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木質ペレットの利用と環境負荷

企画指導部 経営科 古俣寛隆



 はじめに


 一般的に,植物を由来としたバイオマスは,燃焼の際に発生するCO2を成長過程における吸収分とみなし,温室効果ガスとしてカウントしない -カーボンニュートラル- という概念が取られています。そのため近年,地球温暖化防止の観点から植物系バイオマスエネルギーの利用が注目されています。植物の種類や利用部位,加工度などによって得られるエネルギーの性状は様々ですが,効率良くたくさんのエネルギーを得るための検討が,産学官の多くの研究機関で行われています。

 日本は国土の3分の2が森林に覆われており,木質資源が豊富にある世界有数の森林国であることから,木質資源を対象とした研究が盛んです。今回は,木質ペレットという木材から作られるバイオマスエネルギーについてお話します。


 木質ペレットとは


 木質ペレットは,樹木の木部や樹皮などを粉砕,圧縮・成型した固形燃料で,通常工場端材,間伐材,林地残材等が原料となります。大きさ直径6mm,長さ15~20mm程度の円筒形で,含水率はおよそ10%以下と低いのが特徴です。一般家庭用のストーブや業務用のボイラーなど,専用の燃焼機器に使用されます。

 2006年の世界の木質ペレット生産量は約744万トンと推定され1) ,そのほとんどはヨーロッパと北米諸国で占められています。一方,同年の日本での推定生産量は2万2,500トン1)と,世界の中では少ないですが,近年生産量と工場数が急激に増加しています (図1)。
 北海道では2007年に9施設で2,583tの生産量があり4) ,同年の日本の生産量 (32,600t) の約8%を占めています。




図1 木質ペレットの生産量と工場数2),3)


 経済面と環境面の優位性について


 ここで経済面と環境面に着目し,暖房機器を例に,木質ペレットの優位性について,他のエネルギーとの比較検討により見てみたいと思います。

○ランニングコストの評価

 まず経済面については,近年の原油価格の高騰に伴い,重油や灯油等と比較して木質ペレットの優位性が高まっているといわれています。
 そこで,エネルギーの単位発熱量と暖房機器の効率から,発熱量1MJあたりの燃料消費量を設定し,それにエネルギーの単位価格を乗じることで各暖房機器における発熱量1MJあたりのランニングコストを試算しました。試算に用いた暖房機器の燃料消費量を表1に,試算結果を図2に示します。

表1 1MJあたりの燃料消費量 図2 各種暖房機器のランニングコスト

 最もランニングコストが低いのはエアコン,次に電気蓄熱暖房機が続きました。これは,前者がヒートポンプ式で高効率のため,後者が単価の安い深夜電力を利用するためです。
 ペレットストーブのランニングコストは,ペレットの単価が工場渡しの場合でガスストーブと同等,配達送料込みの場合で灯油ストーブと同等となりました。今後も原油高が続けば,前述の電気を熱源とする暖房機器には及ばないものの,木質ペレットのランニングコストにおける優位性はさらに高まると言えるでしょう。

○CO2排出量の評価

 次に木質ペレットの環境面での優位性について考えてみます。一般的にバイオマスエネルギーの環境優位性は,それが代替した化石エネルギー分のCO2排出量をもってCO2削減量として換算されることです。しかし,バイオマスの燃焼がカーボンニュートラルであっても,その原料入手や製造,輸送には少なからず電力や軽油等のエネルギーが投入されます。 木質ペレットについても同様のことが言え,他のエネルギーと比較して本当に環境に優しいかどうかを,原料入手から工場出荷までに排出されるCO2を考慮して判断する必要があります。
 そこでLCA (Life Cycle Assessment) という環境負荷を評価する手法を用い,木質ペレットの製造にかかる消費エネルギー量からCO2排出量を算出しました。

・木質ペレット製造のCO2排出量

 評価範囲は原料輸送から梱包までとしました (図3)。
 消費エネルギーデータは,道内ペレットメーカーにご協力頂き,原料輸送,乾燥,乾燥以外,工場内運搬の4工程に分けて入手しました。
 これに単位消費エネルギーあたりのCO2排出量 (CO2排出原単位) を乗じ,工程別にペレット1トン製造あたりのCO2排出量を算出しました。算出にあたっては (社)産業環境管理協会のLCA実施支援ソフトウェアJEMAI-LCA Proを用いました。結果を図4に示します。

図3 評価範囲 図4 ペレット1トン製造あたりの二酸化炭素排出量

 CO2排出量に占める原料輸送や工場内運搬の割合は低く,大部分は工場内の工程 (乾燥および乾燥以外の工程) が占めていました。
 このメーカーでは,乾燥の熱源に木材を用いており,消費エネルギーは電気のみであるため,乾燥工程のCO2排出量は低くなっています。工場内の乾燥以外の工程のCO2排出では,ペレット成型工程の電力消費に伴う排出が大部分を占めていると推察されました。トータルでは木質ペレット1トン製造あたり117kgのCO2排出という結果になりました。

・発熱量1MJあたりのCO2排出量

 次にランニングコストの比較と同様に,表1を用いて発熱量1MJあたりのCO2排出量について他の暖房機器とペレットストーブの比較を行ってみました。
 CO2排出原単位については,木質ペレットは燃焼時のCO2排出はゼロ (カーボンニュートラル) とし,前述のペレット製造のCO2排出量である0.117kg/kgを原単位に用いました。その他のエネルギーの原単位についてはJEMAI-LCA Proを引用しました。試算結果を図5に示します。

 ペレットストーブのCO2排出量は比較した暖房機器の中で最も低く,灯油ストーブと比較して1/10,エアコンと比較しても1/5と非常に低いことが分かりました。木質ペレット製造までのエネルギー消費を考慮しても,ペレットストーブはCO2排出量が少なく,環境に優しいことが示されました。

図5 各種暖房機器の二酸化炭素排出量


 最後に


 原油価格の高騰により,特に経済面の優位性から注目を集める木質ペレットですが,CO2排出量を指標とした環境面についても非常に優位性が高いことが分かりました。木質ペレットを他燃料と代替することは,CO2排出量削減に効果的であるといえます。

 現在林産試験場では道内の複数のペレットメーカーにご協力頂き,ペレット製造にかかる最新の消費エネルギーデータを調査しています。消費者の環境意識が高まる近年では,様々な製品やサービスについての定量的な環境負荷データの提示が求められています。道産木質ペレットについても,消費者に対しそれらデータを示すことで環境への優しさをアピールする必要があり,そのことによってさらなる利用が推進されるのではないかと考えています。

参考資料

1) 財団法人日本住宅・木材技術センター:“木質ペレット利用推進対策報告書”,平成19年3月
2) 森林環境研究会:“森林環境2008 草と木のバイオマス”,財団法人森林文化協会,p126 (2008)
3) 財団法人日本住宅・木材技術センター:“木質ペレット利用推進対策報告書”,平成20年3月
4) 北海道水産林務部林業木材課:“業務資料 H19木質ペレット生産実績調査結果一覧”,平成20年5月

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