●特集『平成21年 研究成果発表会』
北海道内の中学校において,室内空気質の定期検査時にトルエン濃度が基準値(260μg/m3)を上回る教室がありました。自治体では,既存の換気扇を使用したり,吸着材等の対策を講じてきましたが,十分な効果が得られませんでした。そこで,同教室におけるトルエンの発生源特定と濃度低減対策を試みました。
教室は,平成5年竣工のRC造校舎の最上階(3F)で,部屋の大きさは長さ16m,幅6m,天井高3mです。
・発生源の特定
トルエンの発生源を特定するため,写真のようなステンレス容器を用いました。測定する部位に容器をかぶせ,一定時間(60分)放置し,室内濃度とステンレス容器内のトルエン濃度を比較しました。
その結果,天井が室内の7倍の濃度が検出され,さらに,屋上スラブの断熱材をはがして測定すると,測定不可能な高濃度でした。この結果と他の教室との結果から,原因は,屋上の防水処理に関連している可能性が高いことがわかりました。
・対策
天井裏のトルエンが,天井材を透過して教室内に流入してくるため,天井裏の空気を直接外に排気させ,教室内に流入しないようにファンを取り付けました。
・結果
天井裏ファンを作動させると,最も濃度が高くなる夏期で70mg/m3以下,冬期では50 mg/m3以下となり,基準値より十分低い濃度になりました。しかし,夏期や秋期では,ファンを1日停止するだけで,作動時の4~5倍の濃度になることから,ファンを常時作動させることが必要です。
ファンの濃度低減効果と気温との関係から,暖房効率を考慮したファンの運転計画と,コストの低減方法を検討する予定です。