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「NHKおはようもぎたてラジオ便-北海道森物語-」林産試版



 林産試験場の職員がNHKのラジオ番組に出演し,提供した最新の研究情報について,番組でのやり取りを再現してお伝えしています。

(担当:企画指導部普及課)



木材の持つ環境へのやさしさを数値で示す取り組み

出演:企画指導部 経営科 古俣寛隆
放送日:平成20年11月26日(水)



LCA(ライフサイクルアセスメント)は環境負荷量を数値化する方法


NHK  今朝の話題は,木材の環境へのやさしさを数値で示す取り組みということですが,どうして数値で示す必要があるのでしょうか?
古俣  木材は植物材料であること,また,燃やして灰になってもCO2の吸収と排出がプラスマイナスゼロ,つまりカーボンニュートラルであることなどの理由から,一般的に環境に「やさしい」ものと認識されています。ところが,具体的にどのくらい「やさしい」のかといわれるとなかなか回答できないのが実情です。鉄やプラスチックなどの木材以外の材料では「LCA」という方法を用いて環境に与えるダメージの量を具体的に示す取り組みがおこなわれ,製品のアピールやより環境にやさしい製品にするための改善に生かされています。環境に「やさしい」はずの木材ではこうした取り組みが遅れているのです。そこで木材の研究機関である林産試験場がこの数値化に取り組むことになりました。

NHK  LCAという方法,ちょっと聞きなれない言葉ですが,これはどういったものなのでしょうか?
古俣  LCAとはライフサイクルアセスメントの略で,国際的にも定義されている環境負荷の評価方法です。LCAでは原料調達から廃棄までの製品の一生にわたって投入される資源量やエネルギー量を調べ,環境に与えた負荷量を求めます。

CO2排出量で環境へのやさしさ評価,木質ペレットは灯油の5分の1


NHK  林産試験場ではLCAの方法を用いて木材の環境へのやさしさの評価に取り組んでいるのですね。具体的にどんな製品を評価しているのですか?
古俣  はい。例えば,木を植えて丸太にするまで育て方によってCO2排出量はどう変わるのかといった試算や,住宅に使われる製材や集成材などの製造過程ではどのくらいの排出量があるのかといった分析を行なっています。また,これら以外にも木材に関係する製品全般について,LCA評価に関する研究を行なっています。

NHK  では,実際に評価を行なった例について教えてください。
古俣  はい。分かりやすい例で,最近話題の木質ペレットの評価結果についてお話したいと思います。前段ふれたように,カーボンニュートラルという考え方から木質ペレットを燃やしたときに発生するCO2はゼロとみなされています。しかし,ペレットの製造や輸送過程で電力や化石燃料が消費され,ライフサイクルで見ればCO2が排出されており,それらを含めてどの程度環境にやさしいのかを検証する必要がありました。そこで,木質ペレットの原料調達から製造,燃焼までに排出されるCO2をLCAで評価しました(図1)。
 その結果,原料調達や製造時の排出を考慮しても木質ペレットは他のエネルギーより非常にCO2排出量が低く,環境にやさしいことが分かりました。例えば,一般的な暖房機を想定した場合,同じ発熱量で比較したCO2排出量は灯油の1/5以下という試算結果が出ています(図2)。

図1 木質ペレットの環境負荷評価範囲 図2 1MJあたりの暖房機器別二酸化炭素排出量

LCA評価を林業・林産業の振興につなげる


NHK  実際に数値でみることによって,どれだけ環境へやさしいかがよく分かるということですね。それでは,この環境へのやさしさを数値で示す取り組み,今後,どのような方向性で研究していくのかを聞かせてください。
古俣  環境問題への意識が高まる今日では,あらゆる製品について環境負荷量の提示が求められています。木材も,これまでのように漠然と環境に「やさしい」とアピールするだけではなく,LCAによる定量的な評価が必要になってくるはずです。そして,これら具体的数値を示すことによって,例えば,手入れが行なわれていない森林における間伐事業の推進や,様々な木質製品の需要拡大が図られるようになるなど,林業・林産業がもつ重要テーマに対する行動のカンフル剤になるものと考えています。今後も,木質製品全般の評価に取り組むとともに,木材をバイオエタノールに変換し利用する際の有効性などについてもLCAを用いて検討していきたいと考えています。
NHK  具体的な数値をもって木材がどれだけ環境にやさしいかということが明確になり,それにより,林業や林産業のありようなど,いろいろな方向性もはっきりしていくのですね。(以上)

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