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道産材を建築用に利用するために

企画指導部 主任普及指導員 堀部 敏


 はじめに


 道内のカラマツ及びトドマツ人工林は,林齢50年を越えるものが多くなり,直径が30cmより大きい丸太が生産されるようになりました。今後,太い梁や柱などへの無垢材の利用が拡大するなど,現在,梱包用にかたよっている製材(特にカラマツ)の用途(図1)が高価格な建築用にシフトしていくことが期待されます。

図1 トドマツ・カラマツ製材の用途別生産量

 木には,癒しやぬくもりが得られるなどの魅力があります。住宅展示会場などで担当者に話を聞くと,家を建てる人の多くは,当初,木の内装材を希望するようです。ところが,住宅価格の見積りの段階になると予算の壁にあたり,最初に木の内装材の部分が削られるそうです。木材については乾燥材の寸法安定性や,強度性能,耐久性能などの説明は理解してもらえても,木の持つ居住性の良さまでは説得しきれないのが実情のようです。
 北海道では,地域の木材を地域で使う地材地消を進める取り組みを行っています。そこで,建築用材としての木材に注目し,木材の特徴や建築利用を進めるために参考となりそうなことを述べてみようと思います。

 無垢材は乾燥材を


 工務店に,無垢材を使った家の,クレームの原因について聞くと,乾燥不十分なことによる寸法の収縮,繊維傾斜等に起因するねじれによりクロスの亀裂や凹凸などが出ることだといいます。断面の大きい無垢材は乾燥が難しく,乾燥後でも,表面から中心に行くにつれ含水率値が高くなる水分傾斜ができます。そのため,養生期間を十分に取ることが必要といわれます。
 木材内部の含水率を周囲の湿度に合わせた平衡含水率にすることで,狂いを最小限に抑えることができます。道内では含水率15%程度のものを建築に使用しますが(写真1),断熱性能の高い室内では湿度が低く,平衡含水率は5~10%程度まで下がる場合があります。特に無垢材を内装材として使用する場合は,含水率10%以下を目安に乾燥を行う必要がある2)といわれています。
 ある工務店の話では,無垢材を梁などに使う場合は,“あらわし”といって仕上げ材で覆わない表に出す使い方をします(写真2)。施主も木の持ち味を認識している方が多く,事前に木の性質を説明するため,少々の割れや変形が出てもクレームがないそうです。

写真1 カラマツ乾燥材 写真2 カラマツ無垢材の梁

 森林認証材の生産


 道内でも循環型社会の形成が重要視され,生態を守りながら「持続的な森林経営」を進める「森林認証制度」に対する関心が高まっています。平成20年度末,北海道における認証森林面積は約50.3万haで,そこから収穫される丸太から森林認証材の製品(写真3)が生産出荷されてきています。製材認証材は大手ハウスメーカーや地域工務店でも地材地消の目玉として利用しています。
 現在,食品では食の安全性を確保する上で生産履歴を明記する取り組みが盛んです。木材取引の世界でも,生産地を明記するなどの認証マークを付けることにより,その木材の品質に対する信頼が増し,優先的に使用されることが期待されます。

写真3 認証マークの入った構造用集成材

 床構造を変えた厚物構造用合板


 一般的に厚さ24mm以上の構造用合板を「厚物合板」と称しますが,この厚物合板が木造軸組構法などの床下地材として急速に普及しています。特にカラマツ24・28mmの使用が多くなっています。これは,合板の外周を釘打ちした場合,地震に対する水平構面としての性能が,根太方式での12mm構造用合板直張りの場合の1.5倍となり,根太の省略で施工の簡素化が図られるためです。また,たわみも減少し,床鳴りが発生しにくく,重量衝撃音に対する防音性能が増加し,耐火性能も向上する3)といいます。

 木製サイディングの利用


 外壁材は金属系,窯業系サイディングなどが最近の主流ですが,北国のきびしい冬には木製の壁はぬくもりのある景観をつくります。木製サイディングはカラマツやスギなどの心材で耐久性のある程度高いものが使用されています。
 写真4はスギの無垢材を施工した事例です。雨水があまりかからないように庇(ひさし)を大きくして,跳ね返りがかかる地面に近い部分はレンガなどを用いています。また,外壁材は木裏側の耐久性が高い心材部を表面に出すことで木表側に反るハネ上がりを目立たなくするなどの工夫がされています。そして何よりもメンテナンスを必要に応じて行うことが,長持ちの秘けつです。

写真4 スギ外壁材の家

 自然志向の健康住宅の家


 最近は「自然素材」や「健康住宅」などへの志向が高まっています。また,地域の無垢材をふんだんに使用した「こだわりの木の家」が話題になります(写真5)。無垢材を希望する施主は,木のもつ居住性の良さを知っています。また,自然素材である木のやさしさやぬくもりが子供の教育によい影響を与えると考える人もたくさんいます。最近の幼稚園や小中学校などの校舎も木造に回帰してきました。また,自然素材は年数を経るほど本物の味わい深いものになり愛着もわいてきます。
 地域の工務店には,地域材を使って特色を出す家づくりにより,ある程度価格を高く設定しても大手ハウスメーカーとの競争に負けないところもあります。また,現地見学会やホームページなどの宣伝のほか,お客さん同士の口コミなどによりコンスタントに受注がある工務店も少なくありません。本物志向,自然素材志向や健康住宅などのキーワードで売り込み,ワンランク上の家づくりを目指しています。

写真5 スギの内装材とカラマツの梁

 おわりに


 現在,地球規模で森林環境の保護が叫ばれています。樹木は地球温暖化の原因となる二酸化炭素を吸収し,酸素を供給する大事な存在です。
 二酸化炭素を固定する木材をできる限り永く木材として使用することが,私たちにできる大きな環境対策となります。かけがえのない木材を大切に使いたいと思います。

参考

1)北海道水産林務部林務局林業木材課:
 平成18年度トドマツ(人工林)素材・製材流通調査
 平成18年度カラマツ(人工林)素材・製材流通調査
2)中嶌厚,土橋英亮:林産試験場報17(2),1-5(2003)
3)東京合板組合・東北合板工業組合:ネダノンマニュアルVer4

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