃えることから,多くの人は木造建築物が火災になったら,すぐに倒れてしまうと思われるでしょう。しかし,ある程度断面の大きな部材になると,火災の際には表面は燃焼しますが,内部への炭化の進行はとてもゆっくりであるため,簡単に燃え尽きることはありません。
 木材の燃焼におけるこのような特徴は,木材の熱を伝えにくい性質に加えて,燃焼により形成される炭化層の遮熱効果や酸素遮断効果等によると言われています。

・カラマツ構造用集成材について
 さて,カラマツは道内の主要な樹種の一つであり,構造部材に使用される国産材の中では強度が高いという特徴があります。最近では国産材の利用促進が全国的に進められていることもあり,道産カラマツ材は道内外で構造用集成材に使われています。

 このように強度については,国産材の中で優れたカラマツ材ですが,耐火性能についてはどうでしょうか。カラマツ構造用集成材の耐火性能を調べるため,小型試験体を用いた耐火試験を行いました。


 カラマツ構造用集成材の耐火性能の検討


試験方法

 試験体には,厚さ20mmの板材を7枚,構造用集成材に使われる接着剤を用いて厚さ方向に接着した積層材(寸法280×140×60mm)を用いました(図2)。
 試験体の樹種は道産カラマツと,比較対象として道産トドマツおよびスギとし,各樹種ともに4体の試験体を製作しました。また試験体には,図2に示すように加熱中の温度を測定するため,内部および非加熱面にK熱電対を設置しました。

 試験では,図3に示す建築物の火災を想定した温度条件で,試験体の280×140mmの面を1時間加熱した後,速やかに水中に沈めて燃焼を停止させました。

 加熱中には,試験体の内部および非加熱面の温度を10秒間隔で測定しました。加熱終了後には,試験体の炭化した部分を除去した後,未炭化部分の厚さ(残存厚さ)を測定し,初期厚さとの差から炭化した厚さ(炭化深さ)を求めました。

図2 小型試験体の寸法と温度測定位置 図3 試験体の加熱温度


結果と考察

(1)炭化深さと炭化速度

 加熱終了後の試験体の断面を写真2に示します。写真の試験体では左側から加熱されていますが,カラマツを用いた試験体は,他の試験体よりも残存部分が大きく残っており,炭化が進んでいないことが分かります。
 試験体の樹種ごとの炭化深さ,および炭化深さを加熱時間で割った炭化速度の平均値を表1に示します。カラマツ試験体の炭化深さは35.6mmであり,トドマツよりも4.5mm,スギよりも7.2mm小さくなりました。また,カラマツ試験体の炭化速度は0.59 mm/分であり,一般的に言われている集成材の炭化速度0.6~0.7mm/分の中でも低い部類に属することが分かりました。
 燃焼時の木材の炭化については,密度,含水率,炭化層の形成状態等が影響すると言われています。今回用いた試験体では,試験前に調湿しているため含水率はほぼ一定であり,また加熱終了後の炭化層の形成状態は特に観察していないため,ここでは密度について炭化速度との関係を見てみます。
 試験体の密度と炭化速度の関係を図4に示します。試験体の密度はカラマツ>トドマツ>スギであり,炭化速度は密度の増加に従って低くなる傾向がありました。このことから,カラマツ材の炭化速度が低くなった一因として,密度が他の樹種よりも高いことが関係していると考えられました。

写真2 加熱終了後の試験体の断面 表1 樹種ごとの炭化深さおよび炭化速度の結果

(2)試験体の温度測定値

 加熱後60分における試験体の温度を5に示します。図中の温度は,各温度測定点における試験体の樹種ごとの平均値です。試験体の温度は,加熱面から10mmの位置では 800℃前後と非常に高温ですが,加熱面から離れるに従って急激に低下し,加熱面から60mmの位置(試験体の非加熱面側)では90℃前後でした。試験体の内部温度は,加熱面から10~60mmの50mmの距離で700℃以上の温度差が生じており,木材の遮熱性能の高さが見て取れます。
 樹種間について見てみると,加熱面から10mm,50mm,60mmの位置では,ほぼ同じ温度ですが,加熱面から20~40mmの位置ではカラマツが他の2樹種よりも温度が低くなりました。この結果は,カラマツ試験体の燃焼の進行が他の2樹種よりも遅いことを意味し,前述した炭化深さおよび炭化速度の結果を裏付けていました。

図4 試験体の密度と炭化速度の関係 図5 加熱後60分の試験体の内部温度


まとめ

 カラマツ構造用集成材の耐火性能を調べるため,小型試験体を用いた耐火試験を行いました。
 その結果,カラマツは,スギおよびトドマツよりも炭化の進行が遅いことが分かり,加熱60分時の試験体温度測定値でもそれを裏付ける結果が得られました。また,試験体の密度と炭化速度の関係から,カラマツの炭化の進行が他の2樹種より遅いのは,密度が高いことに関係すると考えられました。

 火災時の構造用集成材の強度は,炭化した部分はほとんど強度が失われているため,それより内側の未炭化部分の大きさでほぼ決まります。カラマツは上述のようにスギやトドマツよりも炭化速度が遅いことから,構造用集成材として火災に遭った場合,それら2樹種を用いた場合よりも未炭化部分の断面がゆっくりと減っていきます。
 このことから,カラマツ構造用集成材は,スギやトドマツの構造用集成材よりも火災時において,より長い時間建物の倒壊を防ぐことができると考えられます。このことは,カラマツ構造用集成材の新たな特徴を示すものです。
 今後は,このようなカラマツ構造用集成材の耐火性能について,更に詳細な検討を行い,把握していく予定です。そして,最終的にはカラマツ集成材の火災時の強度性能を明示するとともに,耐火性能を活かした構造部材を提案したいと思います。


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