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シイタケ・ナメコの原木栽培技術について

企画指導部 主任普及指導員 及川勇二


 シイタケ編


 シイタケ原木栽培(写真1)は近年,生産者の高齢化や生産者人口の減少,価格の低迷による生産意欲の減退など問題点が山積しています。一方では新しい流通や需要など経済環境の変化への対応,さらに栽培技術面の改善や強化が求められています。
 原木栽培は森林資源を活用した循環型生産方式であり,環境にやさしい無農薬有機栽培そのものの栽培方法といえます。一方で原木栽培は菌床栽培と違って管理が難しいことから,経営の安定化を図るために重要となる栽培技術の向上という側面からその要点を解説します。

写真1 シイタケ原木栽培の状況

(1)原木

 生シイタケ栽培用の原木としては,主にコナラ,ミズナラが利用され,その伐採時期は,材中の栄養価が高く樹皮部の含水率が低下している秋の黄葉期が適しています。伐採した原木は30~60日を目安に葉枯しを行います。葉枯しが完了したら玉切りを行います。

(2)植菌

 ホダ木作りのポイントは,秋までにシイタケ菌を原木全体にまん延させることです。このためにはできるだけ早く植菌(写真2)することです。
 植菌駒数は,少なくとも末口径(cm)の3~4倍以上の数が必要です。シイタケ菌糸は放射方向(横方向)へのまん延が繊維方向(縦方向)に比べ1/5倍程度と遅いので,列間を3~4cm以内に狭くして,原木全体へのまん延を早めます。
 接種穴の深さは30mm程度を基本としますが原木の乾燥状態に応じて調整します。
 原木の木口面はトリコデルマ菌などの害菌に汚染されやすいので,木口から5cmの位置に接種し木口面の発菌を早めます。
 接種後は駒菌の水分維持のため散水を行います。

写真2 原木への植菌作業

(3)仮伏せ

 仮伏せ(写真3)は,シイタケ菌糸を速やかに発菌させ,原木への活着,まん延を促進させることを目的とします。
 林内で行う方法もありますが,この時期は気温が低く乾燥しがちなので農業用ビニールハウスの利用が安全です。ハウス内では高さ1m以下に横積みし,ビニール,寒冷紗,段ボールなどを組み合わせて温度,湿度を管理します。
 シイタケ菌の活動適温は25℃付近ですが,トリコデルマ菌は25℃を超えると活発になるため,仮伏せは8~20℃,湿度85%を目安に管理します。
 仮伏せ後3~5日で,駒の頭に発菌してきますが,発菌してこない場合はビニールの密閉度を確認したり,散水を行って発菌を促します。
 20~30日経過ころ,木口より菌糸紋が確認されるようになりますが遅れている場合は散水します。菌糸紋が木口全体に確認されたら,徐々にビニールのすそを上げて風を入れ,発菌部分の褐変を促します。
 ハウス内で仮伏せを行う場合,特に高温に注意します。菌の活力は45℃になると5~8時間で低下し始め,10時間以上になるとほとんどなくなります。4~5月になると外気温が上昇し,ハウス内は40℃を超えることもあるため,ハウスのすそを開けるなどしてまん延に適した温度にします。

写真3 ビニールハウスでの仮伏せ

(4)本伏せ

 本伏せは,ホダ木を均一にホダ化させ,キノコがホダ木表面から均一に発生し,正常に生育できるホダ木を作ることを目的とします。
 本伏せ場所(ホダ場)は,風通しがよく,直射光の入り過ぎない環境で,南または南東に面する緩い傾斜地が適しています。西斜面では温度が上がりやすく,害菌が発生しやすくなります。針葉樹林,広葉樹林どちらでもかまいません。
 標準的なホダ木の伏せ方は,横にした1本のホダ木(端の1本は添え木をあてて地上40~50cmの高さで固定)に数本のホダ木を並べて立てかける(伏せる)ことを繰り返す「よろい伏せ」,ホダ木を井げた状に1m程度の高さに積み上げる「井げた積み」です。多湿な場所では神社の鳥居に似た形に伏せる「鳥居伏せ」,水分保持には地面に直接伏せる「地伏せ」などが適します。
 ホダ木全体にシイタケ菌をまん延させ,均一なホダ木を作るために,ホダ木の上と下を交換する作業を天地返しといいます。とくに,排水が悪いところ,湿度が高いところ,また水分の抜けていないホダ木は,天地返しを必ず行うべきです。天地返しの時期や回数は気候によって異なりますが,少なくとも2回は必ず行ってください。
 本伏せでは,ホダ場周辺の環境をチェックし,林内が暗くならないように,風通しが悪くならないように注意します。降水量が多い場合にはホダ木水分が多くなりホダ化が遅れるので風通しをよくするなどの工夫が必要です。

