林産試験場では,樹木の生態・形態,木材の性質・用途および関連の文献情報等を樹種ごとに取りまとめたデータベースを制作中ですが,ホームページへの公開を前に,記事部分を順次本誌で紹介しています。 (担当:企画指導部普及課) |
(カンバの語源はアイヌ語で桜皮を意味するカリンパ(karinpa)とされる)
名称 和名:シラカンバ
アイヌ語名:レタッタッニretat-tat-ni(白い樺皮のとれる木)等
別名:シラカバ,カバ
漢字表記:白樺
英名 Japanese white birch
学名 Betula platyphylla var. japonica Hara
分類 カバノキ科カバノキ属
分布 北海道,本州中部以北,アジア東北部
名称 和名:ダケカンバ
アイヌ語名:カムイタッニkamuy-tat-ni(神の樺皮がとれる木)等
別名:ダケカバ
漢字表記:岳樺
英名 Erman,s birch
学名 Betula ermanii Cham.
分類 カバノキ科カバノキ属
分布 北海道,本州,四国,千島,アジア東北部
名称 和名:ウダイカンバ
アイヌ語名:シタッニsi-tat-ni(本当の樺皮がとれる木)等
別名:ウダイカバ,マカンバ,マカバ,サイハダカンバ,メジロカバ
漢字表記:鵜松明樺(鵜飼いで使う松明の意:樹皮に油脂分が多くよく燃える)
英名 Monarch birch, Maximowicz,s birch, Japanese red birch
学名 Betula maximowicziana Regel
分類 カバノキ科カバノキ属
分布 北海道,本州中部以北,南千島
近縁種
このほか道内に自生するカバノキ属には次の3種がある。ヤエガワカンバがパルプ原料とされる以外木材としての利用はない。
○ ヤチカンバ(ヒメオノオレ) Betula ovalifolia Rupr.
○ アポイカンバ Betula apoiensis Nakai
○ ヤエガワカンバ(コオノオレ) Betula davurica Pall.
生態・形態
シラカンバは沼沢地や山地,ウダイカンバは山地に,ダケカンバは亜高山~高山に生える落葉樹。ダケカンバは国内では森林限界を構成する樹種として,高山で厳しい風雪に耐えている姿が見られる。
北海道内ではダケカンバが低標高の山地に生えることも多く,3種が混生することも多い。そのため白い樹皮等が似ていることもあり,一般には区別されずに白樺と呼ばれることもある。
代表的な陽樹で,山火事や伐採の跡地に一斉に更新して純林状となることがある。また,造林技術の一種であるかき越し(地がき)と呼ばれる地表処理によってよく更新する。
高さ25m,太さ1mほどになり,ウダイカンバは時に1mを超えることもある。
3種の形態は類似するが,下表のように区別できる。
3種合わせると広葉樹の中では北海道で最も蓄積が多く,総蓄積の10%を超え,広葉樹の23%に達する。
木材の性質
散孔材。ウダイカンバでは辺心材の境界は概ね明瞭で辺材は白色,心材は淡紅褐色であり,高齢木で心材の割合が高く,赤味が強いものはマカバ(真樺)と呼ばれ珍重される一方,辺材幅が広いものや心材が淡色のものをメジロカバ(目白樺)と呼んで区別することがある。シラカンバ,ダケカンバでは辺心材の境界は不明瞭で,辺材は白色,心材は淡黄褐色。いずれも年輪はやや不明瞭。
シラカンバは若干軽いが3種は材質が類似するため,木材としての呼称は区別せず椛(樺)あるいは雑椛(樺)として流通することも多い。
ウダイカンバは,心材がサクラ材と似ていることから道外では製材がカバザクラと呼ばれて流通することがある。
木材の性質それぞれの意味については,連載1回目の2007年12月号で説明しています。
主な用途
器具材,楽器材(ピアノのハンマーシャンクなど),家具材,合板材(とくに化粧合板),建築材(床板),割り箸,爪楊枝,パルプ材。いわゆるマカバは,内装用などに銘木として特に高価で取引されるものがある。道内ではカンバ類のおが粉をマイタケ,ナメコなどの菌床として使用する。
林産試験場によるカバ類を利用した研究成果品
・日本の木材:(社)日本木材加工技術協会 1989
・原色日本植物図鑑 木本編【II】:北村四郎・村田源 保育社 1979
・平成18年度 北海道林業統計:北海道水産林務部 2007
・図説樹木学-落葉広葉樹編-:矢頭献一・岩田利治 朝倉書店 1966
・北海道樹木図鑑:佐藤孝夫 亜璃西社 1990
・知里真志保著作集 別巻I 分類アイヌ語辞典 植物編・動物編:知里真志保 平凡社 1976