本文へ移動
 

 

「NHKおはようもぎたてラジオ便-北海道森物語-」林産試版



 林産試験場の職員がNHKのラジオ番組に出演し,提供した最新の研究情報について,番組でのやり取りを再現してお伝えしています。

(担当:企画指導部普及課)



木材を農業用の土として利用する

出演:利用部 成分利用科 関 一人
放送日:平成21年1月28日(水)



 農業・園芸用培土に新たな有機資材を提供したい


NHK  今朝のテーマは「木材を農業用の土として利用する」ということですが,農業において木材を利用するとはどのようなことですか?
  近年の日本の農業や園芸においては,苗の大きさをそろえて丈夫に育てるために,人工的に配合された土,いわゆる「培土」が用いられます。これらの培土には,軽石などの鉱物資材のほか,湿原にあるピートモス(ミズゴケ類やヨシなどの腐植質)等の有機資材が必要です。
 現在,培土用の有機資材は,そのほとんどを輸入に頼っていますが,近年,資源の枯渇や環境保全意識の高まりによる採取規制で,価格が上がるとともに供給が不足気味となっています。このため,安くて供給量に問題のない新たな有機資材が求められています。
 その点,木材は,粒(つぶ)状にしやすい,軽くて水分を保ちやすい,最後は土に還る,といった特性があることから,培土用の有機資材として適性が高いのではないか,また若干の処理をするだけで利用できるのではないか,と考えたわけです。

 木粉をアンモニアガスで化学処理すると・・・


NHK  なるほど,その木材を培土として利用する際に処理が必要とのことですが,どういったことなのでしょうか?
  もともと木材は窒素分がほとんど無いものですから,木材が土壌微生物に分解される際,土壌中の窒素を消費してしまい,作物が栄養不足となることがあります。また,木材にわずかに含まれる精油やヤニなどの化学物質には,他の植物の発芽や生育を阻害するものがあります。
 そこで,木材を砕いた木粉をアンモニアガスで化学処理してみました(写真1)。そうしたところ,木材中の窒素の量が増え,また,阻害成分の性質が改善されることが分かり,この研究成果が木材を格好の培土資材とするための技術開発につながりました。このアンモニアガスを使った技術により,処理時間を短く,処理コストも低く抑えて培土資材を作ることができると考えています。

写真1 カラマツ木粉とアンモニア処理物

 アンモニア処理した木質培土で作物の成長量がアップ


NHK  アンモニア処理した木材を培土とするということですね。実際にこの培土で作物を育てると生育はどうなのでしょうか?
  これまでに,カラマツの木粉や黒土を用いて培土とした場合における,芝の成長試験を行っています。1か月間の試験の結果,黒土だけの培土よりも,アンモニア処理した木粉を配合した培土の方が,芝の成長が著しく良いことが分かりました。現在,これらの栽培試験結果や前述のアンモニア処理も含めた一連の技術を,特許として出願中です。

 培土の原料は大量にでる木質系の産業廃棄物


NHK  木材の培土としての性能が相当高いということが分かりました。原料となる木材の資源量は十分なのでしょうか?
  木材は北海道に豊富に存在する再生産可能な資源です。一方,北海道における工場端材,建築解体材,抜根や枝などの木質系の産業廃棄物の年間排出量は約70万トンありますが,そのうちの約20万トンは,低質でリサイクルコストが高い等の理由から再使用されていないのが実情です。新たな再使用化・再資源化技術の開発が求められます。
 低質な木質系の廃棄物を,培土の資材として利用できれば,地場資源の有効活用につながるとともに,循環型社会の推進に大きく貢献すると考えています。

 実用化を目指して野菜を試験栽培中


NHK  質が低く価値が無いものと思われてきた20万トンもの木質の廃棄物が培土に利用できるのですね。非常に有効なことだと思います。それでは,この技術を実際の農業で活用する上で,現在の研究の取り組み状況はどうなっているのでしょうか?
  現在,健全な苗を生産する新たな培土の開発を目指し,農業分野の研究機関とともに,共同研究をスタートさせています。そのなかで,様々な条件で化学処理した木粉を配合した培土を用いて,野菜の苗の栽培試験を行っています。  この栽培試験(写真2)では,根に関しても成長や形態の発達について解析し,木材の処理条件や培土への配合について検討する予定です。

写真2 栽培試験の状況

NHK  質が低くて利用されずにきた木質廃棄物が有効な資源となり,農業生産にも大きく貢献する。まさに一石二鳥の取り組みですね。うまくいくといいですね。(以上)

前のページへ|次のページへ