(5)収穫

 植菌後2年経過したホダ木は,林内からビニールハウス内に移され,水分調整と温度刺激を目的とした浸水作業を行います。浸水時の水温は外気温より8℃以上低い温度で行います。浸水後は芽出し操作を行い温度12~20℃,湿度60~90%になるように管理しキノコの発生を待ちます。発生操作はこの行程を繰り返し行い,発生後はホダ木を休養させることが重要です。
 ホダ木一代の発生量は,1kg前後と言われています。

 ナメコ編


 ナメコは自然では秋季に広葉樹林の倒木や切り株上に発生するきのこです(写真4)。表面には特有のぬめりがあり,「滑子」という字があてられるほどで,みそ汁やダイコンのおろしあえなどの料理で親しまれています。
 ナメコはシイタケと同じく,木材腐朽菌の一種で水分を好み,菌糸の成長適温は26℃前後です。ナメコは他のきのこ類に比べ比較的水分が多い環境で菌糸がよく成長します。身近な広葉樹が利用でき,だれでも簡単に栽培できるきのこですが,栽培の要点として次のようなことが挙げられます。

写真4 ナメコの発生

(1)原木

 栽培には,多くの広葉樹が原木として使用できます。もっとも適した樹種としてカンバ類,カエデ類,ヤナギ類,サクラ,ナラ類などが主に利用されます。ヤナギ類・シラカンバなどはきのこの発生が早く,ホダ木の寿命が短い,ナラ類・カエデ類は発生は遅くホダ木の寿命が長い,などの違いがあります。しかし,広葉樹であればとくに樹種を選ばず,入手しやすいものを使えます。
 原木の伐採適期は,樹木の休眠期間で多くの養分が貯えられているときです。秋の黄葉期から春の新芽の出る前までに伐採します。原木はあまり乾燥させないほうがよく,植菌する前に玉切りします。長さは1m程度で,太いものは持ち運びしやすい長さに切るとよいでしょう。

(2)植菌

 玉切りしたら早めに植菌します。植菌の時期は4~5月でできるだけ早めの方がよいです。植菌方法は,シイタケと同じく樹皮面に接種穴をあけます。接種穴は,専用の電動ドリルにきのこ栽培用刃先を付け,深さ2~2.5cmの穴を千鳥状にあけます。穴の数は原木直径10cm,長さ1mのもので20~25個が標準です。
 種菌には駒菌とのこくず菌があり,使用する種菌によりドリルの刃先が異なります。駒菌を植菌するときは,種駒1個を接種穴に入れ,種駒の頭が樹皮面と平らになるようかなづちで打ち込みます。のこくず菌を植菌する場合は,のこくず用植菌器で接種穴に打ち込み,その上から封蝋(ふうろう)でふたをします。植菌は,のこくず菌より駒菌のほうが簡単で能率的ですが,菌糸の成長はのこくず菌のほうが早いです。
 植菌の終わった原木は,長時間直接日光に当てないように速やかにホダ場に設置することが大切です。

(3)ホダ木づくり

 ナメコの原木栽培は,ホダ木づくりを行う伏せ込み場所をそのまま発生場所にするため,あらかじめナメコの発生しやすい場所を選定して伏せ込みます(写真5)。湿度を好む菌なので伏せ込み場は,ある程度の湿った林内が適しています。一般に樹木の育ちのよい場所はナメコの適地といわれていますが,反面このような場所は雑菌にとっても好適な場所になりやすいので,排水やある程度の通風をよくすることが大切です。雑草や枯れ木などを取り除いて清掃します。
 伏せ込み方法は,直接ホダ木を地面にねかせると,雑菌や害虫におかされやすいので,地面より少し離した枕伏せ,よろい伏せ,ムカデ伏せなどで行います。しかし,乾きやすい場所では直接地面にねかせる接地伏せ込みが適しています。寒冷地では,ホダ木を低い棒積みにしてムシロなどで覆い保温をすれば,菌糸の成長を助ける効果があります。この場合,気温が15℃くらいに上がったら覆いをはずします。棒積み期間は15~30日にとどめ,あとはホダ木の間隔を10~15cmあけて伏せ込みます。
 ナメコの菌糸は低温には強いですが,高温には弱いので,夏期の高温によってホダ木が蒸れたりしないよう,風通しをよくし涼しい環境を保ちます。

写真5 伏せ込んだホダ木からのナメコの発生

(4)収穫

 ナメコの発生最盛期は,10月中旬から11月中旬頃までで,雪の深い地方や寒さの厳しい地方はきのこの発生時期が早くなります。ナメコは,いったん発生が始まると一度に集中発生します。なお,一度収穫したホダ木はその年には再発生しないので,翌年の秋まで待つことです。ホダ木の寿命は太いもので5~6年,細いものでは3~4年で終わります。発生量は,ホダ木一代で原木重量の20~25%です。

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