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シイタケ菌床栽培に関する道内外の動向

きのこ部 品種開発科 原田 陽


はじめに


 今日,食の安全・安心への関心の高まりの中で,国産食材を求める声が日増しに高まっています。その中でも,きのこは農薬や化学肥料を使わない安全・安心な食材として大いに見直されています。北海道では,生シイタケのほか,ナメコ,エノキタケ,マイタケ等の生産が各地で行われており,特にタモギタケは全国生産量の8割以上を占める等,全国有数のきのこ生産地となっています。平成19年の生産額推計が約94億5千万円で前年比1.3%の増加となりました1)。このうち,全体の37.6%にあたる35億円の生産額を誇る生シイタケについて,道内外の動向を紹介します。

生産の現状と課題


 北海道の19年度の生シイタケ生産量は,4,405トンで徳島,群馬,岩手に次いで4位です。このうち菌床栽培シイタケは,3,906トンで徳島,岩手に次いで3位となっています。道内生シイタケ生産における「原木栽培」と「菌床栽培」の比率1)は,それぞれ11.3%,88.7%となっており,規模の拡大や省力化が行いやすい「菌床栽培」の比率が年々高まっています。この菌床栽培の比率は,全国平均の76.2%を上回っています。

 一方で,菌床栽培に適した良質なおが粉の入手が困難になりつつあるとの声が道内で増えており,良質な培地材料の安定確保を図る必要性が高まっています2)。また,最近10年間の取引単価が下落傾向にあること,燃料価格等が高騰したことから,「生産効率の向上」と「生産コストの低減」を図ることが求められています。

 さらに,輸入生シイタケが以前より少なくなったものの国内消費そのものが伸び悩んでいる状況にあります。そこで,品質が良く安全・安心なシイタケの生産を行うこと,「付加価値向上」に向けた取り組みを促進し,他産地との品質による「差別化」とともに消費拡大を図ることがますます重要になってきています。

シイタケ栽培方法の動向


 前述のようにシイタケの栽培方法には,広葉樹の原木を利用した「原木栽培」とおが粉を栽培の主原料とする「菌床栽培」の2通りがあります。後者は,1985年頃開発された比較的新しい技術です。10年ほど前は,道内の「菌床栽培」の比率は50%弱,全国平均は30%超といった状況でしたが,近年急激に「菌床栽培」の比率が高まっています。

 経営方式としては,菌床を自分で仕込む「自家培養方式」,あるいは培養菌床を購入する「購入菌床方式」のいずれかとなっています。栽培方式としては,自然の気候を利用した「自然栽培方式」と人工的に冷暖房をコントロールする「空調栽培方式」があります。きのこの発生方式としては,菌床全面から発生させる「全面栽培法(写真1)」と上面から発生させる「上面栽培法(写真2)」があり,比較的新しく省力化が期待される「上面栽培法」が道内でも普及しつつあります。

写真1 全面栽培によるシイタケ発生写真2 上面栽培によるシイタケ発生

安全・安心に向けた取り組み


 ここ数年,食の安全性に不信感を増大させる問題が発生する中,特用林産物でかつ食品であるきのこでも安全性が強く求められ,国や都道府県あるいは民間主導により各種取り組みが行われています。実際に生産地では,生産履歴管理を自主的に導入したり認証制度を活用したりして安全・安心をアピールしています。

 北海道においては,平成17年に「道産きのこ生産履歴管理の手引」3)が策定されています。この中には,少ない労力で履歴情報を管理することが可能な「基本モデル」と将来の高度なトレーサビリティーシステムへの対応が可能な「発展モデル」があり,一部導入が進んでいます。また,ここ数年「道産きのこ安全・安心セミナー」を継続して開催し,生産者の意識向上およびシステム導入に向けた普及を行っています。

生産技術の高度化に向けた取り組み


 20年9月に福岡で開催された日本きのこ学会第12回大会4)では,発表58件中シイタケに関する発表が15件ありました。ここ数年の同大会5,6)でも多くの発表がありました。分野としては,栽培,食品機能性,病虫害,経営等多岐にわたっています。
 栽培に関する発表内容は,表1のとおりです。生産効率を高めた品種の集中発生要因の解明,上面栽培技術の改良,スギの利用を目的とした品種開発,マテバシイおよびクヌギの利用による生産性および品質の評価等について種菌メーカーや公設試験研究機関が発表しています。

表1 きのこ学会におけるシイタケ関連の発表

 当場では,17~19年度に「シイタケ菌床栽培における生産効率向上技術の開発」7)に取り組みました。これにより,道内で生産される主要な種菌について,廃菌床利用やカラマツおよび広葉樹チップダスト利用の有効性を見出すことができました(図1)。すなわち,チップダストの置換率を高めることによる,子実体サイズの大型化や増収効果が確認されました。

図1 広葉樹チップダストの有効性

高付加価値化に向けた取り組み


 前述のきのこ学会では,食味に関与する物性と香り,きのこに含まれる成分に対する原木樹種の影響,品質低下要因の解明等についても発表されています(表1)。
 最近では,うま味や香り等の特性を生かす技術開発が行われています。この例としては,シイタケの香りに対する消費者の嗜好特性を探るとともに,その嗜好特性に合せてシイタケの香りを制御する「香りを高めたシイタケ」8)に関する開発があります。また,健康機能成分を高める技術開発が行われています。この例としては,シイタケ特有の成分でコレステロールを下げる働きを持ったエリタデニンを多く含むシイタケの開発9)やビタミンB1とトレハロースを多く含むシイタケの開発10)があります。

 当場では, 14~16年度に「菌床栽培におけるシイタケの機能性付与技術の開発」11)に取り組み,有用なビタミンおよびミネラルを多く含むシイタケ作出の可能性を見出しました。

おわりに


 誌面の都合上,多くを取り上げることはできませんでしたが,シイタケ菌床栽培ひとつをとっても種々の栽培形態があり,多くの課題があることを紹介しました。そして,それぞれの課題や目的に向けて様々な取り組みが行われています。
 北海道のシイタケ生産は,量のみの追求ではなくマーケットや消費者に求められる高品質なシイタケ生産を目指す方向へと変わってきています。

参考資料

1)北海道水産林務部:平成19年北海道特用林産統計, 平成20年10月
2)北海道水産林務部:北海道特用林産振興方針, 平成20年3月
3)北海道水産林務部:道産きのこ生産履歴管理の手引, 平成17年3月
4)日本きのこ学会:日本きのこ学会大12回大会講演要旨集, 福岡,平成20年9月
5)日本きのこ学会:日本きのこ学会大10回大会講演要旨集, 秋田,平成18年9月
6)日本きのこ学会:日本きのこ学会大11回大会講演要旨集, 旭川,平成19年9月
7)品種開発科ほか:北海道立林産試験場年報平成19年度, p.35(2008)
8)平出政和:農林水産技術ジャーナル,31(9), 5-19(2008)
9)杉山公男:農林水産技術ジャーナル,31(9), 25-29(2008)
10)寺嶋芳江:農林水産技術ジャーナル,31(9), 20-24(2008)
11)品種開発科:北海道立林産試験場年報平成16年度, p.44(2005)

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