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道産マイタケ新品種「大雪華の舞1号」の開発

きのこ部 生産技術科 米山彰造


はじめに


 マイタケは風味や歯ごたえ等に優れ,消費者に人気の高いきのことして定着しています。このため,国内生産量は生シイタケの次に多いきのこです。
 マイタケの道内生産量は大手企業の進出や愛別町におけるマイタケ培養センターの稼働により顕著に増加し,平成19年は2,300トンに達し(北海道特用林産統計),5年間で2倍強増加しました。しかし中小生産者の生産量はその1/4程度まで減少しており,経営環境は原材料費の高騰により一層厳しさを増しています。

 中小生産者の多くは,使用している市販品種の特性を考慮して,良質なカンバ類のおが粉を培地に使用するため,その購入コストが負担となっています。そこで,林産試験場では,道内の代表的な造林木で,安価に入手しやすいカラマツおが粉が利用可能なマイタケの優良品種を開発しました。マイタケ生産にカラマツおが粉を使用するのは初めてのことです。
 開発した品種は道の財産として法律で保護(品種登録)するため,室内におけるデータだけでなく,野外に菌床を埋設した露地発生のデータも収集しました。
 もちろん,生産者の視点だけではなく,消費者の視点も取り入れ,調理したきのこを味見する「官能評価」も実施しました。

カラマツおが粉の混合比率


 これまで主にカンバ類等の広葉樹が使用されているマイタケでは,針葉樹であるカラマツおが粉の使用は検討されていませんでした。そこで,選抜した新品種1)がどの程度カラマツおが粉をカンバおが粉に混合できるのかを市販品種と比較・検討しました。栽培したマイタケの発生の様子を写真12に,その結果を図1に示します。

写真1,2 新品種と市販品種の発生状況

 写真はカンバおが粉にカラマツおが粉を30%混合した場合で,市販品種では傘の開きが不十分であるのに対し,新品種は外観に大きな変化は生じませんでした。また,図1に示したように市販品種ではカラマツおが粉の混合比率を高めるのにしたがい収量が低下するのに対し,新品種では30%程度まで利用できることがわかりました。これはカラマツに含まれている菌の成長を妨害する物質に対する反応が新品種と市販品種で異なるためと考えられます。すなわち,市販品では阻害成分に影響され,正常な発生となりませんが,新品種では影響が少ないと考えました。この特性は生産者にとってはたいへん有利な特徴で,高価なカンバに安価なカラマツを混合できるため,培地材料のコストダウンが図れます。

図1 カラマツ混合培地における各品種の収量

品種登録に向けたマイタケの露地発生


 今回開発した新品種は農林水産省の官報(第17041号)に掲載され,2008年6月3日「大雪華の舞1号」として品種登録されました。品種登録するためには種苗登録分類調査に基づき,他品種との遺伝的・生理的区別性や空調施設内における温度特性等の栽培特性に関するデータを収集するほか,特にマイタケでは露地発生試験を行い,発生時期や形態を明らかにしなければなりません。林産試験場では品種登録に向けて,数年間にわたって露地発生試験を繰り返し行いました。

 露地発生試験では,所定期間培養した菌床を4月末~5月中旬にかけて土中に埋め込み(写真3),遮光ネットで覆い(写真4),その年の9月中旬~10月中旬にかけてきのこが発生しました(写真5)。その年を含め3年にわたって発生が継続しました。子実体収穫後の菌床(廃菌床)については,その後,2年間にわたって発生することもわかりました。
 この試験において,新品種は9月末~10月初旬頃発生する頻度が高いことがわかりました。また,子実体の傘の形態を調べたところ,写真6に示したように新品種(写真中のV)は市販品種(写真中のN)に比べ傘が大きく厚みがあり,歯ごたえ(食感)が優れているのではないかと考えました。

写真3~6 露地試験の様子

官能評価


 外観は優れているものの味についての評価がわからないため,実際にきのこを調理して,食べて評価する方法(官能評価)を取り入れました。この方法を導入することで,より消費者の観点にたった評価ができると考えました。
 試験にあたっては事前に調理方法を検討し,塩でいためる方法(ソテー)が適していることを把握し,試験場の職員20名に被験者(パネリスト)となってもらいました(写真7)。

 試験の結果,形態評価で予測されたように,新品種は比較的歯ごたえが優れているという評価でした。このように実際に味見をする官能評価は,新しいきのこの開発にあたっては必要不可欠であることをあらためて認識しました。

写真7 官能評価の様子

おわりに


 このマイタケ新品種の開発では,生産者の立場にたって栽培時のコストダウンや生産性向上,子実体の外観重視を図ったほか,消費者の立場に立った風味(食味)や歯ごたえの官能評価を取り入れました。また,ここでは紹介できませんでしたが,うま味成分を増やす栽培方法等(平成20年研究成果発表会において発表)も検討しました。
 この新品種は加工食品の素材としても期待されており,現在,試験栽培者に普及を図っているところです。
 新しいきのこの開発にあたっては,今後も,生産者と消費者の両者を意識し,風味や機能性をキーワードとした栽培技術に重点をおき研究開発を進めたいと考えています。

参考資料

1)米山彰造, 宜寿次盛生, 原田陽, 森三千雄:林産試験場報 20(3), 21-26 (2006). http://www.fpri.hro.or.jp/rsjoho/20620342126.pdf

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